第6話 最高の家族
学校からの帰り道、俺は朝と同じく夏美と美冬に腕をしっかりホールドされながら帰路についていた。
「ふっふ~ん♪」
「ルンルン~♪」
俺の右では夏美が、左では美冬が楽しそうに鼻歌歌ってスキップしてました。
ご機嫌よさそうでなによりです・・・うんうん
なんだけど。
「ちょっと君たち、腕を強く振りすぎじゃないかああああ!」
両腕を振り回されてぐわんぐわんになっていたり、ふたりの体のいろんなところが当たったりでもう大変なことになっております!
俺の顔が熱いのは西日のせいだよな?地球温暖化で春でも夏並みに熱いからだよな?きっとそうだよな?
多分僕がふたりのことを好きだからですね~ええそうなんですよ。
ほんと、マジどうしよう・・・
と、そのとき
「危ない!お兄ちゃん!」
「え?って、どわぁぁ!」
俺が腑抜けた状態でふたりに振り回されるようにして歩いていたため、前方の道路に穴があることに気づかなかった。
ってなんでこんなとこにこんなでかい穴空いてんだよ!業者は何やってんだ!
「美冬ちゃん!お兄ちゃんをお願い!」
「ええ、わかったわ!」
美冬に俺を託し、夏美は俺を突き飛ばした。
って、おいお前!
「おい、あぶねぇぞ!」
俺の代わりに夏美が落ちてしまっては俺の心が痛む。
それはもう心臓を粉々にされた後、圧砕機で押しつぶされるような痛みのような。いやどんな感覚か知らんけど。
まぁ要は死んじゃうってこっと!
「大丈夫だよ、お兄ちゃん!」
俺の呼びかけに夏美はへいきへっちゃらな顔をしてそう言いのけた。
どうするつもりだ?あの穴、半径3メートルはあるんじゃないか?
「見ててー!とーう!!」
そう言って夏美は宙に高く舞った。おいおい、何メートル飛んでんだ!
そのままダンクスマッシュとかメテオジャムとか放てそうな高さだぞ!
そしてそれだけでは飽き足らず
「はーっ!!」
空中で二回転ほどして向こう側にすたっと着地した。
俺と美冬はその華麗な演技にあっけにとられていた。
「・・・・・すごい、さすがだわ!」
「・・・・・お前!」
そして数秒経った後、俺と美冬は
「「10点!!」」
「いえーい!ピース☆」
思わずスケートの採点者の気分で採点していた。そしてその言葉に夏美は顔の横でピースをしてにっこりスマイル!
かっわいーい!
んだけどよ!
「いや、お前いくらなんでもすごすぎじゃね!?」
「夏美ちゃん、運動神経では私といい勝負なんですよ!」
いやいやいや、半径3メートル越えの穴をほぼ助走なしで、しかも空中で回転までして見せたんだぞ!?俺の妹は超人か何かなのか!?
スケート選手か陸上選手、それもトップクラスの選手になれるレベルだぞ?
ちょっと待てよ?
今、美冬が「私といい勝負」って言わんかった?
そう思って美冬の方に目を向けると
「危ないです!冬人さん!」
「へ?って今度はなんだよ!」
今度は俺の目の前に高さ3メートルぐらいの看板が立てられていた。
は?何でこんなとこにバカでかい看板があるんだ!?邪魔すぎるだろ!
やべぇ、ぶつかるうううう!
と思ったその時
「冬人さんはあっちへ!」
そう言って美冬は俺を突き飛ばした。存外に強い力だったので驚いた。
でも、お前どうする気だ!?
「お、おい美冬!ど、どうする気だ?」
「見ててください!」
俺の言葉に美冬は気丈に言ってみせた。
「はぁーっ!!」
短い助走で美冬は宙に高く舞った。
そして空中で背面飛びのように体をそらせて激突を回避した。
空中で銀髪が夕日に照らされてまぶしかった。
「・・・・・!!」
俺はその華麗すぎる技にただ絶句するしかなかった。
って、そのまま着地したら・・・
「あぶねぇ!」
美冬の危険に気づいた俺の体は無意識のうちに動いていた。
俺は看板の後ろに回り、美冬を抱きとめるようにして腕を突き出した。
ぼふっっと俺の腕に美冬が収まった。かっるい!
