使えないと思った僕のバフはパッシブでした。パーティーを追い出されたけど呪いの魔導士と内密にペアを組んでます

すみ 小桜

第1話 入れ替えされました

 「マルリード。今日は大切な話がある」


 パーティーリーダーのジグルさんは、僕をジロッと見て言った。ここは、パーティーギルドと言って、モンスター討伐の為のパーティーを探す所。

 ここでは、討伐依頼も受けられる。

 朝一でここに来た。


 「今までお前を信じ、パーティーを組んだ時から一年間我慢してきたが、何も出来ないお前とはこれ以上無理と、パーティー一同の意見が一致した。よって入れ替え・・・・をする事にした」

 「え? 入れ替え……」


 一年前、幼馴染のニーナと一緒にパーティーを探しに来て、結成したばかりのジグルさんのパーティーに入れてもらった。僕らを入れて五人パーティーになった。

 ニーナは、回復魔法が使えた。だから僕も一緒に入れてくれたんだ。

 それにニーナは、淡いピングのふんわりした髪にサファイアの瞳で、孤児でなければ冒険者にならずに、見初められそれなりの人と結婚できただろうというカワイイ見た目。


 孤児院では、十五歳になったら冒険者になる事になっていた。なので彼女も僕も今は十六歳。

 ニーナは、カワイイからちょっと大人っぽくなっている。そんな彼女は、パーティー内で大活躍だ。


 僕はというと……。

 バフの魔法があるにもかかわらず、一度も使えた事がなかった。

 それでも何か役に立つ様にと、色々チャレンジして『簡易鑑定』魔法を取得。後付け魔法というやつだ。


 生まれ持った魔法が上手く使えないので、後付け魔法を覚えようとしたけど、結構お金がかかる。だから自分の分け前を全てそれに当てていたのに、どうしよう。


 ニーナをチラッと見ると、彼女は口を開いた。


 「私もそれなりに一年間お願いしていたのよ。でもそれも限界。みんなドンドン強くなっていくなか、マルリードだけ何も変わらないじゃない。弱肉強食。生きて行くためには、強くならないとね。荷物だけ持っていたってだめでしょう?」

 「……そうだね。今までありがとうございました」


 僕は、皆の荷物をケースに入れて引っ張って歩いていた。それぐらいしか役に立っていなかったんだ。


 「聞き訳が良くてよろしい。新しいメンバーは、ガイダーという巨人族だ。君がやっていた荷物持ちもしてくれて、君ができなかった戦闘にも参加してくれる頼もしい仲間だ。では、手続きをお願いする」


 そんな言い方しなくてもと思いつつもジグルさんに言われて、パーティー脱退手続きをした。リーダーと本人の同意でパーティー入会、脱退するのが普通だ。

 追放という、リーダー権限もあるけどそうはしなかったみたい。


 「あのニーナ。気を付けてね」

 「私の心配より自分の心配したらどう? 後付け魔法を取得しようとしてお金つぎ込んでいたでしょう? 誰も組んでくれないと思うからソロパーティーで登録した方がいいわよ」

 「あ、うん……」


 冒険者になりたての時は、こんなにズバッというタイプじゃなかったのになぁ。言っている事はあっているけど。


 「まあ頑張りな。ガイダーが入った事によって俺達のパーティーは、Aランクパーティーになった。抜けてくれてありがとうな。行くぞ」


 ジグルさんは嬉しそうにそう言って僕を残し、パーティーを引き連れて建物を出て行った。

 ニーナは、僕に振り返る事無くいってしまった。ジグルさんを好きらしく、この頃は彼にべったりだったもんな。

 ジグルさんは背は僕より高く、年齢は二つ上だけど暗い紫のサラサラヘアーがもっと大人に見せている。僕には冷たく見える紫の瞳も、ニーナを見る時は優しさがこもる。剣の腕もいい。

 うん。勝てる要素がないな……。


 はぁ……。しかし、Aランクパーティーか。

 個人のランクでは、ジグルさんはA、それ以外の人はBランク。

 パーティー試験というのがあって、個人もその時にランク昇格試験を受けられる。


 僕はその時に何も出来なかったので、ずっとEランクのままだった。なのでパーティー総合ランクが、Cランクだったんだ。僕が抜け、新しいメンバーが入った事でAまであがった。

 ガイダーさんという人は、Aランクだったんだろうな。


 ランクによって、討伐に行ける場所が決まっている。

 倒す敵や数によってポイント計算があって、ある程度こなすと依頼報酬とは別に、報奨金というのが当たる。

 僕は、報奨金の分け前は貰っていなかったけど仕方がない。


 って、Eランクの僕が行ける場所でこなしても報奨金が出るまでポイントなんて貯まらないから地道にやるしかないよね。


 「あのソロパーティー登録します」

 「あ、うん。そうね」


 成り行きを見ていたカウンターのロロリーさんが、はいと用紙を出した。

 彼女には色々世話にっている。後付け魔法の事を教えてくれたのもロロリーさんだ。


 「残念だったわねぇ。昨日取得出来たんでしょう? 簡易鑑定」

 「はい。なんとかやっと。でもごねても仕方ありませんから。もう次の人が決まっていたようですし」

 「まあ後釜がいたら嫌だって言えないわよね。はい、登録終了。鑑定を持っているなら採取でもいいかもね。知識がなくても鑑定で何とかなるでしょう?」

 「なるほど。そうします」


 簡易鑑定は、アイテム名と分類がわかる程度。でも採取には役に立つ。

 とりあえず、お金を手に入れて身なりを整えたいな。


 僕は、一年前新調した服をそのまま着ていた。小さいくなったけど、買い替えるお金がなかったから。食費も節約していた。そうして手に入れた簡易鑑定。

 もうちょっと早く覚えていたらパーティーにいれたのかな……。


 食費を節約していた為か、自慢の銀の髪も艶が無い。藍色の瞳も気力がないよな僕。

 これからは一人だし、誰にも迷惑を掛けないから気楽に行こう。


 薬草摘みの依頼を受け、草原へと向かった。

 みんなの荷物がないから足取りも軽い。

 そうだ。自分を鑑定してみるかな。

 人物の鑑定だと、所持魔法も見れるらしいし。どんな感じか楽しみ。


 「えっと、自分を鑑定」


 『マルリード』総合レベル:9

  HP:350/350

  MP:4,600/4,750

  魔法:バフ

  簡易魔法:鑑定


 うん? ううん??

 なんだこれ。レベルとHPがあってなくないか?

 聞いた話によれば、レベルはHPの10分の1程度って聞いたんだけど。鍛えていれば別だろうけど、凄すぎないか? MPだって4桁行くのなんて、10年以上やっている冒険者だと聞いたのに4,000超えって。

 これ詳細みれないかな? 簡易だから無理か。


 「え……」


 HP:70+280

 MP:950+3,800

 攻撃力:10+40

 守備力:20+80

 素早さ:25+100

 魔力:150+600

 運:100


 魔法:『バフ』レベル40

 簡易魔法:『鑑定』レベル1+10


 見れた。これって一体どうなってるの? なんで詳細が見れる? ってそれよりこの追加の数値は何? もしかしてバフの影響? うーん。バフのレベルもおかしすぎる。一度も使った事が無いよね?

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