第21話 VSゴブリンキング

 「くそう。素早さもあるし、深手を負わせるのも大変だなんて。なんなんだコイツ」


 キッと、ゴブリンキングを睨み付けジグルさんが言った。


 「ファイヤー!」


 ミューリィさんが、炎を放つ。それはゴブリンキングを包んだ!


 「え?」


 少しはダメージを与えているとは思うけど、見た目効いていないように見える。怒ったゴブリンキングがミューリィさん目掛けて走り出した。


 「もう! この化け物!」

 「ミューリィ! ほらこっちだ! ブーメラン!」


 リトラさんは、ワザと剣がゴブリンキングに見える様に攻撃を繰り出すと、ゴブリンキングはくるっとリトラさんに向き直り、彼にターゲットを変えた。


 「くそう。やっぱりミューリィのファイヤーもダメか」

 「どうなってるのよ」

 「わからないが、体が強化されている」


 驚くミューリィさんが言うと、ロメイトさんがそう答えた。

 うん? ゴブリンキングって本来はあんなに硬くないって事?


 『やはりそうか。だったら魔素酔いによる結果かもしれない。我々の時代ではその研究がされていていて、魔素を沢山取り入れたモンスターの中には強化されるモノもいるとわかっていた』


 え? じゃ、今その状態!? 対処法は?


 『まあ魔素を奪えばいいだろうけど、その方法は確立されていなかった。もしかしたら今の時代なら何か方法があるかもしれないな』


 そっか。だったら……


 「ロメイトさん、たぶん魔素酔いじゃないですか? 僕、魔素を取り込んだモンスターが強化されると聞いた事があります」

 「魔素酔い? ここまで強化されるまで魔素を取り込んでいるというのか?」


 僕の言葉にロメイトさんは驚いた。

 でも普通のゴブリンよりは沢山取り入れているのは確かだ。


 「どこでそんなに魔素を取り入れたんだ? 坑道だとしたら厄介だな」


 リトラさんが言う。

 どうやら魔素酔いの可能性ありという事になったみたい。


 「攻撃魔法すら効かないぐらい強化されているとなると厄介ね。急所を狙うしかないわ」

 「ジグル、頼めるか」

 「言われなくとも、俺しか出来ないんだし」


 ロメイトさんに言われ、ふんと鼻をならすジグルさん。


 『俺様の性格なのか?』


 うん。まあ。自己中ではあるかな……。

 あ、そう言えばさっき、ジグルさんが使う魔法を覚えたっけ。見てみようっと。


 【簡易百発百中】レベル11

  対象に必ず当てる事が出き、通常のダメージを与えられる。またクリティカル時、貫通攻撃になる。

  ◆消費MP:50

  ◆盾による防御は、クリティカル時破壊出来る。

  ◆クリティカル率2%


 凄い。必ずあたる攻撃なんだ。


 『しかしMP消費が大きいな』


 まあ仕方ないよ。簡易魔法は通常の10倍程の消費量らしいから。


 『マルリードならMPが沢山あるから問題ないか』


 うん。まーね。


 『どうせならブーメランも見てみたらどうだ?』


 はいはい。


 【簡易ブーメラン】レベル11

  投げた物を滑空時、自由に操れる。

  ◆消費MP:50

  ◆同時に二つまで可能。

  ◆威力は、投げた物により変わる。


 やっぱり操れたんだ。飛び方が不自然だったもんね。


 『しかし、色んな魔法があるのだな。これはわくわくしてきたぞ。コレクションしてくれ』


 コレクションって……。


 「きゃ! ジグルさん!」


 ニーナの悲鳴にハッとして見れば、ゴブリンキングに吹き飛ばされただろうジグルさんが地面に叩きつけられたところだった!


 「げっほ」

 「っち。こっちだ!」


 リトラさんが、ゴブリンキングを自分に引き付ける為、武器を投げる。


 「ジグルさんしっかりして! ハイヒール!」


 駆け寄ったニーナがジグルさんに回復魔法を掛けると、スズミパーティーがおぉと驚いていた。回復魔法持ちは少ないからね。


 『そうだな。私の時代もそうだった』


 Aランクプレイヤーの方が少ないパーティーだけど、Aランクパーティーになれたのはニーナがいたからだろうな。


 ――簡易魔法『ハイヒール』を取得しました。


 『やったな。ってやばいぞ! ゴブリンキングが二人に向かってる!』

 「逃げろ!」


 ロメイトさんが叫ぶ。

 治療が終わったジグルさんは横になったまま、ゴブリンキングに振り返った。あれじゃ間に合わない!


 「ニーナ!」


 ニーナが殺される!

 僕は、走りだしていた。

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