第9話 休日2

 朝食の後、俺は準備のために数分の時間をもらった。彼女たちも


 「私も準備あるからね!美冬ちゃんには私の服貸したげる」


 「うん。ありがとう。それでは冬人さん、またあとで」


 ということだった。


 女の子たちは服選びとかに時間かかる・・・らしい。


 そんなイメージない?あるよね?


 彼女たちにはゆっくり選んでもらおう。


 そして俺はさっと決めて玄関でかっこよく待つことにしよう。


 ・・・・・って言っても


 「どれがいいのかわかんねぇぇぇ!!」


 俺は男なのでさほどファッションに詳しくはない。


 上下、靴の色合いが被らないようにした方がいいというのは分かっている。


 今はもう4月も終わりの時期だ。俺たちのすむ町はこの時期からじわじわ気温が上がってくる。


 そのことも考慮に入れねばならない。


 「うーむ・・・」


 俺は10分ほど悩んでいた。


***


 俺は自分でこれが一番だという服装にした。俺は明るめの色は似合わない。青などの寒色系の方があっていると思っている。


 だから俺は上は青の半袖Tシャツに水色の服を羽織り、下は濃い青のジーパンという服装にした。


 知ってるか?俺が赤とか黄色の服とかを着ると目つきの悪さも相まってチャラいヤンキーが出来上がってしまうんだ!わはははは!


 そんなことになったら本当に誰も近寄らなくなるし、なんなら犯罪者と間違えられかねない。


 というわけで今の服装が一番だと思うんです。


 俺が玄関で数分待っていると何やら光り輝く人間が下りてきた。う、まぶしい。


 そこに現れたのは・・・


 「おまたせ・・・しちゃいましたか?」


 「いいや、全く!」


 実際5分くらいしか待っていないので全然です!


 彼女、神楽坂美冬は私服バージョンで降臨した。


 ほんのりと施された化粧は彼女の美貌を際立たせていた。


 いや化粧がなくてもほんっとにきれいなんだよ?


 化粧は上手い人がすると良さが際立つんですね~そうなんですよね~


 美冬は髪を一つにまとめて右肩から垂らし、胸のあたりに白いリボンが施されており、袖や裾のあたりにも白いひだひだがついた水色の服を着ていた。下は紺色のロングスカートをはいて足をしっかり隠していた。


 「・・・・・!!」


 正直この服装は・・・・・


 やべぇぇぇぇぇ!!!!


 つい視線をちらちらとさまよわせてしまった。似合いすぎてまともに見られない。


 「どう・・・ですか?休日はこんな感じの服を、着るんですけど・・・」


 やめて!そんな目でこっちを見ないで!心配そうに見つめなくても大丈夫だから!僕が照れちゃうでしょ!


 俺は若干顔を火照ほてらせながら答えた。


 「お、おう。すごく・・・似合ってると思うぞ」


 「ありがとう・・・ございます」


 俺の言葉に美冬は嬉しそうににこっと笑ってそう言った。


 ところで。


 「夏美はどうした?」


 そういえば妹の姿が見えない。


 「ああ、夏美ちゃんなら部屋にいます。私からということになったので。それに冬人さんに服をまだ見せたくないそうなんです」


 「おお、そうか」


 夏美のやつ、兄ちゃんにとっておきの服を見せたいってことなんだな!


 そうなのか!兄ちゃん、嬉しいぞ!


 ほんとかっわいいやつだな!


