幕間5 二条小春は・・・

 みんなはもう知ってると思うけど、私は外資系企業の社長、つまりCEOであるお父さんと、アメリカで女優をやっているお母さんの間に生まれました。生まれは日本だよ?そのころは仕事の関係で日本に戻ってきていたみたい。


 お父さんは眼鏡かけててがっしりした体つきだから、見た目はちょっと堅物そうで怖い印象を受けるけどほんっとに優しんです。目つきもちょっと怖いです。忙しいながらも私のことを可愛がってくれました。

 お母さんは金髪美人の女優です。目も青いです。私の金髪はお母さん譲りみたい。絹みたいにきれいなんだよ!すごいでしょ!私の髪!

 英語はもちろんぺらぺらなんですが、日本語もかなり流暢りゅうちょうです。英語はお母さんに教えてもらったのとアメリカで数年暮らしていたので得意科目。私が高校2年生である今は日本でのお仕事に専念しているみたい。


 自慢の両親です!大好きです!アイ、ラブ、マイ、ペアレンツ!


 なんてね。へへ。


 私は小学校の5年生くらいのときまで日本で過ごし、つい最近までアメリカで過ごしていました。私は別にコミュ力低くないので友達はいたと思う。多分!けれど今はもう小学校のころに仲良かった子の顔は覚えてない。ごめん!

 アメリカでできた友達はちゃんと覚えてるよ?ケリーと、ケリーと、ケリーと・・・・


 ケリーしか覚えてないや!ほんとにもうちょっといたんだよ?信じて!私の美貌に誓うから!


 お別れはちょっと寂しかったです。けれど今も少しだけメッセージのやりとりをしています。


 そんな親愛なるケリーとの別れを経て、私はまた日本へ舞い戻ってきたというわけです。帰ってきた日は休日だったので、この町のことを知るために私は少しお出かけをしてました。適当にスマホで調べてたら科学館という面白そうな施設があったのでそこに行ってみることにしたの。私、科学には興味あるんだよ?


 「おお~!ロケットエンジンがある!」


 入口から館内に入るとそこにはロケットエンジンが展示してありました。びっくり!カウンターでチケットを買ってぶらぶらと各階の展示を見てました。通り過ぎていく私と同じくらいの少年少女が


 「うわぁ!何あの子!すげぇ美人」


 「ハーフかな?すっごいきれい」


 と私に羨望のまなざしを向けているのが分かりました。


 「どう?あたし、かわいいでしょ?」


 みたいなことも実際思ってました!自分に自信を持つことは大事だと思わない?


 男の子は私を守ってくれる王子様みたいな人が好みです!


 え?そんな人いるわけないって?見つからなかったら一生独身かな!


 私は最後に大きなドーム状のプラネタリウムを鑑賞して、さてそろそろ帰ろうかなと思っていた時でした。私は角の方で銀髪の女の子をいじめてる男連中を見つけたのです。女の子はとってもきれいな銀髪をしていました。私は女の子に手をあげる男を絶対に許しません。


 あたしはか弱い女の子の味方です!


 俊足でふたりの男に駆け寄って、足かけ技で倒しました。護身術はちょっと習ってました。だからどこをひねれば痛がるかは分かっていました。男どもは私の技に見事に圧倒され、力なく去っていきました。


 ふ、あたしにかかればこんなもんよ!


 私はカッコつけたかったので、かわいいかわいい女の子に一言声をかけると颯爽と科学館を後にしました。まさかあの子にまた会うことになるとは思っていなかったの・・・・・


 ***


 翌日。私は休日でも忙しい両親に代わって、近所へ引っ越しのあいさつ回りに出かけていました。礼儀作法はお父さんからしっかり教わっていましたので問題なかったです。


 何件か訪問した後、私は彼の家を訪れました。って言ってもその時は他人だったんだけど。私があいさつの言葉を述べると、彼は驚いたように目を見開いていたのです。


 「どうしたのかな?」


 と私が思っているとなんとびっくり昨日私が助けたあの子の彼氏・・・じゃなかった。あの子の連れだったなんて!まぁあんなかわいい子が一人であんなところに来ないよね!


 あたしはひとりだったけど・・・・・


 彼氏じゃないのにどうして一緒に出掛けてたのかなと思ってしつこく聞いてみたらどうやら彼はあの子に一目ぼれしちゃったようです。けれど妹が邪魔して二人きりにさせてくれないからどっちが彼の好感度を得られるか勝負するなんて意味わからんことになったようなんですよ!


 おっもしろそー!!


