ケッテンクラート改


 『ケッテンクラート改』は、小型電動式ガトリングガン砲塔を牽引しながら、草原をのんびりと進んでいきます。

 ウーラポーセンは格子ですから、当然メイドが使える『カバンシステム』も使えます。


 ……『カバン』があれば不便はないし、20日も休暇をいただけたし、のんびりと行くか……


 西のグルギュト砂漠までは120キロほど、砂漠に分け入り、隊商路を70キロほどいけば、ウルグ河のほとり、その川沿いを北へ30キロほどで、故郷のトシャゴウ村です。

 

 ……距離にして220キロ、大した事はないが、昔は馬とラクダを乗り換え、大変だったな……

 そもそも道中はオオカミの群れに襲われるし、いまも盗賊は跋扈しているようだが……


 事実、グルギュト砂漠まで、ウーラポーセンは半日かかったのです。

 途中でオオカミの群れに襲われ、小型電動式ガトリングガン砲塔が反応、かなり遠距離から連射、あっというまに殲滅したのはいいのですが、結構時間を取られたのです。


 このままキャラバン・サライ――隊商宿――で一夜を過ごし、グルギュト砂漠を70キロ走破して、ウルグ河のほとりに出ました。

 『ケッテンクラート改』は、この気温40度をこえる難所を、何事も無く、二時間ほどでウーラポーセンを運んだのです。


 ……グルギュト砂漠はやはり暑いな……ここまで暑いとクーラーが欲しい。

 簡易式の日よけシェードが付いているけど、砂漠では役に立たないか……

 まぁパネル式で、最高速にでも耐えられるけど、せいぜい日よけ雨よけというところか……


 グルギュト砂漠を行くというと、事務局が持ち出してきた『ケッテンクラート改』、使い勝手のチェックを頼まれたけど、この点は報告が必要か……

 機械的には問題なし、でも乗るほうが持たない……


 ウルグ河のほとりで休憩した後、のんびりと川沿いの道を『ケッテンクラート改』は走り、昼前には故郷のトシャゴウ村にたどり着いたのです。


 トシャゴウ村のあたりは、ウルグ河が湾曲しながら作る渓谷の中にあり、ちょっとしたオアシスのようです。


 その小さな渓谷に村人は作物を作り、渓谷の外、ウルグ河沿いに、ささやかに羊の放牧場をつくり、生活しています。

 グルギュト砂漠のなかにある、珍しく緑豊かな場所なのです。


 ウルグ河はトシャゴウ村のある渓谷を抜けると、徐々に干上がり、最後はグルギュト砂漠に消えていくのです。


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