第68話 予定とは違って

 僕は、レモンスさんがスーレンさんだとは気づかずに、チェミンさんの事を相談してしまい、親の復讐になると僕自身も巻き込まれてしまう。

 しかも街ごとモンスターで襲ったと聞いて、居ても立っても居られなくなった僕は、街へ向かったがなぜかスライムは居なかった。


 という筋書きらしい。みんなに思わせるのは、僕がチェミンさんを好きって事だけらしいけど。この作戦上手く行くの?


 『レモンスが何も言わなければ上手く行くのではないか? 君の気持など誰もわからないのだからな。あ、私が知っているか』


 リレイスタルさんはいいとして、エドラーラさんの護衛は僕がチェミンさんに興味がないの知っているじゃないか。


 『彼らが余計な事を言うわけないだろうが。ギルドを敵に回す気なら別だが。だから話を合わせるさ。いや何も語らなければいい。まあチェミンは、君に惚れているのだからな』


 ……嫌な予感しかしない。


 「調査隊を騙せればいいのだからマルリードは、うんうんと俯いて頷いていればいい」


 ポンと僕の肩に手を置きリトラさんが言うけど、不安しかない。じゃスライムはどこいった。となって、街の人に聞けば核になったとわかるだろうし。僕が魔法を使ったと知らなくても、僕が通った後は核になったと気づけばバレるのような気がする。


 『いや君がいたかどうかなど、街の者は覚えてないだろう。何せあの状況だぞ? 自分の事で精一杯だろう。そして核を拾うのに一生懸命だったしな。何か言うとしたらエドラーラだろうが、君がしたのは冒険者を大人しくさせた事だろう? ベルはレモンスから奪った物で、持ち逃げしたのではなく持ってきてしまったものだ』


 まあそうだね。

 あとは、レモンスさんがなんて証言するかだけど……。


 『街で起こった事は、レモンスは知らないんだ。そこは何も証言できん。魔素うんぬんと言っても知らんぷりすればいい。リルの事も知らないで通せばいい。きっとリルの事は話すなと言ってあるだろうからな。リルの事がなければ、君と魔素は繋がらない。レモンスが何かを言ったところで知らないで通せばいい。どうせステータスは、バフしかないのだから』


 そうなんだけどさぁ……。


 『今考えても仕方がないだろう。何か質問されて困ったら知恵を貸してやる』


 うん。お願い……。


 『いつもは、騙してない? とかいうのにな』


 自分の運命が掛かっているんだからそんな事言っていられないよ!



 次の日の朝早く、王国騎士団の調査隊が到着した。専用のゲートを通って来るらしく連絡して半日で到着。これうかうかしていたら口裏合わせすらできないよ。


 『そうだな。大きな裏工作は難しいな』


 僕たちは、一人一人部屋で待つように言われ、ドアの外からカギがついた部屋に入れられた。もちろんきっちりカギを掛けられている。


 『結局この部屋で待機なんだな』


 ガチャ。

 ノックもなしにドアが開き、調査隊の人が二人入って、二人が入るとまたカギを掛けられた。

 スーッと一人が僕の後ろへ回る。


 「初めまして私は、クーベン。彼はネルギ。君の話を聞く担当だ。よろしく」

 「あ、はい。よろしくお願いします」


 僕の目の前の人がそう自己紹介をした。


 「立ったまま話を聞いてもよろしいか?」

 「はい構いません」

 「では、君の名前を教えてください」

 「マルリードです」

 「ランクは?」

 「Cです」


 聞きながら後ろのネルギさんが何やら記入している様子。ペンを走らせる音が聞こえる。


 「レモンスとの関係は?」

 「えっと……冒険者仲間です」

 「君がスラポの草原に行った理由は?」

 「えっと……エドラーラさんに頼まれてスライムの核をとりに行ったんです」

 「なぜ彼らとモーメントパーティーを組んだのですか?」

 「えーと……」


 これ頷いてやりすごす質問がないんだけど!


 「スラポ草原までの道のりにモンスターがいたら倒せないかもしれないからです……」

 「それにしてもギルドマスターまでついてきてもらったのですか?」

 「僕は、ロメイトさんとリトラさんと組んだつもりだったんですが」

 「では、その二人以外来るのを知らなかったという事ですね?」

 「はい」

 「なぜディルダスさん達が付いて来たか聞いてますか?」

 「魔素酔いしたモンスターを討伐する為です」

 「そこになぜ、魔素酔いしたモンスターがいると思ったのでしょうか」

 「探す場所がもうそこしかなかったからだったみたいです」


 これいつかボロがでそうなんだけど……。


 『まいったな。言葉は選べよ』


 そうしたいけど、そんな余裕ないよ。

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