楊回様直伝は代価が必要
「なあに?」
「どうすれば強くなれるのでしょうか?」
「強く?」
「分かりよくいえば武術で強く……」
「武術ね……たしかお父様は武科挙の進士でしたね……」
「はい、父や兄のように……出来たら達人になれればと……」
「基本的に体力がね……やはり徒手空拳は無理ね……敵討ちしたいのでしょう?」
娘娘(にゃんにゃん)様はお見通しのようです。
「相手は一人じゃないのよね」
「盗賊団は三名でした、女が二人、男が一人、その男が母を……」
「えっ男は一人だけ?」
「はい」
「一人一人闇打ちでもいいの?」
「かまいません」
しばらく考えていた娘娘(にゃんにゃん)様でしたが、
「手裏剣術ね、あと念のためにムエタイを教えてあげるわ」
何を思ったのか娘娘(にゃんにゃん)様、千秋の額に手をかざします。
うっすらと輝く手から、知識のようなものが千秋に流れ込んできました。
「これで極意は飲み込めたはず、でもね、体力などは追いついていませんから鍛錬しなさい」
つまりノウハウは理解できたので、それに見合うように体を鍛えなさい、ということのようです。
以来、千秋は体を鍛える毎日です。
基礎体力、敏捷力、握力などなど……
「千秋、貴女は娘娘(にゃんにゃん)様の夜に侍ることが第一なのよ、そんなに腹筋が割れたら女の魅力がなくなるわよ!」
母の葛丹秋の忠告ですが、やはり娘娘(にゃんにゃん)様の加護がかかっているのでしょうね。
皮膚の下は脂肪ではなく筋肉になっている千秋、スレンダーな肉体なのです。
「でもお母様、お姉さまはスラッとされていますが?」
「腹筋なんて見えないじゃないですか?」
「女はね、柔肌でなければならないの!」
「千秋の体を触って見なさい、とても堅いじゃないの!」
いわれて、おずおずと白秋がお腹など触っています。
「本当だ!カチカチじゃないの!」
「千秋、体を鍛えるのはいいけれど、ほどほどにね」
「いまにその胸も筋肉になるわよ、もっとも胸の脂肪がなくなっているようだけど……嘆かわしいわね……」
たしかに千秋のバストは、妹の白秋より小さいようです。
「……」
「お姉さま、娘娘(にゃんにゃん)様は巨乳が大好きと聞きましたわよ」
「その胸では、まずいのではありませんか?」
白秋は見事な胸を持っています。
形もよく美乳と称すべきで、これは母親にそっくりです。
「仕方ないでしょう!お母様の胸は、全て白秋がとっていったのでしょうから!」
娘娘(にゃんにゃん)に教えていただく以上、それなりの代価を支払うことになった崔千秋、本人はそのあたりについては理解していないようです。
しかしこの三人、仲が良いようです。
代価を支払った?せいか、千秋は急速に腕を上げていきます。
特に手裏剣術はクレー射撃の標的にも百発百中、威力は電話帳ぐらいの標的に、刃の根本まで突き刺さっています。
ムエタイもかなりのもので、狙った場所に膝蹴りなどを決められるようになりました。
ただ威力はまだ心もとないようです。
でもブロックぐらいは割れるようですよ。
一人は男、股間に直撃すれば楽勝でしょうね。
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