魔鏡の力


 敵は大軍、多分五万はいそうです。

 少数の契丹兵を侮り、組織的な行動などとることもなく、ただ掛かってきました。

 契丹兵は馬蹄で蹴散らしていますが、多勢に無勢、徐々に劣勢になり始めます。


「族長!皆を私の周りに集めて!『魔鏡』の力を発動します!」

 ゲレルトヤーが、渾身の力を『魔鏡』に篭めます。

 『魔鏡』が不気味に赤く輝き始めます。

 

 何かの力が草原を包み込み始めました。

 そしてウマイ女神の神罰が、趙帝国の廂軍に落ちたのです。


 稲妻が空から落ちてきます。

 大地に突き刺さると、大地が割れ、そこより無数の小さい竜が出てきたのです。


 テラでいうところの小型肉食恐竜、寐龍(メイ・ロン)と呼ばれるもので、二本足で歩く鳥ですかね。

 無数の寐龍(メイ・ロン)が、趙の廂軍に襲いかかっていきます。

 

「ゲレルトヤー……あれは……」

「ウマイ女神さまの神罰です、あれは人を喰らう、悪しきものです」

 ヤリュート・チルクにゲレルトヤーが説明しています。


 寐龍(メイ・ロン)は猛威を振るいます。

 目を啄ばまれ、足を喰われ、中には骨になっている者もいます。

 

 趙軍は恐慌をおこし、敗走を始めたのです。


 どうやら趙軍は略奪目的で、柔然の村を襲ったようで、多くの住民は無残な死に様、特に残っていた少女たちの遺体は……


「おのれ!趙の奴ら!この村と同じこと、奴らの街でをしてくれる!」

 ヤリュート・チルクの言葉は、この場に居た契丹族全員の言葉でした。

 

 ゲレルトヤーは命がけで『魔鏡』の力を発動、何とか命までは失うことは無かったようですが、体はフラフラ。

 それでも戦闘の中で治療したりしたものですから、あちこちに傷を受け、柔肌に血がこびりついた状態です。


「おじ様、まずは治療しますから、静かにしてください!」

 契丹族もかなりの犠牲者がでています。

 無傷で生き残った者はほとんどいません。


「お前自身の治療をせよ」

「私は軽傷、大したことはありません!それよりおじ様は手を折っているではありませんか!」


 ヤリュート・チルクの骨折を治し、他の負傷者を必死で治療している時、ウマイ女神が現れたのです。


「ゲレルトヤー、後は任せなさい、よく頑張りました」

 ウマイは全ての負傷兵を治療するイメージを発動、柔然の集落の人々も含め、約半数の人を死の淵から呼び戻したのです。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る