フリーズドライの挽肉料理
チキンとポークとビーフの、乾燥されたひき肉状のものが入っている袋を渡されました。
そのほか、粉末卵、チキンブイヨン、トウモロコシの粉末やウィスキー、大豆から作られる調味料の数々……
「できたら、これだけのもので何とかしてほしい、塩や砂糖は使うなとは云わないが、控えていただければ助かる」
「娘娘(にゃんにゃん)様は味が落ちるといわれていましたが、ポークとビーフの肉汁のエキスはいただけないのでしょうか?」
「ああ、これね、本当に使うの?」
「多分チキンブイヨンと大豆オイルを混ぜれば、何とかなるのではと思うのです」
このチキンブイヨンと大豆オイルを肉汁のエキスに混ぜたのは大正解。
二人は試行錯誤を繰り返し、大豆肉にコクを出すことに成功。
かなりのところ、ポークとビーフの挽肉に近づいたと評価できました。
景山響子さんの喜ぶこと……
朱麗月さんと趙紅花さんは、ピリ辛餡の肉団子を大豆肉で見事に作り上げて、物資補給部でお披露目試食会を行うと……
「この肉団子、フリーズドライに出来ないかしら……ネットワークの食品技術なら、この味を損なわないままで出来そうだけど……」
二人の呟きを、景山響子さんは聞き逃しはしません。
「いいわね!レイルロードのパントあたりで使えるわ!」
「大豆肉はミリタリーオフィスにも納品している」
「大豆肉の唐揚げは大好評、物資補給部に膨大な利益をもたらしている、いいわ!素晴らしいわ!」
物資補給部は総力を挙げて、この大豆肉の肉団子のフリーズドライに挑戦、景山響子さんは信じられないことに、マレーネさんにまで直訴して、協力させたようです。
なんとも恐ろしい……
このフリーズドライ、ニライカナイRCTで女官に配布される、直径六十ミリ×深さ五十五ミリのチタン製の携帯マグカップに三個いれ、決められた温度の湯をかけると、瞬時に美味しそうな肉団子に戻ります。
勿論ピリ辛餡が絡んだ状態ですよ、これは好評です。
景山響子さん、これを三個単位で女官用のカタログにも載せたのです。
無料ではなく三個で五円です。
当初十円としようとしたようですが、カタログを管理する薫さんから高すぎるというクレームが入り、五円となったのです。
でも原価は三十個で一円ぐらい、ボロもうけです。
肉団子以外にもハンバーグなど、フリーズドライの挽肉料理が追加されたようです、勿論既定の大きさです。
「ところで景山響子さん、私にも大豆肉の特許?使用料は払っていただけるのでしょうね?」
「物資補給部がボロもうけなんて、許しませんからね!」
で、大豆肉でのもうけの〇.〇五パーセントがヴィーナスさんの懐へ……
さらには肉団子についての売り上げの、〇.〇一パーセントが朱麗月さんと趙紅花さんに……
おかげで第十二代開国公の未亡人ご一家は、結構優雅な生活が出来るようになったのです。
……うまく出来たようね……これであの二人も寵妃には引き上げられるわ……
おや、ヴィーナスさん、肉団子を食べるのでは……
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