第7話 料理対決。それから・・・?

 トントントントン


 ジャアジャア


 俺の耳にさまざまな料理音が聞こえてくる。


 それになんだかいい匂いもしてきたな~


 楽しみ楽しみルンルンルン~♪


 って言いたかったけど!


 あのね、キッチンの方を見てみますとね、なんだかですね、熱気がですね、すごいんですよ!ふたりがものすごい勢いで食材切ったり、いためたり、焼いたりしてます。


 「うおおおおおお!!」


 「はああああああ!!」


 とか言っちゃってますし。


 ちょっと夏美ちゃん、普段はそんなサイヤ人が身体強化のために出すような声をあげて料理しませんよね?どうしてそんなにごうごうと意気込んでるんですか?


 美冬もすごく意気込んでます。


 ・・・・・ん?


 待てよ?


 意味わからん展開に巻き込まれてそれどころじゃなかったけど。


 よくよく考えると・・・・・


 美冬の!それも手料理を!食べられるってことだよな!?


 よっしゃああああああああああああああああ!!!


 え、マジですかマジなんですか、これは夢とかじゃないよな?なんか顔が熱いから風邪ひいて俺に都合のいい夢を見てるとかじゃないよな?


 嬉しいんだけどそれと同時にドキドキしてきたドキドキドキンちゃん。


 彼女たちの熱気と俺の緊張によって体温が上昇してる気がする。


 「なーに作ってるのー?」


 ってのぞこうとしたけどそれはやめておこう。


 もしそれで夏美に


 「何のぞいてるのお兄ちゃん?もしかして待てないの?待ちきれないの?そーなんでしょー?ね、そうだって言ってよ!」


 とか至近距離で迫られる気がする。


 いやそれはそれでめっちゃ可愛いよ!むしろやってほしいまでだ!プリーズ!


 なんだけど。


 なんか少し距離が近すぎる気もするのだ。でも距離を置いたら置いたで嫌われるかも~いやだああああ!


 というわけで近づかないことが一番!


 それになぁ、美冬にも


 「あとちょっとですから。待てないんですか?そんなちょっとの時間も待てないなんて年上のくせに我慢できない人ですね」


 か


 「あとちょっとですから。待てないんですか?しょうがないですねー。冬人さんのために全力バリバリで頑張っちゃいますねっ!えへっ!」


 ってにっこりスマイルで近寄ってきて人差し指を俺の口に当てながら言う気がする・・・


 もし前者だったら


 「ごめええええええええええええええん!」


 って言いながらソファでうずくまって情けなさと羞恥で死にたくなる。


 かといって後者でも


 「ぐわあああああああああああああ!」


 って言いながらソファで可愛すぎて悶えたくなる。


 え?そんなの妄想だって?


 またまたぁ~


 はいその通りですごめんなさい所詮妄想です。


 でもぼく、男子高校生なんです!みんなもつい自分に都合のいい妄想とかしちゃうよね?ね?そうだって言って!


 と、こんなバカみたいな妄想をしているうちに料理の方は出来上がったようで。


 それもふたり同時に。


 うん、やっぱりきみたち仲いいね!いや、闘争心バリバリだからかも。


 俺は頃合いを見計らって食卓に着いた。


 「おっまたせ~お兄ちゃん。さぁおあがりよ!」


 そう言って夏美は巻いていたタオルをばっ、と取った。


 あれ、きみタオル巻いてましたっけ?


 「このタオルはなんか暑かったから汗吹くために巻いたぜ!」


 ってきらっとかっこよく夏美は語りました。


 うん、そんなに暑くなってたんですねキッチン・・・


 でもかっこいい夏美を見られたのでオールオッケーだ!うん問題ない。


 「どれどれ~なに作ったんだ~?」


 と料理を見ると


 「うおおおおお!!」


 何だこれ!どっかの料亭で出るような食事じゃねえか!見た目は質素だが日本らしいわびさびを意識した盛り付け、飾りすぎず地味過ぎない色どり。


 THE「和」って感じ!すげぇぇぇぇ!!!


 やっぱ俺の妹最強じゃね?


 「おまたせしました!さぁ存分に召し上がってください!」


 おお、次は美冬の料理か~どんなのだ~ううう


 「おう、どれどれ~」


 緊張しながら料理を見ると・・・


 「どわっ!何だこれ!やべぇな!」


 思わず驚嘆してしまった。


 何だこれ、「どこの高級レストランだ!?」って思うぐらいの華やかさだった。


 なんか光り輝いてません?よくアニメとかでおいしそうな料理ってキラキラしてますよね?まさにあんな感じなんですよ!


 「フレンチのコースみたいだな!」


 うん、やっぱりこの子もすごい。


 っていうか。


 「君たち料理人になれるぞ!」


 って本気で思った。マジマジ、ぼく嘘つかない。


 「さて、まずは夏美のからいただくとしようかな」


 そう言って俺は料理に箸をつけた。


 そして一口食べると・・・・


 その瞬間口の中でうまみが爆発した!


