第4.5話 深夜の映画鑑賞<裏>
「ねぇ、美空ちゃん。最近天道くんとはどうですか?」
土曜日に唯ちゃんと遊びに出かけている最中、不意に唯ちゃんがこんなことを言ってきた。
「どうって言われてもいつも通りだよ。別に特別なことはしてないしね」
そう言うと唯ちゃんは我が意を得たりと言わんばかりに頷きながら隠し事をするように私に囁いてきた。
「じゃあ最近、天道君と直接的なスキンシップはないんじゃないですか?」
……確かに優斗とは同じ空間にいる事は多いけど、スキンシップは最近してない。 むしろ、一人暮らしを始めてから減っている気もする。
そんなことを私に言ってくるってことは最近まで唯ちゃんも同じような状況だったってこと?けど、そうだとしたら何かスキンシップをとれる手段があったという事では?
その考えにたどり着いた私は唯ちゃんに囁き返した。
「ないけど、唯ちゃんは最近スキンシップが取れたって事?」
静かに唯ちゃんは頷いて私にそのアイデアを授けてくれた。
「あのですね、古典的なんですけど海にホラー映画見ようって誘ったらスキンシップが取れました。海がホラー苦手なのもあって、滅多にしないのですが海から私に抱き着いてくれたんです」
非常に嬉しそうに話す唯ちゃんは普段の私だったら、そのまま抱き着いてしまうほどの可愛さだが、私は既にホラー映画で優斗とのスキンシップを取る方法しか頭になかった。
「美空ちゃん。海が言ってたんですが、男は女が怖がってたら守りたくなるもんだから甘えるチャンスって言ってましたよ」
「やってみるわ」
「頑張ってくださいね。美空ちゃん」
美空、チャンスを作って見せます!
◆◆◆
昨日の帰りに一見ホラーとは見えないホラー映画を借りてきて、夜に優斗の家に乗り込んだ。
◆◆◆
想定通り序盤の和やかな雰囲気と異なり、不気味な映像が流れだした。
本格的にホラー展開が始まったのは良いんだけど、いつ優斗に触れればいいの。そこまで考えていなかった、想定が甘いのよさっきまでの私ッ。
そんなことを考えていると優斗が話しかけてきた。
「なあ美空、なんて紹介されたんだこの映画」
「海と二人で見たら楽しかったよって紹介された」
「内容は聞かなかったのか?」
「………」
「知ってて黙ってただろ。普段そんなことしないのに何が目的だ」
「……黙秘します」
バレちゃった?バレちゃったのかなぁ。どうしよう、優斗とに甘えるどころか、私の企みがバレてたら恥ずかしすぎるッ………どうしよう。
現実から逃避するように画面を見ると、主人公一行が化け物に追われているシーンだった。
無理、無理です。もう限界、怖すぎる。優斗、優斗。
「ねぇ、腕貸して」
………言っちゃった。
「苦手なのに見ようとするからだぞ。何が目的だったかは知らないけど、好きに使えよ。」
「ありがと」
優斗の袖を掴み、そのまま手繰り寄せるようにして優斗の腕に抱き着くと、先ほどまであった恐怖心が途端に薄くなって落ち着いてきた。
優斗の腕、あったかいな。その温かさを実感すると、私の居場所はここにあるという安心感と幸福感が私を包んだ。
そのまま映画を見終わって家に帰ると、ホラーを見た後特有の怖さじゃなくて、優斗が傍にいないことの寂しさが私を襲い始めた。
さっきの優斗の腕の温かさがどうしても欲しくなって、全然眠れなかった。
だから、悪いと思いながら優斗の家にもう一度行ったら、優斗と一緒に寝ることができた。
久しぶりに隣に優斗の暖かさを感じながら寝たからか、翌日の朝は寝坊してしまった。
優斗との朝の時間が減ってしまったのは残念だけど、それ以上の満足感が私を覆っていた。
今日は優斗だけが講義のある日だから、私はこのまま優斗の家で待っていよう。
「優斗…早く帰ってくると良いなぁ」
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