第37話 リルがいるから?
う~ん。っと胸の前で腕を組み、難しい顔をしてまたディルダスさんが唸っている。今度は僕が魔素酔いしたスライムに襲われたと報告したからだ。
「50体程と言ったな」
やっとボソッとディルダスさんが口を開いた。
「あ、はい。それぐらいは居たと思います」
「それが村や街に出現したら厄介だな」
確かにそうかも。退治したとしても濃い魔素をばらまく事になる。あそこが草原でよかった。
「何が目的だ? 魔素酔いしないのは知っているよな?」
そっか。魔素を消してリルを連れ去ったのが僕だと知っているのならそうだよね。
『スライムが剣で切れない程堅かった。スライムだといえ、50体だと死ぬのではないか?』
「え? 僕をスライムで殺そうっとしたって事?」
『そうだ。一ついいか? 口に出てるぞ』
え? しまった。
バッと、右手で口をふさぐも遅い。
「スライムで殺そうとした? 魔素酔いして硬化していたのか?」
ロメイトさんの言葉に僕は頷いた。独り言とは気づかなかったみたい。よかった。
『剣でなんとか切れるぐらいと言っておけよ。百発百中が使えると知れてもいいなら正直に報告してもかまわないが』
そうだね。ありがとう。
「かなり堅くなっていました」
「なるほど。50体もいたからへろへろになって寝ちゃったわけだな。あの現場を見た時は、ヒヤッとしたぜ」
リトラさんが言う通り、それもそうだよね。何が起きたんだ状態だよね。
「草原の近くに魔素ポイントがある可能性もありそうだな。または、その鈴と同じような効果があるものを設置してスライムを確保していた。どちらにしても相手の目的がわからないな」
「魔素に関わるマジックアイテムと言えば、ショップフェニックスですね。そういう類の物を売ったかどうか確認してみます」
ディルダスさんにキモンさんが言うと、頼むとディルダスさんは頷いた。
狙いはリルなのかな? でも連れて帰らなかったよね。戻ってこなかったのだし。
『一つ確認したい事がある。彼らに聞いてくれないか?』
なに?
『魔素酔いした場合、現在はどうしているのか聞いてみてくれ』
うん。わかった。
「あの魔素酔いした場合、どう対処しているんですか?」
「魔素は少しずつは外に放出されるようだが、魔素酔いするほど体内に取り入れてしまえば、体が衰弱していく方が早い。我々はマジックアイテムを使って、その者の魔素を抜き取っている。モンスターも魔素酔いで硬化している場合は、マジックアイテムで魔素を抜き取ってから倒す事もある」
僕の質問に、ディルダスさんが答えてくれた。
どう? 何かわかった?
『なぜ相手が戻ってこなかったかわかったぞ』
え? 今ので?
『君が慌ててテントから出てきたから、リルが魔素酔いしたままだと思っていたのかもしれない』
どういう事?
『あの鈴の音で、リルがテントから出ようと暴れ、驚いて君が出てきたと思ったのかもしれない。魔狼だと気づいているとは、思っていないだろう。何せ連れて歩いているのだからな』
なるほど。あんなに小さくても本来は凄く強いって事? ステータスはそんなでもなかったけど……。
『まあ憶測だからな。ただ今回の事で、君はかなり強いと相手は知ったわけだ』
僕、強いかな?
『ロメイトは、自分の武器で硬化したモンスターを倒せるようだが、リトラもミューリィも魔素酔いで硬化したモンスターは倒せなかっただろう? つまり君は、ロメイトなみって事だな』
そういわれると、凄く強くなった気分になる。
「とりあえず、マルリードにはこのギルドの部屋を一つ貸そう。また草原で襲われて、魔素を振りまかれたらたまらん」
「あ、ありがとうございます」
リルがいるから宿に泊まられても困るって事かな?
『だろうな。冒険者がいっぱい泊っている宿に、モンスターを放つほど相手もバカではないだろうがな』
こうして僕は、ギルドの部屋に案内された。そこは、窓がなくベッドがぽつんとある寝るだけの部屋のようだ。
「ありがとうございます」
「申し訳ありませんが、少しの間ここからでないでいてもらっても宜しいでしょうか?」
「え? あ、はい。わかりました」
キモンさんに言われ素直に頷いた。部屋に入ると、ぱたんとドアが閉められ、カチャリと音がした。見ればこちら側から解除できない。
「え?」
『鍵が掛けられたようだな』
なぜ僕が閉じ込められなきゃいけないの? 僕って危険人物になったの? それともリルがいるから?
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