雪梅(シュエメイ)を拾った……


「よくやったわ、思ったより簡単でしたね」

 アイハンさんがねぎらいの言葉をかけていますが、褒めているのか……


「ところでこの女、どうする?」

「逃げられぬように足は折っておいたけど?」

「盗賊団の一人、ここで殺します」


 骨折の苦痛に耐えながら、成り行きを見ていた女が、

「私は盗賊団ではないぞ」


「えっ」

「盗賊団の一人はお前とやりあう前に倒した」

「小屋に死体が転がっている、さらわれていた娘たちに聞けば分かる」


 女の云うとおりでした。

 小屋に転がっている死体は、敵でもある女盗賊の一人だったようです。


 女は雪梅(シュエメイ)といい、このあたりの凄腕の女猟師でした。


 イノシシを追いかけていたら、小屋にさらわれた娘たちが監禁されているのを知り、助けようと小屋にいた女盗賊を切り捨てたところに、千秋たちがやってきたようです。


「てっきり、仲間か買いに来た女牙人と思った」

「殺してやろうと戸をあけたら蹴り上げられた」


「えっ、ごめんなさい!」

 平謝りの千秋とアイハンさんです。


「別にいいんだ、私も間違えて殺そうとしていたから……」

 アイハンさんが、

「面目ない、足は直ぐ治そう」


 アイハンさんが、雪梅(シュエメイ)さんの足に手をかざし治療をします。

 アイハンさんは中原三宮のチーフウェイティングメイド、チョーカーによる治療を出来るぐらいの資格を持っていますので、見る見る足は治りました。


「この盗賊団には莫大な懸賞金がかかっている、それを貴女のものにすればいいので許して欲しい」

「それはありがたいが……貴女たちは西岳崋山白雲宮の方か?」


 まあ、簡単に足の骨折を治せる女なんてね、西岳崋山白雲宮の女以外ありえないですからね。


「……そうですが……」

「かなうならば私を娘娘(にゃんにゃん)様の女婢にして欲しい!」

 どうやら雪梅(シュエメイ)さん、女の身での猟師生活に嫌気がさしていたようです。


 ……


「娘娘(にゃんにゃん)様の女婢ですか……覚悟はあるのですか?」

「身も心も捧げることと聞いている、命じられれば死も受け入れる、夜伽の話も聞いている」


 ……


「しかし……」


 ……仕方ないでしょう、不手際はこちら、よく見れば美味しいかも……アイハンさん、望みどおりにしてあげなさい……


「よいのですか?私は反対です、また女を拾ったとかいわれますよ、私は反対しましたからね!」


 ……その女は人攫いの盗賊団殲滅に尽力したのです。

 信賞必罰でしょう?

 アイハンさんは反対した、私が聞き入れなかった、そういうことですよ。


 その女の望みをかなえる以上は、貴女と千秋にも褒美が必要ですね。

 ニーパッド(膝あて)とエルボーパッド(肘あて)に興味を示していましたが、それらを組み込んだボディアーマーなんていかが?……


「分かりました、ご褒美はそのボディアーマーをお願いします!」


 で、雪梅(シュエメイ)さんは王母娘娘(わんむーにゃんにゃん)さんの女になったわけです。


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