「・・・・・」
「・・・・・」
俺と美冬は互いに3秒ほど見つめあって沈黙を保っていた。
そしてその後、お互いに顔を赤くした。
「あ、ご、ごめん。すぐ降ろすから・・・」
「い、いえ。助けてくれてありがとうございます・・・」
俺も美冬も顔を真っ赤にしていたが、俺の方が1000倍、いや10000倍は顔を赤くしていたことだろう。
つまり、
傍から見ていた夏美が
「あー!!もう、美冬ちゃん!!・・・けど、お兄ちゃん、かっこよかった!」
夏美が美冬にぷんすか怒ってましたが、すぐに収まって俺を褒めてくれました。
アリガトォー!!!お兄ちゃん思い残すことはありません・・・・
いや、そんなことなかった。美冬・・・・・・
美冬の方を見ると、彼女はちらちらと視線を俺に向けたり、どっかに向けたりを繰り返していた。しかもなんかまだ顔赤いし!
「ど、どうした・・・美冬?」
なんかその視線にドギマギしまくっていたので思わずそう聞いていた。
「かっこ・・・よかったです。ありがとう・・・ございました」
「ぐぬっ!!」
美冬が鈴のようなきれいな声で、さらに上目遣いで視線をちらちらさせながらデレデレしながらそう言ったので変な声を出してしまった。
ちょ、ちょ、ちょっと待って。待って!何この子・・・・やばいやばいやばい
可愛いいいいいいいいいいいいい!!!
心拍数上がりすぎて死にそう!
「お、おう。気にすんな・・・」
「けど、ちゃんと着地のことも考えてたんですよ?」
「え?・・・・えええええええ!そうなの?」
「は、はい」
そうなの?やっぱ俺めっちゃ恥ずかしいことしちゃったの?
嫌ぁー!!死にたい死にたい!
俺、何カッコつけちゃってんのバーカバーカ!
でも。
美冬がめっちゃ可愛く褒めてくれたのでまぁよし!
それにしても、この子たち最強すぎません?
俺の通学路、おかしくありません?
家はもうすぐそこだった。
***
「何で君まで家に上がりこんでいるのかな?美冬?」
なぜか美冬まで当然のように家に上がり込んでいた。
「だって~さっきの勝負、決着つかなかったんですから。ね、夏美ちゃん?」
「・・・・・・私の方が華麗にお兄ちゃんを守れてた・・・」
「え?なんか言った?聞こえなかったよ~夏美ちゃん」
夏美のぼそぼそとつぶやいた言葉に美冬は表面上は笑顔でそう言った。
なんでまた君たち、ばちばちやってるのかな?
「うん。もっちのろんだよ、美冬ちゃん!・・・・・・ちっ」
最後に舌打ちが聞こえてきた。こわいいいいいい!!
でも最高に可愛いのが俺の妹です!
「それで、今度は何で勝負しましょうか、夏美ちゃん」
「うーん」
そうして1分ほど考え込んだ後
「ふっ」
と、夏美が不敵に微笑む声がした。
「料理対決だ!」
「OK!いいわ。でも私を見くびらないほうがいいよ」
「よし!お兄ちゃん、できたら食べて!どっちがおいしかったかを教えて!」
そう言ってふたりはキッチンへと向かった。
確かに僕は家庭的な奥さんには憧れますけどね?
そうしてふたり仲良く・・・じゃないかもしれない。
なんか瞳に闘志バリバリ宿ってますし・・・
まぁとにかく料理対決に巻き込まれました。
それにしても、もし、もしだよ?もし俺が美冬と結婚したら、こうやって大好きな妹と奥さんが料理する姿を見られるってことだよな?
あ、もちろん妹は俺の家に住まわせるつもりだからね!あったりまえだよ!
もし彼女と結婚したら、最高の家族をつくれるんじゃないだろうか。
俺はふたりを見てそんなことを思っていた。
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