第27話 洞窟には大きな音が響き渡る
ここから見える洞窟内は真っ暗だ。魔眼を使わないと見えないかな。あ、そう言えば明かりを点ける物って持ってないや。
『今までどうしていたのだ?』
パーティー用にあったからそれを使っていた。あとジグルさん達は、ライトを後付け魔法として持っていた。
『なるほどな』
「では行くぞ」
ロメイトさんがそう声を掛けるも手に持っているのは、魔素感知器だけだ。
「「「ライト」」」
そう思っていたら三人揃って魔法を使った。
やっぱりみんな魔法なんだね。一応、僕も覚えておくかな。
――簡易魔法『ライト』を取得しました。
『君には、魔眼があるからいらな……取得したようだな』
……うん。お金の節約になるね。
一人の時は、魔眼でいいかもしれないけど、こうやって他の人と一緒に行くときはライト使わないと変でしょう?
『なるほど。形だけはってことか』
そういう事。
ビ~~~~~~~!!
「ぎゃー!!」
「きゃ」
リレイスタルさんと会話しながら洞窟に一歩入った途端、大きな音が響き渡った。
って、グイっと引っ張られたのでリトラさんかと思ったらロメイトさんだ。
「一旦外へ出るぞ」
というか僕、驚いてミューリィさんに抱き着いていた! 恥ずかしい。
一歩ずれただけで音が聞こえなくなる。どうやら音の正体は、魔素感知器だったみたい。ロメイトさんが渋い顔で見ていた。
「洞窟内は、魔素30%にもなっていたな。結界によって外には出て来てないらしいが……」
「おいおい。どうしてそんなに?」
ロメイトさんの言葉に、リトラさんが驚く。
僕たちは、魔素感知器を覗き込む。今は、2%ほど。
「凄いわね。魔素まで阻む結界なんて。でもどうしてそんなに濃いのかしら?」
「魔素ポイントという魔素が湧き出す場所があるらしいが、前は洞窟内にそういう場所はなかったはずだ。あれば、定期的に見に来ているだろうからな」
「いつの間にかできちゃっていたってわけか」
ロメイトさんの言葉に、リトラさんは頷いて言った。
『うーむ。この洞窟内にそんなに魔素があるならここで魔素空間を作るといいだろうな』
そうだね。でも勝手に入れない感じかな?
「まずは結果報告だな。入り口で30%なら奥なら凄い%だろう」
「え? そうなの? 入り口からは漏れ出てないんだよね?」
「魔素は低い場所へと流れ込むらしい。この洞窟は、螺旋状に下へと掘ったらしいからな」
僕が聞くと、ロメイトさんがそう教えてくれた。
『一番下まで行けばよさげだな』
あのさ。入り口でよくない?
『いや、私の勝手な推測だが、魔素空間を持続させる為、作った空間に魔素を溜めておくのではないかと思われる。魔素がない場所でも空間を保てるためにな』
なるほど。だったら奥まで行ってみるかな。ちょっと怖いけど。
『問題ない。魔素耐性があるだろう』
わかっていても実感がないから怖いんだよ!
「おーい。戻るぞ」
「え? あ、はい」
いつの間にか三人は歩きだしていた。
どうも僕は、リレイスタルさんと話し込むと周りが見えなくなるらしい。
「……あの僕、受けた採取をして帰ります」
「うん? そうか。じゃここで……って、さっそくCランクの受けたのか」
「えへへ」
リトラさんの言葉に僕は、肯定も否定もせず笑ってごまかした。
三人が去っていくのを見送って辺りを見渡し、誰もいないのを確認すると洞窟へと向かう。
なんとなく、悪いことをする気分だ。
『何を言う。マルリードが魔素空間を使えば、魔素を除去できるかもしれないのだぞ? いいことではないか』
うーん。そう言われるとそんな気もするけど、ダメな場所へ立ち入るのがいけないかなって事。
僕は、洞窟の前まで来て一旦止まった。そして深呼吸。
ねえ、魔素を好むモンスターっていないよね?
『わからないな。出会った事はない』
そっか。ロメイトさん達は、そういうモンスターの事を言っていなかったし、そういうのはいないのかな?
そういう事にして僕は、意を決して洞窟内へと入っていった。
真っ暗闇のはずの洞窟は、魔素が充満しているだけあって、僕にはくっきりと見えるのだった。
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