第11話 暗闇デート

 所々に紅葉のニュースがリビングに放たれる11月の夜、唐突に告げられた美空の希望によって、俺たちは寒さを紛らわせるように身を寄せ合いながら歩いていた。


「それにしてもなんで唐突にカルピスが飲みたくなったんだ?」

「わかんないよ。強いて言うなら体がカルピスを求めていた」


 そんな意味の分からないことを言い合いながら、近くのコンビニを目指す。


 俺たちの住んでいるところはスーパーからは近いものの、コンビニからは少し離れているのでこうゆう夜中に何か買いたくなった時に少し不便だった。

 けれど、こうやって二人で歩く分には不便さを感じることはなかった。



 コンビニにたどり着くと定員の気だるそうな声が聞こえてくる。

 早速、目的のものがある飲料コーナーに俺が向かおうとすると、握っていた美空の手が少し強く握られる。


「どうした?」


 俺がそう尋ねると、美空は元々寄り添っていた体を更に密着させて呟く。


「なんか夜のコンビニってドキドキするね」


 それに対して俺は共感はできるのだが、今は暖かさを俺に伝えてくる美空の柔らかさでドキドキしていてそれどころではない。

 違う意味での胸の高鳴りをごまかすために更に俺は言葉を繋ぐ。


「確かに、外が暗いから店内の明るさにドキドキするのかもな」

「そうだね。それに昼間に来ても思わなかったけど、コンビニっていろんなものが置いてあるんだ。これとかさ」


 そう言って美空が指を指した先には食器用洗剤が陳列されていた。


「それにスーパーとかよりも少し安いし」

「気づかぬうちにコンビニも便利になってるんだな」


 そして、食器用洗剤の棚から離れて飲料コーナーに辿り着いてカルピスを購入した。

 ただし、俺はカルピスソーダ―、美空はカルピスを購入して家に帰った。


 家に帰った後、リビングで並んで座って買ってきたカルピス達を飲もうとした時、


 「炭酸入りのって美味しいの?」

 

 と言って炭酸が少し苦手な美空は微炭酸のカルピスを買った俺に尋ねる。


「あぁ、おいしいぞ」


 そう何の気もなく答えたはずだった。


「じゃあ、優斗が口に含んだものを口移ししたら私でもおいしく飲めるかな?」


 は?


 俺が美空の方をぎこちない動きで見ると、俺が口移しをすることが当たり前のように目を閉じていた。


 そんな美空を見て、半ば達観したような心の持ちようになりながら、カルピスソーダを口に含み、美空の瑞々しさを感じる唇に触れる。

 

 口移しが終わり、美空がカルピスを飲み込むと真面目な表情をして一言、


「口移ししたら炭酸が抜けて普通のカルピスと変わらなかった」


 そう言って美空は逃げ込むように自分の部屋に入っていった。

 その時、見えた美空の耳はイチゴのように赤かった。



 恥ずかしくなるならやるんじゃねぇよ…


 

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