第22話 ニーナを守るのは……

 「ニーナ!」


 このままだとニーナが殺される!

 動きを止めるか、ターゲットをこっちに向けさせないと!

 僕は、走りながら地面に突き刺さったロングソードの刃を抜いた。そしてそれを思いっきり投げつけた!


 「ブーメラン! 百発百中! ゴブリンキングこっちだ!!」


 当たれ!


 「きゃー!」


 ニーナの悲鳴が響き渡った。

 僕が叫んだからか、ゴブリンキングがこっちを向いた。

 よし! 今だ!

 僕は投げたロングソードを目へと誘導する。それは、ゴブリンキングの目をえぐった!


 「ぐわぁ!」


 ゴブリンキングが、目を両手で覆い片膝をつく。

 素早くジグルさんは、剣を手に立ち上がった。


 「百発百中!」


 ジグルさんが繰り出した剣は、ゴブリンキングの首を突き刺す! ゴブリンキングは、グワーっ叫ぶとそのまま前のめりに倒れ動かなくなった。ジグルさんが剣を抜くもピクリともゴブリンキングは動かない。


 「やったか。脅かしやがって」

 「ジグル、ありがとう」

 「別に。ここに呼んだの俺の様だし」

 「………」


 素直にどういたしましてって言えばいいのに。

 礼を言ったロメイトさんは軽くため息をつき、リトラさんは渋い顔つきになった。


 「それにしてもお前に助けられるとはな」

 「……僕は、ニーナを助けたんだ」

 「は?」


 ちょっと意地悪して言うと、ジグルさんはキッと僕を睨み付けて来た。


 「って、いた!」


 右手が痛いと見てみれば、血だらけだ。


 『剣の刃を思いっきりに握ればそうなるな』


 そんなところじゃなかったから。


 「見せて」


 近づいてきたニーナがそう言うので、手のひらを見せた。


 「ハイヒール」


 傷がきれいに治る。痛みも引いた。


 「ありがとう。ニーナ」

 「ううん。ありがとう。助けてくれて」


 ニーナがほほ笑んだ。ドキリとする。その笑顔、暫くぶりに僕に向けてくれた気がする。

 昔を思い出すな。転んだ擦り傷にもハイヒールしてくれたっけ。


 『やはり君の好きな相手はこの娘か』


 うるさい!


 『取り返さないのか? 今なら出来そうだが』


 いいんだよ、別に。ニーナが好きなのはジグルさんなんだから。


 『あやつでいいのか?』


 ニーナには優しいから心配いらないよ。


 「マルリードもおつかれさん。おぉ、凄いな。傷ないな」


 リトラさんが僕の手の平を覗いて言った。


 「いやぁ、いいところを二人に持ってかれたな」


 とリトラさんがさらにお道化て言う。そして……


 「まるで俺のブーメランの様だった」


 とぼそりと言われ、ドキリとした。


 「あははは。弟子ですから……」


 ドキドキしながらそう返し誤魔化す。そうすると、親指を立ててナイスと言われた。


 「さすがね。咄嗟の判断が素晴らしいわ」


 ミューリィさんにも褒められ、僕の顔がカーッとなった。


 『なんだ。もう乗り換えたのか?』


 違うから! そんなんじゃないから!


 「おぉ!!!! これは一体? どこへ消えたかと思ったらやっぱりここだったか」


 坑道から出てきたダリリンスさんが叫んだ。

 そして、ぞろぞろと冒険者達が後から出て来る。


 「倒されている!」


 後ろから来た冒険者が叫んだ。


 「あぁ、二人で倒してくれた」


 ロメイトさんが僕らを見て言った。


 「二人……」


 ダリリンスさんが、僕らを見比べている。


 「確か彼は、神乱の元メンバーだったか。でもEランクと聞いたが……」

 「ふん。出し惜しみしていたんだろう?」


 ジグルさんがそう言った。


 「ニーナ行くぞ」

 「うん……」


 今回ニーナは、チラッと僕の方を見てからジグルさんについて行く。


 「本当に、彼らで倒したんですか? 硬くて歯が立たなかったのに?」

 「あぁ。マルリードが隙を作って、ジグルがトドメを刺した」


 ロメイトさんがそう言うと、全員が僕に注目する。

 う……。変な風に目立っちゃったよ。


 『何を言っている。大活躍ではないか』

 「そうだ。もしかしたら魔素酔いで強くなっていたかもしれない」


 思い出したと、ロメイトさんが言った。


 「何! もしかして坑道で魔素が発生しているかもしれないという事か? 奥で討伐しているやつらを見に行かないといけないな!」


 騒然となり一気に騒がしくなった。それをダリリンスさんがまとめ、残りのゴブリンを倒しに向かった。そしてこれによって僕はまた、注目の的になったんだ。早く落ち着いてほしいよ。

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