第9話 十三夜
美しい月が雲から覗く10月の夜、俺の部屋から見える月を並んでみている俺と美空の傍には団子も添えられていた。
「ねぇ、優斗。私に言う事があるんじゃない?」
俺の顔を覗き込むようにして、言葉を投げ捨てた美空のしたり顔を視界に入れつつ、地雷原を避けて発言をする。
「お月見って月見をした後に団子を食べるのが正解らしいよな。だから、食べながら月見をするのはアウトだってさ」
その声を聴くと、俺が返答を模索して黙っている間手持ち無沙汰だったのか団子を口に運ぼうとしていた美空が固まる。
そんな美空をからかうように俺は更に言葉続ける。
「これが花より団子か…」
「………」
俺が思うような事をしてくれないせいで美空が少し拗ね、下を向いた。
それを見た俺は美空が先程から望んでいた言葉を月が雲に隠れ、月明かりが静かになるのと同時に囁く。
「月が綺麗ですね」
その瞬間、月明かりが差し込まない暗がりでも一目でわかるほど顔を上気させた美空がとろけるような表情を俺の瞳に写して告げる。
「月はずっと綺麗でした」
そのまま俺に体を預ける美空に俺の心臓は悲鳴を上げ続けていた。
◆◆◆
翌朝、目が覚めてリビングに向かうと聞きなれた声が聞こえて来た。
「月が綺麗ですね」
記憶に新しいその言葉は美空の手に持つスマホから発せられていた。
その後、猛抗議をしたのだが、結局その音声が消えることはなかった。
あぁ、やっぱり俺の幼馴染は手強すぎる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます