夢に見るのは幻か…… 其の二


 ふと、

「ねえ、私、近頃夢を見るのよ、とても恥ずかしい夢なのだけど、お二人は私の昔のことを知っている方、だからこの夢は何の意味があるか、教えていただけません?」


「夢?恥ずかしい夢って、あちらの話なの?」

「あちらといえば、そうなのだけど……」


「どんなに恥ずかしいといっても、私たち、もう十分に恥ずかしいことを見せ合った間じゃない、今更でしょう?」


 陳麗華は、毎夜同じ夢に悩まされているというのです。

 

 夢とは趙の都、陽城が陥落し、我が身が遊牧民の族長たちの前で全裸にされ、あざけりを受けるというのです。


「でも陽城は包囲こそされ、陥落はしていないのよ」

「しかし陥落したあと、陽城は遊牧民のいうところの屠城にあい、男は子供といえ皆殺し、女は犯されたのち皆殺しとなった」

「美しい女だけが、遊牧民の娼婦にされる……族長たちの前で値踏みされるの……」


「その後、戦乱が終わり、流産した私は、ウマイ女神様の御前に引き出されて、乳房を握りしめられ、『私の為に母乳でも出してもらいましょうか』と搾られたの」


「勿論吸われたわ、その後、母乳まみれになりながら、逝かされた……」

 というのです。


「……よく分からないわ……後半の話なら理由は分かるけど……」

 申容姫が口を開きます。


「後半の話?」

 

「つまり天仙娘娘(てんせんにゃんにゃん)様に抱かれたいという願望よ、それなら私も見るわよ」

「娘娘(にゃんにゃん)様に大事な所を壊される夢なんて良く見るわ、きっとこの体をめちゃくちゃにして欲しいと思っているからと理解できるわ」


「申容姫様も?」

「そうよ、娘娘(にゃんにゃん)様に抱かれたいと体が悶えるのよ、皆さんもそうでしょう?」


「私も夜毎、夢を見るのよ、私の夢は自決する夢なの、遊牧民との決戦で侍衛馬軍が壊滅し、私は兄から陽城から逃げるようにいわれ、侍衛歩軍とともに江南に逃げようとしたとき、遊牧民の軍に見つかって、兄は命ほしさにウマイ女神様に息子の首と一緒に私を献上したの、そして私は自決した、そんな夢よ」


「香玉、それは吉夢ですよ、自決する夢は再生を意味するのよ、いままでのつまらない人生から、もっと素晴らしい人生に変わる、そんな意味なのよ」


「確かに云われれば人生は良くなった、天仙娘娘(てんせんにゃんにゃん)様に抱かれ、世界が広がったのですからね、大吉夢ですよね」

 

「じゃあ私の夢は?」

「後半はやはり願望でしょう、ただ前半はね……確か多くの人が死ぬ夢は、これから運勢に大変動が起こるという夢でしょう」

「これは実現しているのはわかるわよね、でもね、犯される夢は、なにか不安があるということらしいのだけど、いま不安などあるの?」


「思い当たらないわ、天仙娘娘(てんせんにゃんにゃん)様の女婢になってから身も心も満たされているし……過ぎたことは悲しいけど、明日を思うと、不安は感じないわ……」


「でしょう、だから意味などないのでは?単なる意味のない夢」

「あえていうなら娘娘(にゃんにゃん)様に抱かれなければという不安、焦燥感ではないかしら?だとすれば後半の意味とつながるわ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る