 「うまあああああああああああああああああああああああい!!!」


 これがグレートでスペシャルな妹の本気か!


 見た目は素朴だが味がやばい。何がって言うと出汁がやばい、魚の焼き具合がやばい、口当たりがやばい。とにかくやばい。うんやばい。


 っていうかやばいしか言ってねぇな!おいしすぎて語彙力消失してしまったな。


 俺の妹は日本料理のすべてを理解しているのか!さすがだ!


 「そんなにおいしいの?ねぇねぇ、どれくらいおいしい?」


 俺が驚異のうまさに震えていると夏美が飛び跳ねながら近寄ってきた。


 ってだから近ぇってば!


 「それはもう、日本料理専門の料理人すべてを集めても勝てるぐらいだ!」


 俺が自信たっぷりで言うと


 「やったぁーいええーい!ピース☆」


 そう言って夏美はぴょんぴょん飛び跳ねて両手でピースを作り顔の横に据えた。


 かっわいいな!お前!愛してるぜ!


 ちなみに俺はおいしすぎて心がぴょんぴょんしております!


 「さ、さて今度は美冬の料理をいただこう・・・かな」


 そう言ってちらっと美冬の方に視線を向けると


 「ど、どうぞ・・・・・」


 なんということでしょう!


 何やら緊張した面持ちで指をもじもじ突っつき合わせながら上目遣いでこっちを見ているではありませんか!


 「ぐはぁっ!」


 俺は慌てて視線を料理の方にそらした。


 ねぇ、何あの子、やばい可愛いやばい可愛いやばいやばいやばいいいい!!!


 きっと俺は今、顔から湯気が出ていることでしょう!


 なんかブシューって音がした気がする。


 「い、いただきます」


 めちゃめちゃ緊張した状態で料理を口に入れた。


 「・・・こ、これは!!」


 「これは?」


 俺の言葉に美冬が心配そうに見つめながら詰め寄ってきた。


 ってあなたちょっと近いですって!なんかいい匂いしますし!


 そんなに心配そうに見つめなくても大丈夫ですって!


 俺は少し体をのけぞらせた。


 そして。


 「う、う、うま、うまうまうまあああああい!ああ、うまい!うん、うまい」


 とにかくおいしすぎてうまいしか言えない人間になってしまった。


 俺のその言葉に美冬は


 「ほ、ほんとですか!よかった!」


 ほっ、と胸をなでおろしながらそう言ってにこっときれいに微笑んだ。


 ほんと、この子、いい笑顔、しますよね・・・・!


 ぱぁっと花が咲いたような笑顔だった。


 料理と美冬の笑顔にうんうんうなづいていると隣の夏美が


 「うー!!美冬ちゃんってば!・・・けど、さすがだね!」


 うーうーうなってお怒りでしたが最後には美冬の能力を褒めました。


 ほんっと表情ころころ変わるよな、こいつ!


 ったく、可愛いんだから・・・・・


 しみじみとそう思いながら俺は再び料理に向き直った。


 美冬の料理は味付けがうますぎる。これは俺の舌に合いすぎている。


 君、俺の好みの味を知ってるんじゃない?だとしたらもういっそのこと・・・


 結婚してくれえええええええええ!!!


 ほんと、この子も最強美少女ですな・・・。


 他にもうまみをたっぷり含んだスープは黄金色に輝いており、七色のサラダはオリーブオイルがかけられていてきらっきらだった。味もとにかくうまい!


 でも。ひとつ、思ったことがありました。


 「これ、君たちも食べてくれるよね?」


 「「ですよねー!」」


 コース料理ふたつ分ですよ?さすがに多すぎですって!


 というわけで三人でおいしく夕食をいただきました。


 その間にもふたりは


 「さすがね!このお肉、み心地、味付け、すべてがおいしいわ」


 「いやいや、美冬ちゃんこそ!この味、お兄ちゃんの好みにどストライクだよ」


 と互いの健闘をたたえておりました。


 ***


 あと片づけはさすがに俺がやりました。


 「お、お前らは疲れただろ。後やっとくから休んどけ」


 少しかっこつけて言っちゃいました。


 知ってます?


 今の時代、男も家事やらないと恋人や奥さんに嫌われるんですよ?


 そしてすべて終わった後、リビングにて。


 「うむ。これは勝敗がつけられん。」


 俺がそう言うと


 「しょうがないわね」


 「しゃうがないなぁ」


 とお互い肩を叩いていました。


 と、そのときふたりがとんでもない発言をしました。


 「あ、お兄ちゃん。今日、美冬ちゃんがうちに泊まってくから」


 「あ、はい。お邪魔・・・ですか・・・?」


 いいや全然!!


 というか明日は?・・・土曜日でした。


 「お母さんにも連絡してあります」


 「なにいいいいいいい!!!」


 突然のお泊り展開に驚きと緊張を隠せない俺だった。

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