第54話 実際は――
次の日僕は、買ってもらったスライムの核を取る道具を手にスライムを追いかけまわしていた。でもここら辺のスライムには、核持ちスライムがほとんどいない。
やっと一体やっつけ核を回収したところだ。
言われた通り魔力を入れながらスライムに差し込むと、スポッと本当に核だけ取って袋の中へ。スライムは倒れベチャっとなった。
「全然核持ちいないけど、みんなどこで採取しているわけ?」
『ほかにスライムがいる場所を知らないのか?』
「知らない」
『けどマジックアイテムまで売っているぐらいだ。そういうスライムはいるって事だろう?』
「そうだね。ロロリーさんに聞いてみるかな」
『それがいい。核さえあればスラポ液ができる。それから色んな薬を作ればいい。それを売ってお金にして、錬金だ!』
「諦めが悪いよね。というか、薬だって錬金じゃないか?」
『私としては、薬づくりは薬師の仕事だ。魔導士の仕事ではない』
「あっそ。どっちでもいいけど、薬は作らないよ。ロメイトさんも言っていただろう。知れたら追いかけまわされるって。エドラーラさんみたいのが増えると面倒だから……」
『本当に欲がないやつめ。逆に選ぶ立場になったのではないか』
「いいの。欲張るといいことないから」
『欲張らずとも良いことなどないように見えるが?』
「………」
どうして余計な一言が多いかな。
『それでよく嫌われていたな』
だろうね。
「マルリード……」
うん?
声に振り向くとなんと、エドラーラさんがいた! 護衛の冒険者と一緒だ。でも別にここに来るとは建物内で話してないのに、どうしてわかったんだろう。
「今日はお願いがあって来た」
「お願い?」
「まずは、昨日問い詰めた事を謝ろう。すまなかった」
「………」
へ? 何? めちゃくちゃ怪しいんだけど。
『それなりのお願いのようだな』
本当に頭を下げて謝っている。
「いえ、昨日はちょっと焦ったけど誤解が解けてよかったです」
「いや解けてはいない」
「え……」
「だがスーレンさんは、ある条件で水に流すと言ってくれた」
『やれやれ。相手は君を利用するき満々だな。あれを本人が見たとしてもデートになど見えてないだろう。最初からこれが狙いかもな』
それってかなり相手の頭が切れるって事?
『あぁ。瞬時に状況判断が出来るのだろう』
「最上級のスラポ液の調達だ。まず本当かどうか10個ほど持ってきてほしいと言われた」
「いいですよ」
『おい! 話に乗る気なのか?』
「本当ですか!?」
「ただしこちらも条件があります。スーレンさんの本当の正体を教えてください。知っているんですよね? 立場的に相手の方が上のようですけど、僕も手を貸すとなると知らないとできません」
『なるほど。情報を聞き出すのだな』
「わかりました。二人は下がっていてくれ」
護衛の二人は頷くと離れた場所へと移動した。思ったよりすんなり教えてくれるつもり? それとも嘘の情報を言うつもりなのかな?
『ちゃんと見極めないとな』
うん。
「彼は、フェニモード家の次男だ。これには嘘はない」
「僕も一応調べたんですが、フェニモード家に次男がいるという話を聞かないのですが?」
「隠し子だ」
「隠し子!? そう言われてそれ信じたんですか?」
もっと慎重な人だと思ったけど、金に目がくらんだのかな?
「誤解をしているようだな。私が直接スーレンさんと交渉したと思っているのだろう? 私が交渉した相手は、フェニモード家だ。そして、婚約は向こうからの提案だ。だから焦ったのだ」
「え……じゃスーレンさんは本当にフェニモード家の次男? でもなんで、フェニモード家に話を持ち掛けたんですか?」
そう聞くと、なぜか大きなため息をつかれた。
「君は才能があるのに、何も知らないのだな。フェニモード家がポーション系の流通の元締めだ。勝手に商売をすれば、スライムの核を手に入れられなくなる」
「どうしてですか? 僕はこうして手に入れてますけど?」
「商売するのに一つや二つでは話にならないだろう? ちゃんとスライムの核を手に入れられる場所があるのだ。そこはフェニモード家の敷地で許可制だ。もちろん、冒険者も勝手には入れない」
「え!? そういう場所があったの?」
『なるほどな。これで話しは繋がったな。裏も何もなかったわけだ。まあ、スラポ液づくり頑張れよ』
あんなに警戒していたのになぁ。
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