取材六

 友人のラムーからラインメールで、週刊女性が取材をしたいとなった。

なぜラムーの床屋へ週刊誌が現れたのか。以前のテレビ放映で知ったのかと思った。このごろ取材依頼をラムーからのメールで受けている。以前はエッセイ本を出版しているため、出版社からの依頼が主なので、そちらからならわかる。近年は取材ルートが変わって来そうだ。それにブログも執筆しているため、そこからもある。

 取材日が二〇一九年八月十四日だったので、さくらの一周忌とすぐにわかった。取材といっても、一年たった思いはどうなのかという程度だろう。

 ラムーからのメールの時、日も暮れかける六時ごろだったので、晩酌のお茶割を飲んでいる。店で飲みながらというので、もちろん受けることにした。

ちびまる子の場合、キャラクターの取材は難しい。花輪、野口、丸尾、穂波はNGだ。今回は徳ちゃんと、かよちゃんまでダメ。さくらの親せきはもちろん受けない。取材陣が清水へ行けば何とかなるはない。それでみんな困るのだ。

いつもだれも受けないので、ぼくのみ受けている。そんな事情もあるし、本の出版もしている。ブログ執筆でさくらのことも取り上げている理由もあるからだ。それだけちびまる子の取材はかなりの困難だった。いくらぼくを通しても、たまちゃんや野口は無理となり、そちら側からとめられていた。ぼく的には、ファン側からの客観視、キャラクターはどんな人物なの? とわかるので、本音は出てほしいと思っている。

 一時間後、I記者が待ち合わせの公園に来るまでやって来た。「富士山」ナンバーだったので、初めわからなかった。

 車から出た時、あいさつを交えた。どうもレンタカーのようだ。なんとタレントの有吉に似ている。助手席に乗り、ここから近いガストへ案内をした。

 店に入ると何を飲むか聞かれ、この前一人昼のみのハッピーアワーで、ハイボールが濃いことを知り、それを頼んだ。彼はジュースだ。

 ぼくがまず、なぜラムー理容へ行ったのかという経緯からだった。

 するとどこへもアポなしで清水に来たとのこと。前日にさくらの一周忌をわかったとのことで取材をすることになったという。それにしても藪から棒だ。キャラの取材は難しいというのに。

 有吉似のI記者にすれば、ぼくへたどり着いたことはうまく行ったことになる。

それならなぜラムーがちびまる子の関係者とわかった? すると入江小学校を取材していて、その辺の人に聞いたら、ラムー店が有望となったらしい。突如の取材で床屋はお客がいるし、彼も困り、数時間後に来てくれとなった。その後、ぼくへとバトンが渡ったわけだ。事件なら週刊誌のアポなしはわかる。でも文化的なことは、会社の看板を背負うからまずいだろう。

 そして取材となった。ちょうど参考となる、かよちゃんの手紙を持参していたので、それを見せた。見せるだけと念を押したのにスマホで撮影した。「出しません、参考ですよ……」という。

 それならいいが、週刊誌は油断できない。かよちゃんへのさくらの絵は、たしかにネタになる。自分もそうだったから。

 ハイボールがなくなると、また頼む。そしてまたハイボールと。

テンションは上がるというか、ろれつが回らなくなった。

 そして空白タイムとなった……。

 バイクの音で目覚めた。そこは倉庫の前か? どこだここは、と辺りを見回せば、どうも農協の軒下にいた。頭が痛い。

 そういえば大雨が降ったことを微かに思い出す。そのまま寝てしまったらしい。なんてこった。路上寝は何年振りかと……。

 テンションはもっとも低く、重い足取りで自宅へ帰った。早朝なのに二階のテレビはうるさかった。

 スマホを取り出すとI記者のラインメールがあった。「自宅へ帰りましたか」と。午前一時台である。いつの間にライン交換をしたのか。今後のやり取りで勝手に入れられたのかもしれない。

 軒下の路上で寝てしまったことをメールへ送った。帽子もなくしたらしい。

 その後、農協の周辺には帽子はなかった。I記者はアパート前へ送ったという。それなら自宅へ入るだろうしなぜかと聞くと、とても酔っていたという。自宅を間違えて教えていたのか。

 その後はライン取材となり、記事内容の方向性が、さくらへの寄せ書き集めの記事となったのだ。

 エスパルスドリームプラザの、ちびまる子ちゃんランドへも行くという。ぼくは会社ではないので、取材はアポを入れないで向かう。

彼は会社員だ。たぶんまる子ランドへもアポを入れていないだろう。ランド店長へ連絡するとやはりしていない。会社は入れないといけないといっていた。

 その後、I記者は穂波へダメもとで向かいたい。電話番号を教えてほしいという。が、彼女を売れないので断った。かよちゃん、徳三も断られた。ほれなと。もし同級生のラムーに会っていなければ、まる子ランド以外、すべてがダメだったのではないのかと。写真を要求された。迷ったがブログへも掲載したりする。その場で撮影しラインで送った。

 そして原稿をラインで読んだ。ぼくの職業がフリーライターとなっている。職業など聞いてこなかったはず。電子書籍ライターの方がよかった。それとさくらとの電話で、億万長女、と書いてある。

そんなことを電話のシーンでは話していない。それはガンとなり民間療法での話し。億万長者なのですべての民間療法を行っただろう、それなのに亡くなった。人間の死は決まっていたのかと、そんなことを伝えたはず。でも執筆者は脚色をする。それはぼくでもするので、脚色された、を納得した。

そして火曜の発売日には、数冊を送ってくれた。一冊でいいのにと思った。週刊誌って結構な値段で四百円もする。女性誌なので美容院や医者にはいいだろう。ただ男性はほぼ読まないと思った。

I記者はたぶんヤフーニュースにも出るという。すると記事は掲載された。どしどし行く記者なので、そんなことがいい方向へとなったのかもしれない。まあ、週刊誌も一過性だ。通り過ぎればただの紙きれ、なわけはない。ずっと残ってしまった。

I記者は四十八歳という。その年齢なら編集次長くらいのポストではないだろうか。まだ経歴は二年半の中途入社だ。でも前職が書店営業というなら、つながりがあるので今後も取材が嫌にならないだろう。頑張ってくれ。


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