第五章 崔千秋の物語 仇討ち

母娘三人女婢となる


 崔千秋の父親は武科挙の進士だったが、盗賊に襲われ殺された。

 母は犯され兄も殺され、妹は手首を切り落とされ、そして自身も目を潰された、崔千秋十三歳のときだった。


 残った一家は、王母娘娘(わんむーにゃんにゃん)に救われたが……

 崔千秋は敵討ちを、心の底に秘めていた……なんとか自分の手でと……


     * * * * *


 崔千秋はひもじさに動けなくなり、崋青州のとある街の郊外の、崩れかけた廃屋で、妹の白秋と抱きあっていました。

 母親の葛丹秋は、朝から物乞いに出かけています。


 母娘三人、惨めな日々を過ごしていますが、何とか生きてこられたのは、母親の物乞いのお蔭……

 ただ崔千秋は、母が何をして食べ物を手に入れているのかは、薄々理解はしています。


 崔千秋の父親は武科挙の進士、去年、崋青州青天に赴任途中に、盗賊に襲われ父と兄は殺され、母はその時強姦された……

 これが崔千秋が見た、最後の景色だったのです。


 妹の白秋も、この後手首を切り落とされたようで、悲鳴が千秋の耳にこびりついています。


 いまにも殺されるかと思ったとき、県尉が通りかかり、盗賊は逃げ去ったのです。

 しかし県尉が去ると、その後残っていた財産は、使用人に根こそぎ持ち去られたのです。


 母は父親と兄の遺体を道端に埋め、近くにあった廃屋に住まい、二人を守ってきたのです。


 一年が過ぎました……


 朝から出かけていた母が、帰ってきました。

 幾種類かの点心を抱えています。


「千秋、白秋、私たちはある方の女婢になることになりました……もうこのままでは、食べることも出来なくなったの……」

「お母様……私たちでは……」


「その方はかまわないとおっしゃいました……私も一緒よ……」


「お母様……もういいではありませんか……」

「まだよ、お父様を弔うまでは……」


 このような会話を交わした後、母娘三人は楊回という方の宿舎を、訪ねることにしたのです。


 宿では何もいわれずに、離れに案内されました。

 誰かが母と話をしています。


「楊回様……殿方と思っていましたが……私たちを女婢としてご購入ください……」

「代金はどうしますか?」


「できますれば、亡き夫のお墓を……」

 亡骸の場所を聞いた楊回様は、善処すると約束しています。


「さて、二人の娘、私がお前たちの主である、母とともに全てを捧げてもらう、三人ともまずそのシラミだらけの服を脱ぎなさい、逡巡は許しません!」

 母に服を脱ぐのを手伝ってもらいながら、二人の娘も裸になりました。


 この楊回様が、実は王母娘娘(わんむーにゃんにゃん)様。

 二人は体を治していただき、母ともども女婢と成ったのです。


 五年後、崔千秋は十八歳を迎えました。

 今では王母娘娘(わんむーにゃんにゃん)様の、夜に侍る女になっています。

 五年の間に、千秋は無駄のない引き締まった体となっていました。


「千秋、いい体ね、そそるわね……」

 ベッドで娘娘(にゃんにゃん)様が千秋を抱いています。

 

 ことが終わり、千秋が娘娘(にゃんにゃん)様に、

「娘娘(にゃんにゃん)様、少しお教え願いたいことがあるのですが……」



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