首席巫女


 アイハンが、

「契丹巫女ゲレルトヤーを首席巫女とする、これよりウマイ様にお目通りすることになるが、いまさらながら覚悟は出来ているな?」


「私たちは巫女は全てを捧げています、ご懸念には及びません!」

「そうか、では付いてくるがいい」 


 でもウマイに裸になれといわれたときは、羞恥心に手が震えるたようですね……

 ウマイ女神はスケベですからね。


 全身を羞恥に染めて真っ赤になっている四人は、突然に周囲が変わったことに驚きました。

「一緒にお風呂にはいりましょう、私も脱ぐわ、裸のおつきあいです」

「皆さんには、私の背中でも流してもらいましょう」

 と、女神はいいながら自らも服をさっさと脱ぎます。


 ゲレルトヤーは息をのみました。

 神々しいばかりの裸の女神が目の前にいるのです。


 結局、四人は女神と一緒に湯船にはいり、女神の体を洗うという栄誉にあずかったのです。

 でも、内心は少しばかりガッカリした四人、なにかあるとのではと期待したりして……


 でも女神の言葉に次の目標を決めたようです。


「巫女として五年間勤めてください」

「その後もし望むなら、肉親の情を断ち切れることを条件に女孺(にょじゅ)といたしましょう」

 

「ねぇ、ゲレルトヤー、私は五年後には必ず女孺(にょじゅ)になり、女神様のお側に仕えるわ!」

 柔然巫女のアルーン(モンゴル語で純潔の意味)が云ったのです。


 アルーンの言葉が全てを物語っています。


「私もよ!女孺(にょじゅ)になり、いつかご寵愛をいただくの!」

 ゲレルトヤーも同意しました。


 突厥巫女のセーハン(モンゴル語で美しいの意味)と高車巫女のエルドゥン(モンゴル語で宝の意味)も頷いています。


「皆も同じ気持ちのようだけど、これからは同じ巫女として仲よくしない?」

「誰かがご寵愛をいただいたら、その者は皆がご寵愛いただけるように努力をするの」


 首席巫女のゲレルトヤーの提案に、三人は同意したようです。


「ゲレルトヤーは首席、私たちの指導者、これからも宜しくお願いするわ♪」

 エルドゥンがこのようにいうと、アルーンが、

「そうよね、ゲレルトヤーが私たちの『長女』と認めるわ、宜しくお願いね♪」


 セーハンも、

「私、頭が悪いから、どうすれば女神様のお側に仕えることが出来るか不安だったの、ゲレルトヤー、見捨てないでね」

 こうしてゲレルトヤーは巫女たちの『長女』となったようです。


 契丹が脱落したクリルタイの決勝は巴戦となり、壮絶な戦いの果てに突厥が勝ったようです。

 突厥の族長、ビルゲが大可汗になり、祭典クリルタイは無事に終わりました。


「ゲレルトヤー、帰るとするか」

 族長ヤリュート・チルクが声をかけました。

「そうですね、亡きお父様、お母様のお墓に、ご報告しなければなりませんから」


「そうだな、巫女の第一人者となったのだからな」

「しかしお前を妻にと望む者が多いが、二十歳になり巫女をやめたらどうするつもりだ?」


「他の巫女の方とも話したのですが、出来るならばそのままウマイ様にお仕えしたいのです」

「おじ様、今は亡きお父様、お母様の代わりに、お許しをいただけませんか?」

「そうか、分った」


 ヤリュート・チルクは言葉少なく了承しましたが、姪の言葉に一瞬寂しい顔が浮かんだように、ゲレルトヤーには見えました。


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