ウマイ様、お慕いしています。
見たこともない移動機械が、エルゲネコンの全ての建物、トレーラーハウスと呼ばれる物を引っ張っています。
ウマイがアイハンさんに、
「郊外に臨時の野戦病院を開設しなさい」
と命じています。
殿方用にエアーテントの病院と、多数のシャワーテント、浴室テントなどを設置しました……
契丹の負傷兵は完治するまで、ここでのんびりすることになったのです。
とにかく女手が足りませんので、四人の巫女達も手伝うことになり、ゲレルトヤーも負傷者の為に看護婦まがいのことを……
エルゲネコンに所属する、女神に仕える女官たちも動員されています。
「ウマイ様、そのようなことは私たちにお任せ下さい!」
アイハンさんが困惑気味です。
ウマイ女神、なんと負傷者の為に炊き出しなんてしているのです。
「良いじゃないの、契丹の皆さん、勇戦したのです」
「私の民の為に戦った勇者、そんな方々に女としては手料理位しか出来ませんからね」
なんていっていますがとんでもない豪快な料理、羊の丸焼きを幾つも作っているのです。
サバイバルナイフで羊を解体したりしていますが、そのナイフはかなりの大型、ブレードサイズも二百五十ミリはありますね。
握りの部分を含めると四百ミリ、さすがにウマイの持ち物、漆黒の刃で、羊の肉や血糊で切れ味が劣る事はありません。
そんなナイフを使っての解体、遊牧の戦士たちはその見事な手さばきに見ほれているようです。
ゲレルトヤーもウマイに魅入られています。
「ゲレルトヤー!ウマイ様のお手伝いをしなさい!ほら他の三人も!」
アイハンさんの叱責が飛んできました。
「あら、確か貴女は契丹の巫女さんね、ゲレルトヤーさんといったかしら、そちらは突厥巫女のセーハンさんと高車巫女のエルドゥンさん、それに柔然巫女のアルーンさんね、手伝ってくれるの?」
「はい」
「じゃあお願いするわ、そういえばナイフがいるわね」
そういうと、小ぶりのサバイバルナイフを取り出しました。
『ガーバー ベア グリルス』という銘柄、刃渡り百二十二ミリ、黒光りするブレード、握りなどにオレンジのラインが入った物です。
「切れ味は良いはずよ、附属のダイヤモンドシャープナーで刃を研げば、一発で切れ味が戻るわよ」
重さは三百八十八グラム、四人でも扱える物です。
四人は下賜されたナイフで、ウマイとともに焼き上がった羊を切り分け、負傷者に次々と手渡していきます。
「上手いわね」
「遊牧の女は羊ぐらい裁けますので」
ゲレルトヤーの返事にウマイはほほえんだのです。
どきっとしたゲレルトヤーです。
すると、突然ウマイが四人を抱きしめたのです。
「ありがとう、私の巫女なんてなったら、男と恋することも叶わない、こんなに綺麗な乙女が……申し訳ない……」
偽りなき本音でしょうが、よくいいますね……
その綺麗な乙女を裸にして、お風呂に一緒にはいったのですよね。
大体五年後に女孺(にょじゅ)になれっていったのはどこの誰?
ウマイに抱きしめられ驚いた四人でしたが
「私たちはウマイ様に、一生お仕えしようと話し合っておりました、ウマイ様の巫女になれて私たちは幸せです……」
「ウマイ様、私たち四人はお慕いしています……」
「そう……ありがとう……時々あいましょうね、お風呂も一緒に入りましょう」
やはりね、馬脚を現したというか……でも、どうやら四人の巫女をウマイは気に入ったようです。
その証拠に、特例で四人はエルゲネコンに部屋を与えられたのです。
もうこれは最低でも女孺(にょじゅ)は確実、女官長のアイハンさん以下、エルゲネコンの女達は確信しています。
趙との争いが終わり、四人は次の巫女に引き継ぎを済ますと、四人は念願の女孺(にょじゅ)なりました。
そしてある日、ゲレルトヤーは側女に昇格、エルゲネコン蒼天宮の『ウェイティングメイド』を命じられます。
あっ、そうそう、ヤリュート・チルクは柔然の村を救援した功績をウマイに称えられ、ウマイが使った大型のサバイバルナイフが下賜されたのです。
今でも契丹族の宝物として、族長が身につける事になっています。
FIN
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