第57話 即席モンスター討伐パーティー

 シュポン。

 核の採取は、やっぱり楽しいな。

 見渡す限り草とスライム。本来ならのほほんと採取して楽しむところだけど、二人が気になる。


 『だったら魔眼で探ってみたらどうだ? 核なら10個溜まっただろう?』


 そうだね。一応スラポ液にしておくよ。

 入れ物を持ってきたので、その場でスラポ液にしていく。そしてそれをマジカルリュックにしまった。


 うーん。やっぱり明るいとやりづらいな。


 『仕方がない奴め。森に入れ。薄暗いからやりやすいだろう。向こうが良い』


 なるほど。ありがとう。

 すすめられた森へと走る。風が気持ちいい。


 『どうだ? 見えたか?』


 え? これって……。

 数は100体ほどで、大小の大きさ。ちょっと先だ。

 草をかき分け進むと、獣道に出た。獣道といってもくっきりと草がなぎ倒され、僕らをいざなっている。警戒しながら進むと、岩山に洞窟の入り口があった。その奥に大量の魔素酔いしたモンスター達が、魔眼によって確認できる。


 「本当にいた……」

 『確認できたんだ。いったん戻るぞ。我々だけではどうしようもない』

 「マルリード!」


 名を呼ばれビックっとして振り返った。


 「ロメイトさんか。びっくりした」

 「その奥にモンスターが居そうだな」

 「はい。います。応援を呼ばないと」

 「その必要はない」

 「え? なんで……。突っ込んでいく気?」

 「まさか。もう手は打ってあるって事だ。いったん草原へ戻ろう」

 「はい……」


 草原へ戻ると、リトラさんの姿があった。そして、他に10人程の姿も! ダリリンスさんにレモンスさん、ギルドマスターのディルダスさんの姿まであり、ジグルさんまでいた。


 「え? どういう事?」

 「すまないな。勝手にあのモーメントパーティーに、彼らの名も記載させてもらった」


 そうロメイトさんに説明されても意味がわかんない。


 「ごほん。俺の権限で追加させてもらった。ここにいる者は、魔素酔いしたモンスターにもダメージを与える事が出来る者達だ。即席で作った討伐パーティーだ」

 『どうやら君から話を聞き、相手に気づかれる前に討伐しようという事にしたのだろうな』

 「知らなかったのって僕だけ?」

 「まあそういう事だ。で、ロメイトあったか?」

 「あぁ。リトラ、マルリードを頼むぞ」


 うん? 僕らは行かないって事?


 「マルリード。俺たちはここで待機だ。行っても足を引っ張るだけだからな」

 『君も魔素酔いのモンスターには攻撃を当てられない事になっているからな』

 「そ、それはいいけど。あの人数でも無理があると思うけど?」

 『そうだな。数で言えば100体はいるな』

 「対策は練っているさ。普通は洞窟内とかに集めているだろうと、魔素酔いしたモンスターを倒す魔法陣を使う作戦だ」

 「リトラさんはその作戦内容を知っているの?」

 「前出ていた案のままなら、洞窟内のモンスター同士で戦わせる作戦だ。洞窟から出てきたモンスターのみをロメイト達で倒す」

 「それなら大丈夫そうだけど、そんな事って本当に出来るの?」

 「魔法陣さえ発動させられればな」


 上手く行くといいけど……。


 「ウー」

 『やばいな』


 え? やばい? って。リルも唸っている?


 リーン。リーン。リーン。リーン。リーン……。

 鈴の音!? 嘘! いたの?


 『いや、あの洞窟にはいた気配はなかったのだが』

 「ウー」

 「落ち着いて、リル。大丈夫だから」

 「どうした?」


 リーン。リーン。リーン。リーン。リーン……。

 音が近づいてくる。


 「鈴の音が聞こえるよね?」


 リーン。リーン。リーン。リーン。リーン……。


 「確かに。まさか! モンスターを誘導しているのか!?」

 『マルリード! リルをポーチから出せ!』

 「え? 危ないよ!」

 『いいから出せ!』

 「わかったよ」

 「………」


 ポーチから出し降ろすと、小さなリルは草に隠れてしまった。ウーという唸り声が聞こえるだけだ。


 「くそ。作戦は失敗か」


 みんなが走って戻ってくるのが見えた。森から出てきたのはもちろん、冒険者だけではなくモンスターもだった。その数が半端ない!


 「やっぱりマルリードを殺す気だったのか!?」


 リトラさんが叫んだ。

 えー! もしかしてエドラーラさんもぐるって事ないよね?


 『ないことを願いたいな。追うぞ!』


 え? 追うって何を?


 『リルだ! 真犯人へと導いてくれるだろう』


 ちょ。そういう危ない事にリルを利用しないでよ!


 『何を言っている。リルも立派な戦力。魔狼だろうが!』


 というか、出てきた冒険者達の方へとリルは向かっていく。鈴の音はそっちから聞こえるから当たり前だけど。そこにはモンスター達もいるんだけど!


 「おい! マルリード待て」


 ごめん、リトラさん。焦って叫ぶリトラさんの静止を無視し、僕はリルを追いかけた。

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