 けれどこっちの子も死ぬほど可愛くてやばいんです。


 「じゃ、じゃあ行くか」


 「はい」


 そう言って俺たちは家を出た。


 「んで、どこ行くんだ?」


 「まだ教えません!」


 どうやらまだ教えてくれないらしい・・・。


 少し歩いた後に


 「あそこのバス停から乗って駅に向かいましょう」


 「了解」


 少し待った後、バスが来て、15分ほどバスに揺られると駅に着いた。


 この季節だというのに太陽は湿り気を帯びていて暑かった。


 「ここから地下鉄に乗ります」


 ということだったので駅で少し待ち、青色のラインが入った電車に乗った。


 席は端にふたつほど空いていたので一番端に美冬を座らせて、その隣に俺が座った。


 どこ行くんだろうな~ドキドキ、隣に美冬がいるな~ドキドキ


 って感じだったんで俺はなかなか話しかけられなかった。


 彼女の方もしばらく口をつぐんでいた。


 だが10分ほどたった後、俺から口を開いた。


 「な、なぁ美冬。お前の好きなものとかを聞かせてくれないか?」


 そういえばなんだかんだで彼女の好きなものとかを聞けていなかった。


 「え?」


 美冬は一瞬、ほうけていたがすぐに気を取り直し


 「あ、そうですね」


 と言って話してくれた。


 休日ということもあり、人はそこそこ乗ってきた。まぁそもそも俺たちが住む町は全国から見ても都会だから人口も多い。


 「私は1月19日生まれで、好きな食べ物はチョコレートとみかんです。私、意外と少年漫画とかも読むんです。面白いのも多いですよね」


 「あ、ああそうだな」


 表面上では平常心を装っていたが内心では・・・


 「え、誕生日、俺と一日違いじゃん!チョコおいしいよね!俺もお菓子のなかで一番!冬生まれだけあってみかん好きなんだね!漫画好きなんだ!だから勝負大好きちゃんなのかも!」


 ってな感じでした。


 「それから・・・」


 まだ何かあるようだった。


 どうしたの!なんか顔赤い気がするよ!


 「私・・・熊のぬいぐるみ・・・好きなんです」


 うつむきがちにぼしょぼしょとそう語ってくれた。


 「・・・・・!!」


 ぐわぁぁぁぁあ!!


 なんてかわいらしい子なんだ!別に少女趣味とか思ってないぞ!


 俺は一瞬言葉に詰まったがしっかりと声に出した。


 「い、いいと思うぞ。女の子らしくて」


 年相応のかわいらしい一面を見せてくれて俺は満足だった。


 「・・・・・ありがとう、ございます」


 そう言って美冬はまた黙ってしまった。


 しかしすぐに目的の駅に着いたようで


 「ここで降りましょう」


 俺は彼女にされるがまま目的地に向かった。この駅は市内でも中央に近く栄えていて人もたくさん訪れる。


 4番出口から外に出た。するとそこには公園が見え、さらにその先には・・・


 「科学館か!」


 「はい、そうです」


 ふたつの建物に挟まれるように大きな球体状の構造物がある。ここのプラネタリウムはなかなか規模も大きく、市民からの人気もなかなかだ。


 小学校の時に行ったっけ。楽しかったな。


 俺たちは公園を抜けて科学館へと入った。


 「ここ、好きなの?俺も結構好きなんだけど」


 「そうなんですか!いろいろなものが見られて楽しいですよね」


 カウンターでチケットを買い、プラネタリウムの時間を見た。


 「まだ、少し時間がありますね」


 「そうだな」


 どうやらプラネタリウムは最後に行くことになるみたいだ。


 それにしても、周りの視線が多いですね~


 なかなか気が休まらないんですよ~うう


 俺たちはエスカレーターに乗ってさまざまなフロアをまわった。


 ここは文字通り科学のことなら多くのことを学べる。宇宙だったり物質だったりさまざまだ。


 そこから1時間ほどフロアを歩き回った。その間、美冬は


 「あれ見てください!」「これすごいですよね!」と楽しそうに見ていた。


 いや、もちろん俺も楽しかったですよ?実際楽しいところですし!


 ただちょっと視線が痛いしうっとうしいなぁとは思ってました。


 そうして少し経った後、いい時間になったので6階のプラネタリウムに向かった。


 「やっぱここ、でかいよな」


 「ほんとですよね」


 一回来たことがあっても、やはりその規模の大きさには驚かされる。


 俺たちは並んで席に座った。


 「天体観測、好きなんです」


 彼女はおもむろに語り始めた。


 「小さいころ見た流星群が忘れられなくて、それで好きになっちゃいました」


 「そうなんだ。俺も流星群なら昔見たことがあるよ」


 「そうなんですか?」


 俺の言葉に美冬は少し食いつきを見せた。


 「うん。小学校のころ流星群を見て、そのときのことを作文で書いたらなんか知らんけどラジオで放送されることになったから読まされた。親とかも聞いたからめっちゃ恥ずかしかった」


 「そ、そうなんですね!でもすごいじゃないですか、ラジオで放送なんて!」


 「そ、そうか?」


 本当は「ありがとぉぉ!!」って言いたかったけど照れるので言えませんでした。


 そんなことを話しているうちに始まった。


 人工の星空でもとても美しく見えた。


 しばらくは俺も見ていたが、知らないうちに俺は眠っていた。


 その間に夢の中で美冬にキスをされていた。


 俺が目を覚ました時、もうプラネタリウムは終わりが近かった。 

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