第44話 錬金術は創作だ
『まったく。浮き沈みの激しいやつだ』
誰のせいでこうなったと思ってるんだ。はた迷惑なのを作ったのは誰だよ。
『まさか使用してしまうとは思いもしなかった』
なんでさ! 金持ちは欲しがっているって言っていたじゃないか。
『うーん。私の時代の貴族は、使うのではなくコレクション家だったからな。時代が違うと違うものだな』
もう何のんきな事言っているのさ。
今回は、偶然使っちゃったみたいだけど、使う気で手に入れたのなら悪用される可能性だってあるのだからね。
『悪かった。しかしそうなると何か見つける方法も探さないとだな』
それは後回し。呪いを消すポーションを作ろう。それがあれば、今回みたいな事があっても飲ませれば消せるんだし。
『そうだな』
でもなぁ。レベル50か……。僕の錬金はレベル11だけど簡易魔法だからレベル1と変わらないんだけど。
『先ほども言ったが、レベルは確率だ。そして、レベル1は成功率70%ぐらいだと言われている。つまり魔力が高ければ、成功する確率の方が高い事になる。後は一度作ると、同じ材料で作る限り99%の成功率になる』
え? そうなの? そっか。だったらスラポ液は、ほぼ失敗しないって事か。
『だから今回は、手に入るモノで作る方がいい。もらった材料の中に自分で買える物や取りに行ける物はあるか?』
そう言われてもな。見た事ない物もあるし。そもそもほとんどが高価な物だから僕じゃ手に入れられないと思う。
バタバタバタ。
あ、ポーチの中でリルが暴れてる。けどここで出したら物を壊しそう。
『そうだ! リルから何かもらおう。これならいいだろう』
「え!?」
『ポーションだから液体がいいだろうな。唾液か』
「え? そんなのを材料にするの?」
『血液でもかまわんが?』
「だ、唾液で……」
でもいいのだろうか? 飲ませるんだよね。
『そもそもスラポ液は、モンスターから取ったものではないか。それに魔狼の唾液など普通は手に入らん。かなり高価だ。きっと成功するだろう』
本当にもう、適当な事ばっかり言って!
『何を言う。経験から言っているのだ』
あっそ。
でもどうやって唾液を取るの? よだれたらさないと取れない気がする。
『問題ない。スラポ液も少量なのだから唾液も少量でいい。そうだな。ミルクがあっただろう。それに混ぜよう』
「なんだか不安になってきた。それで本当にできるの?」
『できると言っているだろうが』
「凄く適当に言っているようにしか聞こえないけど?」
『だから錬金は創作だと言っているだろうに。本来は魔力を混ぜてやるがヒールをかけながらするといいだろう』
「わかった。やってみるよ」
『ちゃんと作ろうと思ってやるんだぞ? それが成功のカギだ』
「……はい」
僕は、ポーチの中で暴れているリルを外に出した。手は離さないけどね。
「ごめんね、リル。ここで暴れると大変な事になるから。それとちょっとお願いがあるんだ。唾液を少しもらうね」
小さなさじを口に入れると、かじかじとリルはかじりつく。いや食べ物じゃないんだけどな。
『唾液が出てきたのではないか?』
まあこれはこれでいいか。そのまま唾液をすくって取った。
あとはミルク。そうだ。リルにもミルクをあげよう。
「はい。ミルクだよ。ちょっとそれ飲んで大人しくしていてね」
残りのミルクをビーカーに移し、ヒールを掛けながらスラポ液とリルの唾液を混ぜていく。
「ハイヒール」
不思議な事にミルクが光を帯びた。
軽く匂いをかいでみると、ミルクの匂いしかしない。ほとんどミルクだから当然だけど。
「鑑定」
『リムーバル』アイテムランク:S
契約魔法の除去。呪いの魔法も除去可能。
◆品質:最上級
『成功したようだな』
「すごい……本当にできちゃった」
『ではもう一つ作るぞ』
「え? リムーバルをもう一つ作るの?」
『いや新たに違うのを作るのだ』
「あ、魔法を探すやつ?」
『いや、魔法を奪うマジックアイテムだ』
「奪う?」
『私が作ったのは、アイテムに魔法を付与してある様な物だ。だから魔法を取り除く。だが私の目的は、その魔法の回収だ。なので魔法を奪うマジックアイテムが必要なのだ。問題は、呪いのアイテムにならないかだが、君が作るしリムーバルも呪いがないようだ。大丈夫だとは思う』
「そうだった」
『まあどちらにしても奪った魔法には、呪いがあるけどな』
はぁ……。作りたくないけど、こんな事がまたあったら嫌だし。なんで僕が、リレイスタルさんの尻拭いをしなくちゃいけないんだ~!
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