幕間4 そのころ家では・・・(2)

 夏美ちゃんたちが家を出てから私はさまざまなことをしていました。まずは昼食の後片付け。そして帰る準備。お母さんから「今日は夕方には帰ってきなさい」とメッセージが送られてきていました。夏美ちゃんから借りた服は今度、洗濯して返そう。

 けれど、いつの間にか頭に浮かんでいる光景がありました。


 「ふたりは今、一体何を・・・」


 冬人さんと夏美ちゃんが楽しそうにしている光景が時々頭に浮かんでくるのです。そのことを考える度に胸が少し痛む。


 これは勝負なのだ。だから仕方がないことも私は分かっている。けれど夏美ちゃんの冬人さんへの気持ちは並々ならぬものがある。だから何かおかしなことをしていても不思議ではない。


 うううう。胸のなかがもやもやします。何なんでしょうか?この気持ちは。まさに「この気持ちは何だろう」ですね!


 しかし、この得体の知れない感情の他にもう一つ抱いている感情があったのです。


 「私は何であんな恥ずかしいことを!きゃあぁぁぁ!」


 そう「羞恥」でした。


 実は私は冬人さんがプラネタリウムの途中で寝てしまっていたことに気づいていました。ただ、ふと気づいて横を見たときのすやすやと安らかに眠っている冬人さんの顔。


 これがあまりにも可愛らしく、愛しいものだったのです!


 何で目はあんなに怖いのに寝顔だけ可愛らしいんですか!ギャップで死にそうです!ぎゃああああ!

 

 それでつい、キスをしてみたくなったのです。あ、キスって言っても頬にですよ!口は恥ずかしすぎて死んじゃうので無理でした。


 そのときの光景が何度もフラッシュバックしてきて、そのたびに私は顔を赤らめてしまいます。きゃあああああああああ!


 でもいつかは口を奪ってみたいな・・・・・


 なんてことも思いました。それはいつになるかわかりませんが。


 冬人さんって、私のことをどう思っているのでしょうか?多分、好意的な目では見てくれているとは思いますが。どうやら彼は感情を直接的に口に出せる人間ではないようです。って私も大概なのですが。あはは。


 私が年上の男の人たちに絡まれていた時、冬人さんが私を助けようとしてくれていたことは目の端でとらえていました。結局、謎の金髪美少女さんが彼らをあっという間に倒してしまいましたが。何なんでしょうね、あの人?


 ちっ、あの人が来なければ冬人さんが私を助けてくれたかもしれないのに!


 なんて失礼なことも思ってしまいました。けれど助けていただいたことには本当に感謝しています。いつか会えたら、改めてお礼を言いますか。


 私は今、夏美ちゃんの部屋で帰り支度をしていました。服は制服に着替えて帰ります。


 あまり荷物もなかったので準備は1時間ほどで終わりました。夏美ちゃんから「小学校のアルバムとか見てていいよー」と言われていたので、拝見させてもらいましょう。


 私は机に備え付けられている棚に手を伸ばしました。そしてアルバムを手に取り、ページをぱらぱらとめくりました。


 「うわぁ。やっぱりこのころから可愛かったんだ」


 彼女はやはり小学校の時からかわいらしい少女だったようです。写真には笑顔が光り輝いています。私は彼女とは違う小学校でした。


 ま、まぁ私も小学校の時から天使って呼ばれてましたし?お父さんが


 「美冬!お前は本当に天使だな!かっわいいな~」


 とか言いながら学校行事の写真を撮っていたそうです。うわぁ、恥ずかしいな。


 要するに私も天使だったということです!以上!


 ふと部屋の窓から外を見ると、太陽はもうだいぶ西に沈んでおり鳥たちが太陽に向かって飛んで行っていました。


 とそのとき、玄関の扉が開く音がしました。どうやら帰ってきたようです。


 さて、決着はいかに。どうせ勝敗つけなさそうなんだよね、あの人。

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