第16話 一体何してんだ
俺たちは四人仲良く・・・ではない。俺以外の三人はなんかまたよくわからんがにらみ合っているし。勘弁してくれ!
とにかく俺の右に夏美、左に美冬、そして後ろから肩をつかんでくるのは二条小春だ。あの・・・めっちゃ歩きづらいんですけど。
そして例のごとく道行く生徒たちの視線が痛すぎる。うぐ・・・
「おい、お前らもう少し離れて歩けよ・・・」
俺がそう言うと
「やだ」
「嫌です」
「護衛なんだからあんたのそばにいないと意味ないでしょ」
と拒否されてしまった。ははは、しょうがないなぁ~
「そういえばお兄ちゃん、もうすぐ中学校の体育大会があるんだよ!」
「そうなんです!ぜひ見に来てください!」
「ああ、そうか。中学は5月にやるんだっけか」
最近は熱中症対策のためか春にやるか秋にやるかのどちらかが多いらしい。
「あたしたちはいつやるの?」
後ろから二条が聞いてきた。
「俺たちは9月だ。正直まだ暑い時期なんだよな・・・」
ほんと地球温暖化はどうにかするべきだと思う。一年の大半の季節が暑くなっている気がする。5月もめちゃめちゃ暑い。
「んでさ、私と美冬ちゃんは短距離走とリレーに出ようと思ってるんだ。勝負するために」
「はい!去年は私が短距離走では勝って、リレーでは負けてしまいましたから。今度こそ決着をつけようね!」
「きみたちほんと勝負好きだし仲いいね・・・」
俺は思わずそう呟いていた。
勝負といえば・・・・・
もうそろそろ何か進展させないとな。
「よし。じゃあその勝負で勝った方は俺の好感度が10上がる。100ポイント先取だ。もちろんどちらも0ポイントからだぞ」
「え、ホント!」
「ほんとですか!」
「ああ、大マジだ。かっこいい女の子は好きだ」
こうでもしないと納得しないだろう。たまには決着を用意してやるのも大事だとは思う。
「あ、そうだ。おい二条。お前も来いよ。おもしろいから」
「もっちろーん!そんな面白い勝負見逃すわけないじゃん」
まぁ一応、友達だし?誘ってみたかったというだけだぞ?
「よし、まぁそういうことなのでふたりとも頑張ってくれたまえ」
「うん!」
「はい!」
「イエス!」
「何で二条まで答えてんだ!」
お前は何を頑張るというのだろう?
「んじゃ、俺たちはここで」
「バイバーイふたりとも」
俺と二条がそう言うとふたりは
「じゃあね」
「はい。それでは」
と言って手を振って校舎へと向かっていった。
***
「おい、お前学校内でも俺の肩をつかんだまま歩くな」
「えー、だって君、私の護衛でしょ?だったら危ないときは君を盾にしなきゃ」
「お前を死ぬ気で切り離してやるわ!」
あいにく俺はお嬢様への忠誠心なんてものは存在しないので自分の命を優先する。多分な。
「もー、しょうがないなぁ」
そう言ってやっと二条は俺の肩から手を離した。お前のせいで肩こりしそうだわ!
階段を二回ほど登り、少し歩くと教室へ入った。
「ひゅーひゅー今日もお二人さんは仲いいねぇ」
「あ、二条さんと卯月君だ!」
「ふたりって実は付き合ってるんじゃない?」
教室へ入るとクラスメイト達はそんな言葉を俺たちに向かって投げかけてきた。
仲?よくないよくない。全然。全く。
付き合ってるだって?俺はこいつの奴隷、そして友達、あと一応護衛役。一応ね。
俺は無視して席へ座った。二条のやつは相変わらず人気者らしくすぐに席の周りに人だかりができていた。邪魔なんだよ、俺の席の近くでしゃべんじゃねぇ。
***
その日の昼休み。スマホに着信があった。夏美からのようだ。
「美冬ちゃんとお昼なう。イエーイ。あ、でもお兄ちゃんは二条さんとお昼の写真なんか送ってきたらころすね!」
怖いわ!ひらがなで「殺す」って言っても可愛くないぞ!ほんとに可愛くない!
まぁでも心配せんでも誰があいつなんかとお昼の写真なんか撮るかよ。そういうのは恋人とやれや。
そういえば二条は・・・
「あ、今日私お昼呼ばれてるから!ついてこなくていいよ!」
とか言ってたな。
よっしゃぁー!!!
久しぶりにあいつのいない静かな昼休みが遅れるぜイエェェーイ!
俺がしばらくのんびりと昼飯を食べていると
「なぁ卯月。二条さんしらね?俺、あの子狙ってんだわ」
あ、そう
って言ってやってもよかったがしないでおこう。あれ、お前誰だっけ?
「あー?なんか誰かに呼ばれてるって言ってたぞ。他のクラスにも友達ができたんじゃねぇの」
「そっか!卯月も狙ってんだよな?負けないからな!」
とか言って去っていった。俺は狙ってなどいないのだが。
あと名前ぐらい名乗ってくれよ・・・
***
昼休みもあと10分あるかどうかという時間になった。
俺を含め生徒たちは午後の授業の準備をしていたが、二条の姿はいまだになかった。
「そんなに友達と話すことがあんのかよ・・・・・?」
俺は知らずそう呟いていた。クラスメイト達も少し騒がしい。
さて、一体どうしたものやら。俺はあいつの行き先など聞いていない。しかし俺はあいつの護衛(仮)かつ友達(本当)だ。探しに行ってやる義務くらいはあるのだが。
俺がどうするか考えあぐねていると一人の男が近づいてきた。
「なぁ卯月。二条さん探しに行かね?ほかのやつらも探そうとしてるみたいだぞ」
「あ、ああ。まぁな」
さっきの男だった。彼は茶髪で眼鏡をかけた男だった。
他のやつらも探しに行くのなら・・・仕方ない。
「よし。わかった。行こうぜ」
俺がそう言うと彼もいっしょについてきた。ちらと後ろを振り返るとクラスメイト達も二条の行方を捜しに行くようだった。
「な、なぁ。悪いんだけど、名前教えてくれないか?」
「はは、ひっでーな!クラスメイトだろ?俺は
「おう、サンキュー」
俺は彼、水無月とともに校舎を走り回っていた。ちらっと聞いた話では委員長様が先生にも言っといてくれるようだったので校舎内を走り回っても問題なかろう。
うちに風紀委員なんてものは存在しないからな。アニメみたいに。
「ほんっとどこ行っちゃたんだろうね二条さん」
「知らねぇよ。どっか学校出て遊びに行っちまったんじゃねぇの」
水無月の言葉に俺は半ば適当に答えた。
それから数分間探し続けたが二条の姿は見当たらなかった。途中、他のクラスメイト達とも出会ったのでもう探していないところなんてないと思うのだが。
そうして俺と水無月を含めたクラスメイト達は昇降口に集まった。委員長様が
「校舎内は探したな。じゃあ今度は外だ!何としても二条様を見つけるぞ!」
と言ったのに合わせてクラスメイト達は
「おー!!」
と拳を掲げていた。俺はしていません。
っていうか「二条様」って。まさかあの真面目そうな委員長様も二条のこと狙ってんのかよ!
ほどなくして始業前のチャイムが鳴った。昼休みはあと5分しかない。
「行こうぜ、卯月」
「おう」
俺は水無月とともに捜索へ向かったのだった。
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