盗賊団の本部にて


 永勝から青天への街道から、小さい集落に通じる小道があります。

 その途中に、猟師ぐらいしか知らないきわめて狭い道、獣道といっていいような道に沿って、ポツポツと小屋がある、そこの奥が盗賊団の本部のようです。


 ……盗賊団というだけあって、見張りがいますね、お手並み拝見ですか……

 崔千秋の手裏剣が、的確に見張りの眉間を貫いています。

 ……だめじゃないの?それでは遠距離攻撃が得意と、知らせるようなものよ……


 アイハンさんが倒れている死体から手裏剣を回収、死体の眉間を踏み潰しています。

 文字通りですから、手裏剣の後などありません。


 ……さすがチーフウェイティングメイド、『タクラマカンの冷酷女』――拙作、ミコの女たち1 第二章 アイハンの物語 タクマラカンの冷酷な女 を参照されたい、By作者――という二つ名は伊達じゃないのよね、……


 二人は見張りを幾人か潰し、盗賊団の本部らしき場所にたどり着きました。

 ここにも先ほどのように、小屋が二三軒建っているだけです。


 盗賊団はいないようで……

 でも無かったようで、そのうちの一軒に人がいるようです。

 その一軒に、二人の女が戸をたたき、声をかけました。

「誰かおられますか?」

 

「誰だ!」

 崔千秋の声に反応したのか、細身の女が顔をだします。

 この女、全身傷だらけですが、よくよく見ると目鼻立ちは整っている女です。


「私は崔千秋と申します、貴女の命を貰いに来ました」


 !


 云った瞬間に、千秋の膝蹴りが鳩尾に決まります。

 一瞬、女は呼吸が出来なくなり、そこへ千秋の回し蹴りが後頭部に決まり、簡単にけりが付いてしまいました。


 小屋の奥には、何人かの女たちがいるようです。

 どうやら、さらわれた娘なのでしょう。


 ……なに?弱すぎじゃないの?膝蹴り、回し蹴りで終わりなんて……あれ、この女は……


「ここでなにをしている!」

 背後から声が聞こえ、その瞬間、両手を重ねて下から突き上げる四把捶が、千秋の胸元めがけて飛んできました。


 千秋のエルボーパッド(肘あて)がそれを防ぎますと……

 爆発反応装甲ですからね、女の両手は吹き飛んでしまいました。

 この女、妹の白秋の手首を切り落とした女、因果応報、倍返しですね。

 

 ……大したことはないか……手首から先がなくなったみたいね……あっっっ死んでいるわ……


「エルボーパッドの威力って凄いわね……まぁウマイ様の手作りだから……」

 アイハンさん、物欲しそうです。


 暢気なことをいっているアイハンの背後から、突然、手裏剣が飛んできます。

 間一髪で交わしたアイハンさん。


「部下になめたことをしてくれているようだが、覚悟は出来ているのか!」

 細身の男が、槍を手に持ち、怒気を発して立っていました。


「これは驚いた、気配が分からなかったとはね、でも貴方の相手は私じゃないのよ、この娘が貴方に用事なの」


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