第2話 学食
とある日の昼下がり、俺は一人で学食を食べに中央食堂に向かっていた。
昼間の学食はスパルタンの集う場所となるから、落ち着いて飯を食える場所じゃない。少し時間をずらして飯を食うのが落ち着いて食べるコツだ。
美空はその魔の時間にもうできた大学の友人と学食に挑んだらしい。
<私が一緒に居られなくてごめんね。寂しいだろうけど我慢してね>
という、大変俺を苛立たせる文をおまけにライムで教えてくださったからな。仕返しに今日の夕飯に美空の苦手なものでも入れてやるか。
そんな事を考えながら席について飯を食べようとした時、
「ごめん、隣いいかな?」
声のした方を見ると、これはまた外見の良い二人の男女が飯の載ったプレートを持っていた。
「いいぞ。気にせず座ってくれ」
「ありがとう。君は確か…僕と一個前の講義で一緒だったよね」
そう言われてそいつの顔をよく見てみると確かに先ほどの講義に居たかもしれん。全然覚えていないけど。
「僕は
「よろしく。俺は天道優斗、好きに読んでくれ」
しばらくそのまま飯を食べていると清水さんがこちらをみて話しかけてきた。
「ねぇ、天道さんって美空ちゃんと仲良いんですか?」
「仲はいいんじゃないか。腐れ縁だし」
「腐れ縁!良いですね。私はそんな長く共にした友人がいないもので羨ましいです」
「そんな羨ましがるものじゃないよ」
「そうなんですか――」
ヤバい何か清水さんの琴線に触れたらしい。助けを求めて海の方を見ると海は笑いをこらえた表情でこちら見て口を開いた。
「唯、優斗が困ってるぞ。悪いな、こいつは幼馴染とかの関係がとても好きでね」
「すみません、興奮しちゃいました。なんかそういう関係って運命的で素敵だなって思うんです」
「あぁ気にしな「唯、俺たちの出会いは運命的だったろ」」
「違うんです。そうゆうわけじゃないんです。私も海くんとの出会いは運命だと思っています。」
なんだこいつら……いきなり二人の空間を作りやがった………
互いに目を合わせて俺の存在なんて忘れてるだろ。
「そうゆうのは二人の時にやってもらっていいか」
そう言うと、二人は悪びれた顔をしてこちらを向いて謝った。
「悪ぃ、ついな。優斗もわかるだろ。よく後藤さんとやってるし」
「俺が美空と?まず、大学でそんな話して無いぞ」
「いやいや、話した回数が少なくてもわかるもんだぜ。なぁ唯」
「そうですね。特に美空ちゃんの表情が他の人と話している時と全然違います」
「そうか?そんなに変わらんだろ」
「じゃあ、後藤さんに聞いてみなよ。『俺と俺以外の人で話す時表情違うのか?』って」
「わかった聞いてみるわ。飯も食い終わったし、またな二人とも」
「あぁ、じゃあな」
片手をあげる海と軽く手を振る清水さんを視界に収めながら席を立ち、次の講義までの待ち時間にライムを開いて美空にメッセ―ジを送る。
<美空って俺と話すときに他の人と話すときと表情違うのなんで?>
すぐに既読がついたが暫く返信が来なかった。なんかマズいことを言ったかと考えていると美空から返信が来た。
<自分で考えれば、バカ優斗>
……長い事共に過ごしたのにまだまだ分からないことがたくさんだ。
一生かけてもわからないかもな。
<ごめん、やっぱり美空が魅力的だという事がわかった>
既読がつくのと同時に電話がかかってきて美空が話し始めた。
「いきなりそうゆうこと言うのダメっていつも言ってるでしょ」
唯々、くだらない話を電話越しにしながら美空の待つ家への帰路についた。
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