主食に主食、その上、主食


 惑星中原の泰山とは、テラとは違い天仙娘々(てんせんにゃんにゃん)だけが祭られています。

 第十二代開国公の未亡人たちの家は、テラでいうところの天街という場所にあります。


 ニライカナイへは、玉皇頂と呼ばれる泰山の最高峰に中原三宮を繋ぐ専用シャトルがあり、ここからエルゲネコン蒼天宮へ出てニライカナイへ転移します。


 二人はニライカナイに、小さい専用住居をあてがわれているのですが、やはり故郷の方が良いようです。

 ここからは通勤出来るので許されているわけです。


 東岳泰山碧霞宮の入り口は一天門と呼ばれる場所で、ここが境界となり関係者以外何者も入れません。


 そもそも趙帝国の警備兵が厳重に警戒しています、男は皇帝といえど入れません。

 一天門と呼ばれる場所には面会用の施設があり、皇帝専用の部屋もあります。


 天仙娘々(てんせんにゃんにゃん)に仕える女碑さんの家族も、ここに来て会うことになります。


 末女さんなど一般女官さんたちは主に一天門の内側に宿舎があり、ここから玉皇頂まで、簡単なマイクロワープ方式のミニシャトルがいくつかの停留所を経由して走っているのです。

 

 ある日、東岳泰山碧霞宮の第十二代開国公の未亡人たちが住まう家に、ヴィーナスさんがふらりとやって来ました。

「肉団子、いただきに来ました!うまく出来たそうね!これお土産!」


 マルスの日本にある、某社の果実酒シリーズ六種類、杏露酒(シンルチュウ)、茘枝酒(ライチチュウ)、檸檬酒(ニンモンチュウ)、山査子酒(サンザシチュウ)、林檎酒(リンチンチュウ)、藍苺酒(ランメイチュウ)の五百ミリリットルを三本づつ、合計十八本も抱えています。

 これ、中身は蓬莱の日本産です。

 マルス資本がこれをネットワークで販売しているわけです、この某社、鈴木商会の傘下なのですよ。


「こんなにも!」

「度数は低いですからね、食後のデザート酒ですよ、このごろ中原ステーションでも売り始めたようです」

「安いから、ウイッチ用のカタログに載る予定ですので、気にしないでください」


 で肉団子パーティーです。

 ヴィーナスさんの希望で、大豆肉で作られたフリーズドライのものです。


「美味しいわ!これ豚肉?……いえ合い挽きですね……」

 テーブルにはピリ辛餡の肉団子以外にも、甘酢餡を絡めたものも乗っています。


「こちらもいかがですか?」

 朱麗月さんが、大豆肉をベースに自ら練り上げた肉団子料理、脆炸肉丸(ツイジャーロウワン)を勧めました。


「うまい!これは美味しいわ!ねえ、白ご飯ない!」

 やはりヴィーナスさん、日本人のようです。


 ……ヴィーナス様って変ね、主食に主食なんて……やはり女学校の給食はヴィーナス様の影響なのね……


 調子に乗ったヴィーナスさん、焼餃子なんて所望しています。 

「えっ、焼餃子、娘々様にそんな残り物料理――中国では餃子といえば水餃子、水餃子の残りを焼くことが多いらしい――なんて……」


「お願い、私、焼餃子が大好きなのよ♪」

 で、渋々朱麗月さん、焼餃子を作ったりしています。


「スープもいかがですか?」

 今度は白湯スープを差し出した趙紅花さん、

 野菜がいっぱい入った白湯スープを、ヴィーナスさんはこれも白ご飯と一緒に食べていますが……


「ねえ、麺をここに入れてくれない?」

「……ラーメンにするのですか?でも……いえ、分りました」

 少々驚いた顔の趙紅花さんですが、おかわりするヴィースさんに白湯麺を持ってきます。

 

 これも美味しそうに食べるヴィーナスさん、肉団子、焼餃子、白湯麺を次々にお代わり、白ご飯とともに美味しそうに平らげています。


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