言い訳の夢を見る


 呟いたのは勿論ヴィーナスさん。


 ……やっつけ仕事はやはりだめね……

 彼女たちの夢は、造化三神の思惑で繰り返されたことと思うけど……どうもフォローが上手く出来ていない……


 最初に粗雑に対処したのが敗因という訳ね……特に疱瘡の件、面倒だから全て消去のがね……まぁ、どうしたものか……


 三人が見る『亡国の夢』って、惑星中原で起った趙帝国の戦乱に関して、二度三度と繰り返された時空間の出来事。

 いつものヴィーナスさんらしくない後始末、手荒なやっつけ仕事で済ましてしまったのです。


 とにかくヴィーナスさん、何とか誤魔化すことに決めたようです。


「ねえ、ひょっとして……」

 夏香玉が沈黙を破ります。


「私たち、娘娘(にゃんにゃん)様に抱かれて変わったと思うのよ」

「身体が娘娘(にゃんにゃん)様を求めていると思うの、ある意味狂っているのよね」


「それに引きづられて、今では心も娘娘(にゃんにゃん)様を思っている」

「だから思うのよ、私たちが見る亡国の夢って、抱かれ狂っている身体に対して心が言い訳している」


「ほら、私たちって貴妃と皇妃と皇太后、朱麗月さんだって第十二代開国公の未亡人、実家は大貴族よね」

「亡国の夢を見る女って夜に狂うのははばかれる女ばかり、どうしても言い訳が必要なのよ」


「そう思っているのが夢にでるのよ、国が滅び後宮の女は仕方無く身を差し出す」

「私の夢は自決でしたが、昔の自分は死んだ、いまの自分は別人、つまり言い訳なのよ」


「言い訳……いわれてみればそうね……」

 陳麗華が納得したようにいいます。

 申容姫も頷いています。


 ……なんとか誤魔化せそうね……

 ヴィーナスさん、ホッとしたようです。


「言い訳の夢ならそれで良いじゃないの」

「確かに私は趙の元皇妃、どこかに恥じらいがあったのかもしれない」

「でもその言い訳の夢を見るということは、もう恥じらいなどは棄てなさい、という意味に取ることにするわ」


「娘娘(にゃんにゃん)様の前に出ると、身体が求める」

「女として成熟したこの身体、娘娘(にゃんにゃん)様に抱かれたいと思うのは当然!」

「そうよ、相手は娘娘(にゃんにゃん)様なのよ!」

 陳麗華の告白です。


 ……えっっっ、なんで?……

 ヴィーナスさん、慌てています。


「そうね、陳麗華のいうとおり、私たちは娘娘(にゃんにゃん)様に抱かれることが全て」

「娘娘(にゃんにゃん)様が望まれるなら、何だってするべきなのよ」

「娘娘(にゃんにゃん)様のお手で身体を壊されると思うと……この身体、はしたないことになるわ……」


 ……夏香玉さんまで……

  

「たしかに娘娘(にゃんにゃん)様は夜が激しい……近頃ではお尻でも感じるし……」

「でももっとこの身を嬲って欲しい」


「こんな薹(とう)が立った女が、娘娘(にゃんにゃん)様のご寵愛を得るには、娘娘(にゃんにゃん)様のお好きなことで、身もだえる女にならなければと思う」


 ……いや、申容姫さん、そんな戯言など……せっかく誤魔化したのに……


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る