第29話 リルと過ごすには
僕は、がばっと体を起こした。
そよ吹く風が心地よい。じゃなくて!
『やっと起きたか。たぶん昼過ぎだぞ』
昨日は凄く眠くて……そうだ、リルは?
『そこで寝ている。ずっと寝ているから体調がよくないのかもな。まあ無理もない。魔素の中に居たのだから。魔素酔いをしているのだろう』
そっか。どうすればいいかな?
『わからないが、昨日ミルクも飲んだし、ハイヒールが効いたのかもな』
じゃもう一回掛けておくかな。
「ハイヒール」
特段変わった様子はない。
それにしても昨日は急にだるくなって起きていられなくなったんだけど、魔素のせいとか言わないよね?
『憶測ではあるが、魔素空間を作るとかなり体に負担をかけるのかもしれないな』
「え? MP減るだけじゃないの?」
『可能性としてだ。それよりリルをどうする気だ? 連れて歩くのか?』
「うーん。どこかに隠しておいても見つかる可能性があるし、どこかに行っちゃう可能性もある。誰かに利用されかけたのは事実だからそのままにしておけないし」
『それは建前であって、本当はかわいいから一緒に居たいのだろう? 素直じゃないな。私が君の中からでて、面倒を見れればいいのだが』
「………」
だったら連れて歩く!
『どうやって? 首輪でもつけるのか? モンスターと戦うときに危ないだろう』
まあそうなんだけど、このポーチに入れて歩く。
『まあ確かに入る大きさではあるが……』
見たことがあるんだ。怪我した小鳥を入れてきた冒険者。ヒールしてくれって。お金まで払って拾った鳥に掛けるのかって笑われていたけどね。
『まあそんな事をしていたらお金が足りなくなるな』
残念ながらヒールは後付け魔法にないからね。パーティーにいないならお金を払うしかない。って、話はそれたけど、元気になるまでそうしようかなと。
僕はそうっとリルを抱き上げ、ポーチの中に入れた。
『というか、揺れて普通に酔いそうだな』
「あ、そうだね。無理そうなら他を考えるよ」
あとは、動物を連れて宿には泊まれないからキャンプセットを買うかな。
『今まで必ず宿で寝ていたのか?』
違うよ。普通はパーティーの道具なんだ。だから僕は持ってない。ソロパーティーだし、自分で買うしかないから。
『君もさっきのお人よし冒険者と一緒だな。いつかお金がなくなって泣くぞ』
大丈夫。元々貧乏には慣れているから。
さあ選びに行こう!
『まあ買ったら魔素空間に入れておけばいいからな』
そうだね! じゃ重さも大きさも気にしなくていいね。
『組み立ての事は考えて買えよ』
……うん。
『考えてなかったな』
教えてくれてありがとう。
『まったく。抜けている奴だ』
□
テントもピンからキリまであって、組み立て重視で買うと結構高かった。なので一人用のにした。
リル用のタオルケットも買ってくるんだ。息が苦しくないように、あみあみの蓋に加工。と言ってもそういうパーツが売っていて、それを取り付け。
あとは、食料を入れておけるケースか袋だね。腐敗しない魔法陣付きのマジックアイテム。
全部で銀貨30枚ほどになって、もらったお金があっという間に飛んで行った。
魔法陣付きのリュックを買ったので、施設でもらったリュックは捨てる事にし結局はカバンを背負う事に。
テントなどは、建物の外へ出てこっそりと魔素空間へとしまった。
「あとは、食料を買って、依頼を受けてお金を稼がないとなぁ」
でももう遅いので食料だけ買い、昨日寝てしまった草原へ。今日はここにテントを張って寝る事にした。
「くーん」
「あ! 鳴いた!」
『おなかがすいたのではないか?』
僕は、リルをポーチからだしミルクをあげた。
昨日は顔だけだけど、今日は体も起こしぺろぺろ舐めている。ヒールが効いたのかな?
「よかった。そうだ。僕はマルリードだよ」
飲み終わると、僕にすり寄ってきた。
かわいい!! 助けてよかった。
リルをそっと抱きしめ、丸くなって僕はテントの中で、ぐっすりと寝るのだった。
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