第7話 幼馴染との過ごし方(GW編)
佐渡旅行から一日挟んで、俺と美空はワオンに映画を見る為、訪れていた。
「美空、今日は何の映画を見るんだ?」
「今日は恋愛物のつもりだけど良い?」
「ああ、良いよ。俺の行きたかった佐渡にも付き合ってもらったしな。それに偶には恋愛物もいいだろ」
映画を見に来てるにしては上機嫌な美空を見て、俺はある天啓がひらめいた。美空が唯々映画を見る為だけに俺をわざわざ連れてくるのかという事だ。
本当に美空が映画を見たいだけなら申し訳ないが、これまでの傾向から絶対に何か仕込んできているだろう。
だが、映画館では大したことはできないだろうという希望にかけるしかないな。美空のペースに流されないように何をしてきても冷静を装っておこう。
映画館についてチケットを買った後に事件は起こった。
「旅行も行ったばっかりだし、お金を節約した方が良いと思うの。だから、飲み物は二人で共有して飲まない?」
…つまり、関節キスを許容して飲み物を飲もうという事だ。
俺たちは幼馴染だし、何度も意図してない状況で間接キスになったことはあるけど、自ら意思を持ってするのでは大きな違いだろ。
それに俺と美空はお互いに好意を持っている事には気づいているけど、そういう直接的な行動は避けていた。俺は互いの幼馴染という関係が終わってしまう気がしてできなかったんだ。勿論、関係性を表す名前が変わったとしても俺たちは変わらないとわかっているが、踏み出す勇気がなかったんだ。
美空も俺と同じだと思ってたのに何を考えているんだ………
「できないの?」
美空はできて当然と言った表情でこちらを見てくる。
「できるに決まってるだろ。買ってくる」
俺はそう言い切って、美空も飲めるリンゴジュースを買ってきた。美空は炭酸が苦手なのだ。
放送が入り、俺たちの見る映画の入場が始まった。席を見つけ座った時に俺は美空に先手を打った。
「のど渇いたから、先に飲んでいいか?」
そう、先に飲んでしまえば葛藤する側になるのは美空なのだ。その為に俺は自分で飲み物を買ってきた。そうすれば言い出しやすいからな。
美空はハッとした顔を一瞬覗かせたが、落ち着いた様子で話してきた。
「飲んでいいよ。私は途中で飲むから」
許可が出たのでジュースをストローで飲んで、美空に渡す。
美空はそのまま受け取ったが、少し耳が赤くなっていた。
映画が始まり、一時間ほど経ったのどが渇いてくる時間帯。
そんな時に美空はジュースを手に取って、口に含もうとした。しかし、口でストローを加える直前で硬直し、次第に顔が赤くなっていた。
しばらくして、意を決したかのように頷いた美空はストローを咥えジュースを飲みこんだ。
それを横目で見ているだけなのに、俺は謎の羞恥心に襲われていた。自分が仕掛け返したこととは言え、自分の咥えたストローを美空が照れながら咥えているという状況が俺のメンタルを削ってきた。
◆◆◆
映画を見終わった後、未だに顔を少し赤くした美空と一緒にウィンドウショッピングをしてから家に帰った。
ウィンドウショッピングをしている内に美空はいつも通りの感じに戻ったので、はぐれないように二人で手を繋ぎながら買い物をした。
家のドアの前で別れようとすると美空は俺の手首を引いて、俺に近づいた。美空が離れる直前に俺の頬に柔らかい感触を感じた。
俺が呆然としていると美空は自分の家のドアを開けて去り際に一言。
「ドキドキした?」
呆然としたままの俺が家に入ってから、家の電気がつくまで30分かかった。
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