第23話 腐れ縁の幼馴染が手強すぎる!
帰宅した後、俺と美空の両親に報告したところ、喜んで張り切りすぎた大人たちによってもみくちゃにされながらもその温かさを感じた。
その後、数日実家で過ごして俺たちは自分たちの家へと帰った。
これでめでたく俺と美空は結ばれておしまいだったら良かったのだが…
「なんでずっと俺の家にいるんだ?」
帰ってきてから美空はずっと俺の部屋に居座っている。
最初は俺が待たせてしまったし、しょうがないと思っていたけど、一週間を超えても美空の家に帰る気配が全くないとなると話は違う。
それに俺の家にどんどん美空の私物が増えてきている。
服から始まり、スキンケアの道具やパソコン、ついにはチェストも持ち込んできた。
「え?だって、この家は私の家になるんだよ?」
「は?」
「お母さんが婚姻届けは出してないとしても婚約関係なんだから同棲しなさいって言われて、九月末で私の家の契約切れるんだよね。だから、これから本当の意味で一緒に暮らそうね」
「そうなんだってなるわけないだろ。なんで事前に言ってくれなかったんだ?」
俺が素朴な疑問をぶつけると美空は苦笑いをしながら答える。
「内緒にした方が優斗の反応が楽しめると思うし、優斗なら怒らないだろって怜央さんに言われたからつい」
あの父親絶対に次会ったら文句を言う。
「ご、ごめんね」
黙っている俺が怒っていると思ったのか、美空が手を合わせて謝ってくる。
「別に怒ってないよ」
確かに驚きはしたが、美空と一緒に住むことに対しては全く嫌な気持ちはない。普段から同棲に近かったし、この一週間も楽しかったしな。
まだ、不安そうにこちらを見ている美空の頭を軽く撫でた後、立ち上がる。
「そういう事ならベットとか重い物から運ぼうぜ」
「うん」
取り敢えず数時間かけて、俺の手が必要そうな重い物とよく使うようなものを俺の家に持ち込んだ。
「手伝ってくれて、ありがと」
「当たり前だろ。これから一緒に暮らすんだから」
ここ一週間で少しずつ変化していた家が一気に二人暮らしの家になった。そこに感慨深いものを感じていると美空が唐突に
「結構動いたから、汗かいちゃった」
「確かにな。先風呂入って来いよ」
俺はあまり汗をかいていないから、美空に風呂を促すと、美空が俺の手を取って洗面所に連れていった。
「どうした?」
俺が声をかけた時だった。
美空はその場でその身を包んでいた半袖の服を脱ごうとする。
「ちょっと待て。何してるんだ」
「私は手伝って貰った側なのに先にお風呂に入るなんて気になるよ。それに私たちはもう婚約者だし裸を見る事は悪い事ではないでしょう」
したり顔で俺にそう告げる美空は心底たのしそうだ。
俺はめくりかけた服の下に見える綺麗な曲線を描く、女性らしい腰に目を奪われながらも決死の抵抗をする。
「婚約者だからってそこら辺を急に帰るのはどうかと俺は思うぞ」
一言言い残して、俺は急ぎ早に洗面所を抜け出す。
その後、美空が追いかけてくることはなかったが、俺はさっき少しでも美空の普段見えない柔肌を見たせいか、美空の入浴の音が大きく聞こえる中で理性と戦っていた。
風呂から上がったらしい美空の足音が聞こえて振り返ろうとすると、俺の背中に柔らかいものが触れた。
「ヘタレ優斗」
…俺は何も言い返せなかった。
婚約者になっても俺にとってこの腐れ縁の幼馴染は手強すぎるらしい。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
第1章 腐れ縁の幼馴染 完
ここまでで「腐れ縁の幼馴染が手強すぎる!」は一区切りとなります。
想像より多くの人に見てもらえていてとても嬉しく思ってます。
第2章 腐れ縁の婚約者 は毎週日曜日の0時更新という形で連載していきたいと思っています。
新作も用意していて、八月ごろに公開できると思うのでお待ちくださると嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます