第56話 ほしい者か消したい者か

 「よしと。ではロロリーさん、後頼むな」

 「はい」


 ロメイトさんが、モーメントパーティーの登録をしてくれた。これは、通常のパーティーを解散せずに、一時的に他の者とパーティーを組む時に登録するパーティーで、今回の様に採取に行く目的の為だけに結成する時などに行う。

 どうやらパーティーを組んでいないと、二人は一緒に行けないらしい。まあ黙っていればわからないけど、パーティー届を出すだけですむのだから後々面倒にならない為に提出した。


 「でもあれ、楽しかったから早くやりたいなぁ」

 「いたか? 核持ちスライム」

 「うん。一体だけ」

 「だよなぁ」

 「ところでよく君が、スライム狩りをしているとエドラーラさんはわかったな」


 ロメイトさんも僕と同じ事を疑問に思ったみたい。


 「僕もそう思って聞いたらスーレンさんが、僕がここにいると言ったらしいよ」

 「やはり、道具を買った者をチェックしているんだな」

 『まあ使える場所が限られているマジックアイテムだからな。向こうは、満月の夜と君が繋がっているのも承知しているかもな』


 もしかして、僕より満月の夜が狙いだったりして。


 『彼らが冒険者に求めるのは、核の提供が出来る者だろう。それはすでにいるだろうから最上級のスラポ液を作成出来る君が欲しいのは間違いないだろうな』


 はぁ。なんかそういうの嫌だな。僕の偏見なのかもしれないけど、金持ちって汚い。


 『フェニモード家に関しては、偏見ではなさそうだがな』


 スラポの草原は、山を少し登ったところにある草原だけど、森を超えた向こう側なので、ここからでは草原があるなんてわからない。


 「マルリード。森にはそれなりに強いモンスターがいるから気を付けるようにな。しかも獣道しかないらしいからな」

 「ロメイトさんは草原に行った事あるんですか?」

 「ないな。行った事ある者は、フェニモード家の息がかかった冒険者だけだろう」

 「それってほとんどの人は行った事がないって事?」

 「そういう事。ここの大地主だったらしいからな。しかし君をここに向かわせた真意が別にないといいけどな。なんてな」


 リトラさんが一瞬、真面目な顔つきになってそう言った。何となく、リトラさんが言ったセリフが気になる。

 僕達は、森に入り獣道を頼りに森の中を進んでいた。


 「どうだリトラ」

 「マジか……」


 ロメイトさんの質問に軽く首を振ると、ため息交じりにリトラさんは答えた。なんだろう?


 「あの、どうしたんですか? もしかして迷子!?」

 「違うって。予想が当たってしまったかもって事さ」

 「予想? さっき言っていたフェニモード家の真意ってやつですか?」


 そうだとリトラさんは頷いた。


 「気づかないか? ここはあまり人が入らない森だ。だがモンスターの気配がしない。あの時と一緒だ」

 「え? それって……」


 でも核を取りに来ている冒険者が狩ってくれているとか?


 『頼まれたらやるかもしれないが、大勢で狩っているところより少ないのはおかしくないか?』


 そ、そうだね。


 『モンスターはどこかに集められているのだろうな』


 それってここに入れる冒険者が首謀者って事?


 『いやロメイト達は、フェニモード家だと思っているのだろう』

 「え! フェニモード家が首謀者!?」


 あ……。口に出しちゃった。


 「ご名答。俺達は、魔素酔いさせられたモンスターが居そうな場所を探したが見当たらなかった。後は、このフェニモード家の敷地内しか残っていない」

 「君が、ちょうどよく許可書を発行してもらってよかったよ。これで調べられる」


 調べられるってロメイトさんが言っているけど、見つけたらその場で襲われない!?


 『可能性はあるな。襲われたら逃げ切るのは不可能に近い。きっと数も数だろう』


 僕はどう狙われているわけ?


 『わからんな。ただ言えるのは、ほしい者だと思ったならただ単にスラポ液が欲しいだけだろうし、消したい者としてここに送り込んだとしたら、すでにモンスターが配置してある可能性もある気を付けれよ』


 どう気を付けるんだよ!


 そんな事を思っていたら目の前が明るくなって開けた場所に出た。草原だ。


 「ここがスラポの草原?」

 「そのようだな」


 周りが森に囲まれた大きな草原。モンスターの姿はない。よかった。


 「マルリードを殺そうとしていたわけではなさそうだな」


 ロメイトさんが、草原を見渡していった。リレイスタルさんが言っていたのと同じ様な事を考えていたみたい。


 「一応マルリードは、核の採取をしていてくれ。俺たちは辺りを見てくる」

 「だ、大丈夫ですか?」

 「大丈夫だろう。ここには、スライムしかいないようだ」


 いや僕の事ではなくて、二人の事なんだけどな。もしモンスターを隠していたとして、襲ってきた人物も滞在していたら逃げようがないと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る