幕間3 そのころ家では・・・

 美冬ちゃんたちが家を出てから私はいろいろなことをしていた。例えば学校の宿題。私は勉強はできる方だ。もちろん美冬ちゃんもだ。けれど私と彼女とでは得意科目が違う。私は国語と英語、それと社会科目が得意なのに対し、美冬ちゃんは数学と理科が得意だ。テストでは1,2位を競いあっている。


 得意科目以外もそれなりには点を取れるんだよ?私も美冬ちゃんも。


 それから見たかったアニメを見た。そしてその後、帰ってくるであろうふたりのためにお昼ご飯を作っていた。


 けれど私は気づけばぼーっとしていることが多かった。多分否が応でも胸がもやもやする光景を想像させられていたからだ。


 「お兄ちゃんと、美冬ちゃんが、ふたりきり・・・」


 これは勝負だから仕方がないことなのは分かっている。だがどうしても頭に浮かんでしまうのだ。お兄ちゃんと美冬ちゃんが楽しそうにしている光景が。


 こんなことを想像してしまうたびに私は


 「これは勝負これは勝負これは勝負・・・」


 と2000回ぐらい唱えていた。はぁはぁ疲れちゃった。


 こんなんで体力消耗してなにしてるんだろうね!えへっ!


 要するに私はしらないうちに嫉妬心しっとしんを抱いていたのだ。それがお兄ちゃんに向けられたものか、はたまた彼女に向けられたものか、もしくはその両方なのかはわからない。


 「見てろー!絶対私が勝って見せるんだから!」


 お兄ちゃんを驚かせるベリーベリーキュートな服は汚れるといけないのでまだ着ていない。私だって武器はあるんだから!


 あ、ちなみに私も少年漫画読むんだよ?主人公と敵だったライバルが共闘したり、仲間になったりする展開って燃えない?


 私、だぁぁぁぁいすき!


 だから私も勝負好きな人間なんです。


 「今頃、何してるんだろう・・・?」


 ふと気づくと、たびたびこんなことを考えていた。


 いけない、いけない。


 頭から嫌な光景を消し去り、スマホを取った。


 メッセージアプリを開き、お兄ちゃんに「お昼を作っておいたよ」と送っておいた。


 勘違いしないでね?私は別にお兄ちゃんと美冬ちゃんが一緒にお昼を食べている光景が頭に浮かんでそれを阻止するためとかじゃないよ?


 ほら、お兄ちゃん、私の料理だぁぁぁい好きでしょ?だから食べさせたいなって思っちゃいました!てへっ!


 それを言うなら美冬ちゃんの料理もおいしそうにしてたんだよね・・・。


 リビングの窓から外を見ると、太陽はまだ真上には上っていなかったが暑そうな熱気を放っていた。


 と、そのとき別の相手からメッセージが来た。


 「もう関わらないでって言ったのにな・・・」


 その子は最初友達になろうと言って近づいてきた男の子だった。もちろん私は魂胆を見抜いていたが、何の理由もなしに友達になろうと言ってきた子に「嫌だ」と言うほどひどい性格をしていない。


 けれど私はその子に興味なんて持っていなかった。私は人気がある方の人間なので表面上は親しく接した。その子も嬉しそうにしていた。


 彼は1年生の3月、春休み前に告白してきた。もちろん私は断った。ちゃんと断ることは優しさだと私は思っている。そしてその後「なんかこのまま友達でいるのは気まずいから関わらないでほしい」と言って私は去った。


 けれど数日前にまたメッセージを送ってきた。そして今日で2回目。


 私はブロックのボタンを押した。少なくともこれで私がメッセージを見ることは一生ない。


 ほんとうっとうしいよね、「友達になろう!」って近寄ってくる男子って!魂胆丸見えなんですよ!バカなのかな?


 私はスマホの電源を切ってテーブルに置いた。


 ふと昨日のことが頭に浮かんだ。


 実は昨日お兄ちゃんと美冬ちゃんが寝静まったころを見計らって部屋を抜け出しお兄ちゃんの部屋に入っていたのだ。


 そして。


 お兄ちゃんのほっぺたにキスをしちゃってました。さすがに口は恥ずかしくてできませんでしたが。恥ずかしいんですよ、ほんと!


 つい独占欲が働いてしまったようです。お兄ちゃんの寝顔、可愛いかったなぁ。


 美冬ちゃん、ごめんね。私、そんなに優しくはないよ。友達でも譲れないものはあるの。


 それに多分、彼女もきっと同じようなことを考えていると思う。なんの確証もないただの直感だけど。女の直感ってめない方がいいよ!


 そんなことを頭で思っているうちに玄関の扉が開く音がした。帰ってきたようだ。


 

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