第23話 昔と今

 「え!? Cランク!?」

 「そうよ。おめでとう」


 ゴブリンキングを倒して次の日、報酬を貰いにカウンターに行った。大抵の人は昨日貰っているけど、なぜか僕は明日と言われたからだ。そうしたら驚く事を言われた。Cランクに昇格だと!


 「いや、なぜEからCに」

 「聞いたわよ。大活躍だったらしいじゃないの」

 「それにしても……」


 ロロリーさんが周りを見渡して声を潜めて言う。


 「満月の夜の皆が口を揃えて絶賛したらしいわよ。ゴブリンキングが近づいて来たのも魔素酔いの事も、マルリードさんが気がついたって。咄嗟の判断で自分で動けるからCランクに値するとね。目立たないけど、彼がいなかったらかなり苦戦しただろうってね」

 「そこまで大袈裟に言わなくても」

 『よかったではないか』


 まあね。これで採取に行ける場所が増えたけどさ。もう目立ちたくないんだよ。


 「辞めなくてよかったわね。はい。報酬アンド報奨金。合わせて銀貨40枚」

 「40!? 多くない?」

 「多くないわよ。報酬は一人銀貨2枚。マルリードさんの報奨金は、パーティー分と個人分。ソロパーティーのいいところは、パーティー分の報奨金が全部自分のモノになる事よね」

 「……まあくれるものは、素直に貰っておくかな。ありがとう。あぁこれで服が買える」

 「そうね。それサイズあってないわよね」

 「早速買いに行ってきます」

 「いってらっしゃい」


 ロロリーさんが軽く手を振り見送ってくれた。


 『今更なのだが、パーティーでソロとはどういう事なのだ?』


 あ、そっか。昔はこういうシステムなかったんだもんね。冒険者として登録しても、依頼を受けるのにはパーティー届を出さないとダメなんだ。パーティー登録して初めて仕事を受けれるんだ。


 『なぜ登録が二重なのか……』


 そこら辺はよくわからないけど、パーティーに入ってなくても簡易魔法の講習とかは受けられるんだ。だから簡易魔法を習う為だけに冒険者登録をするって言う人もいるみたい。


 それよりも服だ~♪

 こんなにお金が入るなんて。


 『そうだ。お金の事も知りたいな。昔と変わってないのか?』


 変わってないのかと聞かれてもわからないけど、銅貨千枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚。


 『なるほど。そこは変わってないようだな。で、食べ物の価値は?』


 どうだろうね。そうだ、昔ってモンスター食べていた?


 『モンスターを食べるだと!?』


 その様子だと食べてなかったんだね。


 『倒すのは、襲ってくるからだぞ?』


 まあね。食べられるモンスターは、酒場とか冒険者用食堂とかでメニューとしてあるんだ。まあ昨日倒したゴブリンは食べないけどね。

 要は、冒険者は自給自足みたいな感じって事かな。


 『という事は、一般の者は食べないのか?』


 たぶんね。孤児院でも食べた事がなかったからね。冒険者内だけだと思う。


 『今の時代は恐ろしいな。あのモンスターを食うのだから……』


 あはは。慣れだよ。

 もちろん普通の食事もあるけど、モンスターの方が安い。なにせ飼育しなくていいんだから。


 『しかし運ぶのも大変だろう』


 たしか、転送魔法陣で送れるはず。


 『転送魔法陣……出来上がっていたのか』


 昔は、研究段階だったの?


 『あぁ。モンスターを任意の場所に飛ばす為に開発中だった。魔法陣を見てみたいものだな』


 うーん。そういう専門のパーティーが持っていると思うよ。残念ながら僕は所持していない。


 『だったら講習受けたらどうだ?』


 あぁ、魔法じゃないから。布に描かれた魔法陣。つまりマジックアイテムね。しかも冒険者協会から借りるらしいよ。まずパーティーランクがAランクにならないと借りる事すらできないけどね。


 『そうなのか?』


 うん。でもどうしても見たいなら募集の時行ってみる? Cランクパーティーなら参加出来ると思う。


 『なんだそれは?』


 食料の狩り専門のパーティーが、一緒に行くパーティーを募るんだ。ただ僕まだ、なりたてだから断られるかもしれないけどね。


 『実績だな。では採取だけではなく討伐も受けなくてはな!』


 いや、受けないから。僕、一人なんですけど?


 『何? 言っている事がおかしいではないか!』


 今すぐは無理だよ! もっと強くならないと……死ぬ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る