第31話 物証を探せ

 「自己紹介がまだだったね。私はパーティーリーダーのレモンス」


 彼は、黒い鎧で身を固めていた。でもダリリンスさんより軽そうな素材。髪はこげ茶で瞳は赤。鎧を着ているから戦士なのかと思ったら剣を所持していない。腰に差しているのは、黒水晶だと思われる宝石がついたロッド。不思議ないで立ちだ。


 「俺はモンデ」

 「俺はバリン」


 パティ―メンバーの二人は剣士みたい。剣を所持している。鎧は三人とも同じ鎧。


 「えっと僕は、マルリードです」

 「知ってる。ゴブリン退治に貢献してEランクからCランクに上がった少年。しかもAランクパーティーを追い出されている。凄い経歴だね」

 「………」


 間違ってないけど噂広まってるな……。


 「それだけじゃないよな。Aランクマドンナ、満月の夜のミューリィさんが首ったけという噂も流れている」


 と、ダリリンスさんがにやりとして言った。


 『あの時のプレゼントに悩む彼女の話だろうが、本当に流れているんだな』


 はぁ……勘弁してほしいよ。



 紅灯の洞窟にやっとついた。


 「聞くが、音が鳴った場所とはどこだ?」


 ついたとたん、ダリリンスさんが聞いた。


 「ここです」


 僕はその場所に立った。


 「なるほど。結界の中だな。やはり2%のままか」

 「君凄いなぁ。30%に驚いてミューリィさんに抱き着いたぐらいなのに、平然と中に入れるなんて」

 「あ、あれは! 音に驚いただけですから!」


 あぁもう!

 このレモンスさんが、さっきからこうやってからかってくるんだよね。


 『彼もミューリィに気があったりしてな』


 嫉妬からだというの? やめてほしい。何もないんだから。


 「一晩経っても濃さが変わらないという事は、魔素ポイントがあるわけでもなさそうだな」

 「そうですね。そして一晩でなくなったわけも不明。不思議です」

 「僕たちが言っている事を信じてくれるんですか?」


 ダリリンスさんが言うと、頷いてレモンスさんが返したので僕は聞いた。彼らが嘘をつくわけはないけど、実際は魔素が充満してないのだから信じなくてもおかしくない。


 「彼らがそんな嘘をつくとも思えないし、あなたが平然と嘘を突き通せるとも思えない。まあギルドもそう思っているが、仕事なんでな。何か物証を探して持っていくさ」

 「ダリリンスさん!」


 僕は、嬉しくなった。


 『ところでもし魔素が充満したままだった場合、彼らはどうしたのだ?』


 え? 知らない。


 『聞いてみろ。興味がある』


 何それ……。まあ僕も気になるけど。


 「あのダリリンスさん。もし魔素が充満したままだった場合はどうするんですか? 結界を壊すとかですか?」

 「うん? いやそんな事はしない。魔素を吸収するマジックアイテムがある。それを使う。それと同時に魔素ポイントを探し出し、マジックアイテムを置いて直接吸収処置する」

 「それでも、その間に魔素酔いしませんか?」


 ダリリンスさんの答えに僕は驚いた。普通は、僕が魔素空間で魔素を吸収したようにはいかないだろうから。


 「私たちは、この鎧で魔素シールドを張る事ができる」


 そう答えたのは、レモンスさんだ。


 「特殊な鎧でね。本来は顔もすっぽり覆うヘルメットもあるんだ」

 「俺もそのヘルメットをかぶれば、ミスリルの鎧なので魔素酔いはしないですむんだ」


 なるほど。だからレモンスさんは鎧を着ていたのか! 疑問が解決。


 「君、ライトの魔法持ってないよね? 魔導ランプもなさそうだし」


 あ、ランプの事をすっかり忘れていた!


 『買わないとと言っていたのにな』

 「私のを貸そう」


 そう言ってレモンスさんがランプに魔力を入れてくれた時、ポーチが動いた。


 「うん? 何か動くものを入れているのかい?」

 「え? ううん」


 のぞけばリルがいるとわかるかもしれない。だってくるんでいるのは体だけ。頭はくるんでいない。

 そういえば、怖い目にあった場所に連れてきちゃったけど、リルは大丈夫かな?


 『大丈夫だろう。寝返りがうてるくらい回復したようだし』


 僕以外は、ライトの魔法を使って照らし、僕たちは壁などを調べながら奥へと進んだ。

 って、何を探せばいいんだ~!?


 「あった!」


 そう思っていたらダリリンスさんが、何かを摘まんで掲げた。黒っぽい小石にしか見えないけど、あれなんだろう?


 『もしかしたら鉱石なのではないか? この洞窟はそういう場所だろう』


 あぁ、なるほど。


 「って、ミスリル!?」


 僕はつい叫んでしまった。


 「そうだ。この大きさでは価値はないがな。だが、物証としての価値はある。魔素化した鉱石だ!」


 そう嬉しそうにダリリンスは言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る