第73話 僕の味方

 『なんとか無事についたな』


 うん。賊にもモンスターにも襲われる事なく無事に日が暮れる前に目的地の街カレイダルに着いた。今日はここに泊まる。

 街ではモンスターにも賊にも襲われる心配はない。なにせ冒険者がいるのだから。


 「さあ、宿に部屋をとってあります。ゆっくり休んでください。あ、君は私と一緒に来てくれないか?」

 「え?」


 エドラーラさんが僕だけを呼び止めた。チラッと満月の夜を見ると、ロメイトさんが頷く。行ってきていいって事だ。


 「いってら~。俺らは先に休んでるな」

 「はい……」


 リトラさんの言葉に僕は、頷いた。

 エドラーラさんがどこに向かったかというと、高級なレストランだ。


 「いっらいませ。エドラーラ様。こちらです」


 個室に通された。しかも護衛の二人は部屋には入らないみたいだ。


 『何やら頼みごとがあるようだな』


 き、聞きたくない。


 「そう緊張しなくていい。一緒に食事をしようっと思ってな」

 「はぁ……」


 しばらくすると、見た事もない料理がテーブルに並べられた。


 「さあ、食べなさい」

 「………」

 『食べたら言う事を聞かないとだめだろうな』


 食べなくてもこの料金払えとか言われそう。


 『いうかもな。だったら食べておけ』


 そうだね。食べちゃおう!


 「い、頂きます」


 パクっと食べれば、口にしたことのないような味が口の中に広がった。旨味というのか、めちゃくちゃおいしい!


 「いい食べっぷりだな」


 ついおいしくてがっついてしまった……。

 ピタッと食べるのをやめ見れば、にやにやとしている。


 「ミューリィと一緒になれば、こういうモノをいつも食べられるぞ」

 「………」

 『結婚させる気満々だな』


 なんで~!? 施設出だとバカにしてたのに。


 『そうなのか? でも今は金のなる木だろう』


 嫌な言い方しないでよ。


 僕は、フォークを置いた。


 「それってどういう意味ですか?」

 「今まですまなかった。出生で判断してはいけないな。君は正義感が強く、まっすぐだ。しかも強い」

 「つ、強い?」


 エドラーラさんが頷く。


 「あっという間にCランクになったそうではないか。しかもソロ活動で活躍しているとか。本来、錬金術を覚えたら冒険者を辞めるのにそうせず、国の為、ミューリィ・・・・・の為に戦っている」


 なぜミューリィさんの為って事になるんだ。


 『聞いたのではないか? 彼女を助ける為にあの時、街に来たのだと』


 本人に言ったの!? 自分の顔が火照るのがわかった。

 ニコッとさらにエドラーラさんが微笑む。


 『こりゃぞっこんだな。と思った笑いだな』


 だぁ!!!!!


 「あの! 錬金の事ならできませんから」

 「何? なぜだ? ギルドにとめられているのか?」

 「そうじゃなくて、覚えた錬金が使えなくなっちゃったんです。それでもいいですか?」

 「……それを食べたら部屋に戻りなさい」

 「………」

 『変わり身が速いな』


 だから言ったでしょう。損得で動いてるって。


 『最後の晩餐になるかもしれん。目一杯食べておけ』


 いや、殺そうとまではしないから。


 『でも、この街に置いて行かれるかもしれないぞ。そうしたら大変じゃないのか?』


 うん。大変だね。ここの宿は今までより高いから……。


 「悪いがあの子の事は諦めてくれ。何もできない君が跡取りになっても娘が苦労するだけだからな」

 「え……」

 『惚れている前提は変わらないみたいだな』


 はぁ……。そう聞かされているからだろうけど、エドラーラさんがしょげたまま言うと、なんか凄く悪いことをしている気分になるんだけど。


 『本当は作れるからだろうな。利用されるのが嫌なのだろう? だったらこのままで通せ。それに聞き出せと言われてるかもしれないからな』


 聞き出せとは?


 『君が本当に魔法が使えないのかをだ。彼は関係ないと思って本当の事を言うかもしれないと思って手を回しているかもという事だ』

 「………」


 そうだね。そうかもしれない。


 「ごちそうさまでした」

 「もう、いいのか?」

 「はい。美味しかったです。あの、ミューリィさんの為にも僕に関わらない方がいいです」

 「………」


 エドラーラさんは、驚いた顔を僕に向けた。


 「では……また明日」


 エドラーラさんを一人残し僕は、宿へと向かう。


 やっぱり村とは違うね。活気もあるし一般の人もいるから変な感じ。


 『なぜあんな事を言ったんだ?』


 あんな事って?


 『自分に関わるなっていう事をだ。回し者だとわかっていると言っている様なものだ』


 うん。そのつもりで言った。本当に関わってほしくなかったから。ケチだけど家族思いのエドラーラさんだから僕に関われば、家族を人質に取られたも同然になる。手を引けるうちに引いてほしいんだ。


 『まさかそういう判断を相談せずに行うとは驚いた』


 相談するまでもない事だよね?


 『そうだな。どうせ責任は自身がとるのだからな』


 そ、そうだね。

 ねえ、僕には味方はいないのかな?


 『何を言う。私がいるではないか』


 ……み、味方なのかなぁ?


 『味方でなかったらなんだというのだ』


 そうだね。味方だと信じるよ。


 『村に戻るまで騙し通せばいい』


 うん。魔法を使わなければいいんだもんね。

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使えないと思った僕のバフはパッシブでした。パーティーを追い出されたけど呪いの魔導士と内密にペアを組んでます すみ 小桜 @sumitan

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