第3話 告白対決!?決着はいかに・・・

 「さて、何して遊ぼうかしら、じゃなくて勝負しましょうか夏美ちゃん」


 「うーん、そうだね~じゃあどっちがお兄ちゃんをドキドキさせられるか対決ってのはどうかな?」


 「いいね!そうしましょう」


 中学生は中学生らしく仲良くふたりで遊んどけって。俺は人生初の一目惚れに戸惑っててそれどころじゃないんだけど?


 けど、俺が言い出したことだ。つきあってやる義理はある。


 「あ、ああ分かった。それで、どんな風にやるんだよ?」


 「お兄さんにはまずこの心拍計と体温計をつけてもらいます。そして私と夏美ちゃん、それぞれ告白をした後に心拍数と体温の上昇率で勝敗を決めます」


 「うん、いいよ!」


 「お、おう分かった」


 よく考えてんな。っていうかこいつ何で心拍計と体温計持ち歩いてるの?たとえ医者の娘でも持ち歩かんだろ。


 「まずはお兄さんの普段の心拍数と体温を計測します」


 「まぁそうだよな。了解」


 そうして5分くらいたった後。


 「ふむふむ。お兄さんの心拍数は80回、体温は36.67589度っと。メモしておきますね!」


 「36.67589度!?」


 俺が訳の分からん数字に驚いていると


 「ああ、言い忘れました。この体温計は小数第5位の桁まで測定できるんです」


 「第5位!?」


 そんなバカげた体温計どこに売ってるんだよ?日本中、いや世界中のどこの店を探しても見つからなさそうだし、まったく用途がわからん代物だと思うんだが。


 こんなの作ったやつ誰だよ?出てこい。


 「あ、ちなみに私が作りました」


 「お前かよ!」


 こいつだった。


 「そうなんだよ~実は美冬ちゃん発明もできるんだよ、頭いいから」


 夏美がそう説明してきた。頭いいやつって発明も簡単にできるもんなの?誰か教えてほしい。


 「んで、どっちからやるんだ?」


 「じゃんけんでいいかな?」


 「いいよ~!」


 そうしてじゃんけんの結果、我が愛する妹から俺に告白することとなった。


 妹から告白される日が来ようとは。うう、兄ちゃん嬉しすぎて昇天しそうだよ。


 つまり妹のためなら死んでもいいくらいには俺はシスコンなのだ。


 「じゃあ始めるよ・・・お兄ちゃん」


 夏美は窓際に立ち、夕日をバックにそう切り出した。心なしか顔が赤く見えるのは夕日のせいだろうか。


 「ずっと前から好き・・・・・・だったの。お兄ちゃん。もう兄妹なんて関係じゃ耐えられないの。お願い!私と付き合って!お兄ちゃん!」


 ささやくような甘い声で俺に告白し、さらには兄妹の関係を超えようとまで言ってきた。その声音は優しいが確かな強さがあった。それだけにかなりぐっときてしまった。恋人が妹!?そうなったらシスコン冥利に尽きるが。心臓の鼓動が速くなっている気がする。


 「夏美!兄ちゃん、感動したよ・・・そんなに想ってくれていたなんて!」

 

 俺が感動のあまり夏美に抱き着こうとしたのだが


 「はーい、そこまでそこまで。お兄さんも夏美ちゃんも下がって下がって」


 美冬に止められた。うう。まぁ夏美の方も涙目で頬を膨らませていて可愛いからいいか!


 「さてさて。心拍数と体温の方は~」


 そう言って美冬はパソコンを取り出して計測結果を見た。


 「心拍数130、体温37.85764度。むむ、やるわね夏美ちゃん」


 「ま、まぁね。私にかかればこんなもんだよっ!」


 今の状態でも立派に死にそうなものだが。俺、よく生きてるな・・・


 しかも今度は初めて惚れた女の子に告白されるとか・・・うっ。


 「よーし、今度は私の番ですね!」


 そう言って美冬は夕日が望む窓際に立った。告白は夕日がバックだと数割増しにドキドキしますよね~?気のせいですかね~?


 「冬人さんっ!私、あなたのことが好きで好きでたまらなくなってしまいました!あなたの目、体、声、立ち姿、何もかもが好きです!たとえ世界中の誰もがあなたのことを嫌っていても、私はあなたを愛しています!付き合ってください!」


 美冬は涙目、否、涙を流しながら必死に、懸命に想いを伝えてきた。そして俺のすべてを好きだと言ってくれた。最後に頭を下げた時、きれいな銀髪が夕日に照らされてキラキラとまたたいて星屑のようだった。


 しかも、名前呼びしてくれた!これは威力がある・・・


 顔がどんどん熱くなって、呼吸も荒くなってきている気がした。もういっそのこと美冬さんと結婚してもいいぐらいだった。うわぁぁぁぁ!!


 「あ、ありがとう・・・美冬、さん」


 「私のことは美冬で構いませんよ、冬人さん」


 「ぐっ、ぐわっ・・・ダメだ」


 美冬が甘い声で呼び捨てを許可してくれた。これはもう・・・・・・・・・。


 死んでもいいや。俺は顔を赤くしながらソファーに倒れこんだ。


 っていうか俺、妹を選んでも美冬を選んでも死ぬんだな。まぁいっか!


 「うう~さすがだよ美冬ちゃん。これは女の私でもくらっときたぐらいだからね。っていうかお兄ちゃん大丈夫!?」


 夏美はあわあわしながら俺の肩をゆすってきた。


 ダイジョウブ、ダイジョウブ。ニイチャン、イキテル。


 「さてさて~結果の方は」


 そう言って美冬はパソコンへ向かった。


 「ん?んん?」

 「どうしたの?美冬ちゃん?」


 美冬の様子がおかしかったので夏美がどうしたのかと問うた。


 「心拍数200、体温40.11253度!?」


 夏美がパソコンの画面に映った結果を見て驚愕きょうがくした。


 「ふふ、これは私の勝ち—」


 美冬が自身の勝ちを宣言しようとしたそのときだった。


 ピー!ピー!


 パソコンから警告音らしきものが鳴り響いた。


 「ちょっと待って美冬ちゃん!パソコンの画面がERRORって出てるよ!」


 「そ、そんな馬鹿な!私が作った機器に不具合があったとでも!」


 「き、きっとそうだよ!だから、この勝負は引き分け・・・だよね?」


 「うう~信じられないけど。そうね」


 俺には不具合なんかあったとは思えませんでしたがね。


 いまだに心臓の鼓動が鳴りやまないし。けどそれを言うと面倒なことになりそうだからやめとこう。


 今日の勝負は引き分けということになりました。


 あ、ちなみに今も俺は昇天しそうな顔でソファーに横たわってます。


 チーン、とどこかで鳴っている気がした。

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