幕間1 夏美の気持ち

 私とお兄ちゃんは昔から仲が良かった。今みたいにベタベタとまではいかないものの、お兄ちゃんは昔からよく私と遊んでくれた。


 目つきが怖くて、背が高くて、私のためなら何でもやってくれる


 こんな理想の兄はそうそういない、って私は思う。


 目つきが悪いは余計だったかな?えへへ


 私とお兄ちゃんはよく周りから似ていないって言われる。


 それはただ、私がお母さんに似ていて、お兄ちゃんがお父さんに似ているからだとずっとそう思っていた。


 父親と母親のどちらかに似るのは別に不思議ではない。


 だから私も最近までどうして似ていないのかを疑っていなかった。


 美冬ちゃんを家に呼んだあの日の夜、私は1階にいて、お兄ちゃんは2階の自室で本を読んでいたあの日。


 私はとんでもないものを発見していた。


 「これって・・・・・!」


 引き出しを開けて探し物をしていたら、数枚の書類が目に留まった。


 それは「戸籍」について書かれた書類だった。


 そこには今の苗字と違う私の名前が書かれていた。


 「え・・・・・・うそ」


 その表記に私は目を疑った。


 つまり。


 お父さんとお母さんは再婚同士だったのだ。


 それをなぜ私たちに教えていないのかはわからない。


 昔のことはよく覚えていないから、全く違和感はなかったんだけど。


 両親なりの配慮はいりょだったのだろう。


 「ってことは、私とお兄ちゃんは義理だったってこと・・・」


 もしかしたらお兄ちゃんと美冬ちゃんが仲良さそうに話しているのを見てあんなに嫉妬心が芽生えたのはこのせいだったのだろうか。


 最近、お兄ちゃんは美冬ちゃんに近づこうとしているのがよくわかる。


 あの子は私と同じくらいきれいだ。ほんときれいだよね!


 肌とか髪とか~うううう


 なんかむしゃくしゃしちゃった!


 だからお兄ちゃんが目を奪われてしまうのも分かるのだ。


 それくらい魅力的な女の子だと私は思う。


 お兄ちゃんは私をただのかわいい「妹」としか見ていない。


 実際は「義理」だと知らずに。


 それを教えようかどうか迷った。


 それによってお兄ちゃんが揺れる可能性がないわけではない。


 けれどそれはずるい気がするのだ。


 美冬ちゃんは私の親友だ。


 だからこそ正々堂々勝負して勝ち取らなければ美冬ちゃんに申し訳ない。


 そう思って、私は教えないことにした。


 その代わりに美冬ちゃんばっかりに気を取られないようお兄ちゃんにグイグイ迫ると決めたのだ。


 お兄ちゃんが私によく「大好き」と言ってくれるけど、私はその1000倍、いや1億倍はお兄ちゃんのことが大好きだ。ほんとだよ!ほんと!


 けれどお兄ちゃんはきっと私に恋愛感情なんて抱いていないだろう。


 だから正直望み薄な気がする。


 でも勝負できっぱり負けたなら、そのときはきっと潔く諦められるはず。


 そう信じて私は美冬ちゃんと勝負を続けている。


 私にあって美冬ちゃんにないもの。


 それは距離の近さだ。だから私はこれからそれを利用することにした。


 負っないよー!美冬ちゃん。お兄ちゃんの一番を勝ち取って見せる!


 いざ、勝負! 


 


 

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