 とその時は思いました。あの妹ちゃんは独占欲が働いたのかそれとも兄のことを好きになっちゃったかのどちらかなんだなと私はすぐに気づきました。多分、大好きな兄が友達のものになってしまうこと、もしくは兄があの美冬ちゃんに心を奪われていることが耐えられなかったんだろうな。


 彼、卯月冬人くんは体つきはしっかりしてて目つきは怖いけどヘタレなとこがあるみたいなんです。恋愛初心者なんですね~そうなんですね~私もですね~。


 そのときはただおもしろい話が聞けて満足でした。


 しかし次の日。転校初日の日。私はお父さんに


 「小春、お前は母さんに似てきれいだから変な男には気をつけなさい」


 と言われていました。けれどしか言っていませんでした。その言葉を胸に高校で元気たっぷりJKっぽくあいさつして席に向かうとなんとびっくり昨日の彼がそこにはいました。


 「キラーン!チャーンス!ちょっと彼をからかってあげよう」


 と思って私は「信頼できる男を護衛につけろと言われた」なんて嘘を言っちゃいました。それにプラスして家の権威を借りました。すると彼は承諾してくれました。


 あはっははーチョローい!


 って思った。マジです。


 楽しかったなー彼をパシリにしたり、妹ちゃんと美冬ちゃんの前で彼女宣言して引っ掻き回したのは。だってさ、恋に障害はつきものでしょ?障害を越えられない男なんて情けないと私は思うし。


 まぁ彼は彼女たちの誤解を解くために私の力を借りさえしたんだけどね。そこはやるなぁと思った。まぁ友達宣言したしね。


 そのときは彼のことはただのからかいがいのある友達としか思っていませんでした。ほんとだよ?アイ、ドント、ライク、ライ。嘘は嫌い。


 ***


 けれどあの日。卯月君が近くにいないときに三人ほどの女子生徒が友達になりたいと言って近づいてきてくれたのです。彼女たちは違うクラスみたいだった。


 私、「美少女転校生現る!」みたいな感じで有名人になっちゃった!


 なんてアホなことを思っていました。


 実際友達は多い方が私は楽しいとそのときは思ってたので「昼にここ来て!」って言われたのをあっさり受け入れてしまいました。今思うと、ちょっと人が良すぎたな。お人好しの良子ちゃんでした。


 そうして一人、昼休みに呼び出された場所に行くとそこは二階建ての自転車置き場の一階だった。薄暗く、人気もなく、外から見えにくい。


 気づいたときには遅かった。彼女たちは私と友達になる気なんてさらさらなかった。一人はちやほやされている私が気に入らなかったから。もう一人は自分が好意を寄せている男の子が私に気を取られて自分と話してくれなくなったから。もう一人はただの取り巻き。かわいそうな子たちだね。特に取り巻きちゃん。


 まさか女子から暴行を受けるなんて思わなかったので驚きました。咄嗟に受け身を取ったので多分顔とかには傷はできなかったと思う。けれど痛かったです、実際。私も反撃しようか迷いましたが、相手は女子だし、こういうのは手を出したら負けだと思ったので攻撃しませんでした。表面上では平静を装っていましたが、多分内心は恐怖と混乱でいっぱいだったと思う。


 そんなときに現れたのが彼だったの。あたしの友達兼護衛くん。


 彼は私のことを身を挺して守ってくれて、さらに自分は全く手を出さずに追い払って見せた。正直言って、カッコよかった。


 おかしいな。彼なんてただの面白い友達としか思ってなかったのに。


 そのときから胸に何かが芽生え始めていた。


 ***


 その日の帰りから彼のことをまともに見られなくなったり、彼に私以外の友達ができたと聞いたときなんかムカついたりと私の感情が乱れまくっていた。


 彼、好きな子いるのにね。嫌われたくないのにね。


 ダメよ!好きだなんて絶対認めない!これは恋愛感情なんかじゃない!


 って何回も言い聞かせました。けれどダメでした。彼が私にとっての王子様、そしてヒーローになってしまったのです。


 彼があの美冬ちゃんの家に遊びに行くと聞いたとき、どうしようか迷いました。引き留めてしまうか。それともあっさり引き下がるか。


 結局、私はまだ覚悟ができていなかったので一瞬引き留めたものの、あっさり引き下がってしまいました。だって半端な覚悟じゃ、あの妹ちゃんと美冬ちゃんとの勝負に加われないし、ふたりに申し訳なかったからね。

 

 でも彼が神楽坂家に向かう背中を見て覚えた寂しさという感情に私は再度自分の気持ちを確認しました。


 私は・・・彼のことが、好きになってしまった。


 覚悟は決まりました。勝てるかな、私? 

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