戦闘レポートを書く羽目に


 何事もなくグルギュト砂漠を抜けて、草原にたどり着きました。 

「あと百二十キロほどでエルゲネコン、もう一息だ」


 メディとハディが心なしか緊張した顔になっています。

「どうした?」

「いえ、もし不採用だったらと思うと……」


「前にも言ったであろう、メディは大丈夫だ、ハディは不採用なら私が面倒を見てやる、安心するがいい」

 

 ……


 二人の瞳に、少しばかり溢れるものが見受けられました。


 『ケッテンクラート改』は順調です、しかし……


 突然、XM214牽引自動砲塔が動き始めました。

 進路左後方に銃口を向けます。

 『ケッテンクラート改』に埋め込まれているスピーカーから機械的な声がします。


「敵意を持つ集団を発見、取り囲もうとしていますので、これより『ケッテンクラート改』は最大スピードを出します」

 小型監視衛星の人工知能の声のようです。

 

「メディ、ハディ、しがみつけ!」

 『ケッテンクラート改』は七十キロの最大速度に加速したのです。


 ウーラポーセンの声が終わらぬうちに、XM214が発砲を始めたのです。

 

 XM214を組み込んだ、小型電動式ガトリングガン砲塔の性能は素晴らしいもので、使用する五.五六ⅹ四五ミリNATO弾を、最大百発/秒という発射速度で敵集団を粉々に粉砕しています。


 なんせ頭上の小型監視衛星からの遠隔操作です。

 的は外れない上に、弾は次々と転移され自動装填されるという、とんでもない機能が組み込まれています。


 もう虐殺に近い戦闘です。

 あっという間に敵集団を殲滅してしまったのです。


「すごいものだな……これだけでエルゲネコンの守りは完璧なのではないか……そもそも馬では『ケッテンクラート改』には追いつけないし……」

 

 七十キロで走っている『ケッテンクラート改』に、どうやら敵は追いつけないようでした。

 なんといっても、競走馬の最高スピードが七十キロですからね……


 少しばかりのトラブルがありましたが、エルゲネコンに帰還して、ウーラポーセンの夏休暇は終わったのですが……


 ウーラポーセンはXM214を組み込んだ小型電動式ガトリングガン砲塔についての、戦闘レポートをせっせと書く羽目になったのです。


「うっっっっ、私にこんな報告書など求めないでほしい!」

 

 やっとレポートを提出したと思ったら……


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