第43話 要は発想だ

 『思い出した。確か、MPが少なくても魔法が使える魔法を作ろうと、消費するのをMPではなくHPにしたのだ。だがなぜか、使用してから数時間HPが回復しないマイナス効果がついていた。つまりそれが呪いだ』


 呪いさえなければよさげな魔法だけど、一体それで何ができる魔法なの?


 『夢予言だ。まあ占い程度の効果しかないだろうが、寝る時に使う。彼女はきっと、何度も魔法を使ったのだろう。呪いの効果は、蓄積されていくからな』


 からな。じゃない! で、一回どれくらいの時間、回復しないの?


 『一回目は1時間。二回目は2時間。そういう風に増えていく。連続して使えば丸一日もあり得るだろうが、普通は寝ている間に呪いの効果が切れるのだが……』


 知らず知らずのうちに、連続して使ってしまったって事か。


 『毎日使えば、一か月もしないうちに24時間になるけどな』


 それ何か制限掛けたりしなかったの?


 『言っただろう? 一番最初に作ったと。試作品に近い物だ。コレクションにしたいからというので、貴族に売った』


 そんなものを売らないでよ!

 で、どうすればいい?


 『私は、ポーション系を作った事はないが、君は作った事があるのなら作れるだろう。レベルは低いが大丈夫だ』


 本当かな……。


 バン!


 「よかった。マルリード来ていたか!」


 ドアを勢いよく開けて入ってきたのは、チェミンさんのお父さんだ。


 「もうお父さん、病人のお母さんがいるのよ。静かに入ってきてよ」

 「す、すまない。どうだ。具合は?」

 「まだだるいけど、大丈夫よ」


 う。これバレたら殺されそうだな。愛妻家みたい。


 「マルリード……さん。来ていただいてありがとう」


 さん……って。


 「ひとつだけまだ手に入っていなくて、先にスラポ液を作成していてくれないか?」

 「はい……」


 本当にスラポ液だけじゃなく、エリキシルを作らせる気だったのか。


 『ひとついいか?』


 何?


 『錬金術とは創作だ。実は作り方は一つではないのだ。私の時代では、ポーションにスラポ液というモノを使ってはいなかった』


 作った事はないんでしょ? 知らないだけじゃない?


 『いや公開されているポーションには、なかった。それぞれの薬師がレシピにアレンジを加えてオリジナルのポーションを作っていたのだが。どうやら今の時代は違うみたいだな』


 え? そうなの?


 『マジックアイテムなんぞ、創作そのものではないか。ポーションにも魔力や魔法を加えて作るといいらしい。知り合いの薬師が言っていた』


 じゃ、足りない材料でもエリキシルを作れるかもしれないって事?


 『いや、作るのはエリキシルではない。呪いはそれでは解除されないからな』


 え? じゃ何を作るの?


 『呪いを除去するポーションだ。正確には、契約魔法を消す効果があるものを作る』


 そんなの作れるの?


 『作れない事はない。要は発想だ。そうだな。ヒールを使おう』


 ほ、本当に大丈夫なの?


 『やるのは君だ。健闘を祈る』


 何それ。


 「では、頼んだぞ。マルリードさん」

 「え? あ、はい」


 材料を僕に手渡すと、急いで部屋を出ていった。


 「マルリードさん、お母さんを助けて」

 「あ、うん。善処はするけど……」


 助けてあげたいけど、できるかな?


 『己を信じろ。まずはスラポ液を作れ。今の時代は、それがポーションの基本みたいだからな』


 わかった。やってみる。


 「えっと。どこか部屋を借りていいかな?」

 「うん。こっち」


 ついて行くと、実験室みたいな部屋に案内された。なんでこんな部屋があるんだ。


 「ここ使って。私、お母さんの部屋にいるから」

 「うん。頑張る」


 さてと、しぼるイメージで……。ビーカーにチョロンと液体を絞り出した。


 「鑑定」



  『スラポ液』アイテムランク:E

  ポーションの材料の一つ。

  ◆品質:最上級



 「やったぁ!」

 『ほう。これは素晴らしい。これなら問題ないだろう。しかし、何かヒントになるモノがあればいいんだが』

 「そうだ!」


 僕は、魔素空間から素材の本を出した。

 これポーションの素材が載ってるんだけど、エリキシルのも載っていたはず。

 パラパラめくるとあった。


 「難易度A、推奨錬金レベル50……」


 なんか、ズーンと自信が失われてしまった。見るんじゃなかったかも。これじゃ断られるはずだよね。

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