第14話 今に至るまで

 声を掛けて来たのは、向こうからだった。

 ジグルさん達は、パーティーを再結成したばかりだったみたいで、回復役が欲しかったと言った。


 「君も一緒でいいからさ」


 そう言われ、僕はおまけかと思ったけど仕方がない。

 僕達が孤児院出だと聞いても変わりなく接してくれていた。ただ、僕とニーナの扱いは最初から違ったけどね。

 まあニーナは、女性だし見た目かわいいし。仕方がないかって思っていた。


 普通バフは、色々分かれているらしく攻撃系とか守備系とか。だけどそれがわからなかったから取りあえず、戦闘途中で掛けてみてと言われてやってみた。普通は、声に出せば魔法は必ず発動するはずなのに、一向に与えるダメージも受けるダメージも変わらない。

 だったら荷物持ちをお願いすると言われ承諾した。みんなの荷物を一人で持つのは不可能なので、入れて引っ張れるケースをお金を出し合って買い、それに全員の荷物を入れて僕が引っ張って歩いた。

 もちろんそれは、戦闘中以外もだ。


 最初はそれでもよかった。

 けど何か違うと思ったのは、昇格試験の時だ。

 僕達が入った時は、パーティーランクはDランクだった。そのランクを上げる為に試験を受けた。普通、個人も見て判定される。

 けど……。


 「いつも通りに戦闘をしたいから、今回は何もしないでくれ」


 そう言われた。試験時僕は、荷物を持っていない。剣を手にただ突っ立っているだけだった。動こうとすればジロッと見られ、目で動くなと言っているように感じて大人しくしていた。

 そうすれば結果、Eランクのまま。

 けどパーティーランクは、無事上がりCランクになった。

 ニーナも二つも上がってCランクに。


 「僕も戦闘に参加したい」


 そうお願いしてみた。

 戦った事はあるのか? そう聞かれたからないと答えた。だったら大人しく荷物持ちをして欲しいと頼まれた。その方が動きやすいと。

 なのでこっそりと、スライムを倒しに行った。

 そんな時、ロロリーさんに後付け魔法の事を聞いたのだ。簡易魔法と言って、魔法を取得出来ると。


 攻撃魔法は、定員がいっぱいになっていたので、ちょうど一名空いていた鑑定に申し込んだ。貯めてあったお金をつぎ込み習いに行く事に。

 そんな時、また昇格試験を受けるというので、今度は戦闘に参加したいと申し出た。

 邪魔しなければいいと言われ、僕も戦闘に参加できる事になった。


 でも実際は、連携に入れてもらえないので戦えなかったのだ。

 というより僕の事は無視。三人でいや四人でいつも通り戦闘していた。僕は、どうしていいかわからず、うろうろするしかなかった。

 ジグルさんが、僕以外にしか指示を出さなかったからだ。


 結果、僕は何一つ出来なくてEのまま。

 ジグルさんはAに他の人はBランクに昇格。ただジグルさんはリーダーとして、僕の事で指導を受けたようだった。

 たぶんそれが決め手になって、僕をパーティーから外そうと思ったんだと思う。


 簡易鑑定の事は、ニーナだけに話した。

 戦闘に参加出来ないのならせめて、それ以外で役に立とうと。でも空回りだったみたい。


 「なぜそれなの? 普通戦闘系選ばない?」


 呆れた様に言われ、空いていなかったという言い訳は言わなかった。

 それでも無事に簡易鑑定を取得できて嬉しかったのに、次の日にパーティーを追い出されてしまう。後釜を用意していた事からもう決定事項だろう。

 僕は、不要。そういう事だと悟った。


 このパーティーに居ても僕は役に立たないのだからそのまま抜ける事にした。気がかりなのはニーナの事。彼にのめりこんでいるようだったから。初めての恋なんだと思う。


 こうして僕はソロになったんだ。

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