ドライバー

車を運転するのは小学生の時から憧れていた。ぼくは免許証を早く欲しかった。

十六歳の時、免許証欲しさに原付き免許を取得した。しかし、ペーパードライバー。そして二年後、自動車免許を取得した。この頃、免許を取ったら配送の仕事をしようと考えていた。

取得時、車を買えないため仕事で車に乗ろうとしていた。

そして、今の呼名ハローワークで砂糖配送の仕事をみつけた。二トントラックでの配送だ。トラックは乗用車より高い位置に座席があり、見晴らしが良く偉そうな感じになる。

二トントラックはそんなに大きくないが、初日はやはりビビッた。二、三日は慎重な運転だった。だけど慣れると、仕事は大変だが独りでやる仕事に満足を味わっていた。

この仕事は自由な感じだと。

なんたって車の運転ができ、給料がもらえ、独りでいられることが魅力であった。

一カ月後、砂糖配送を辞めていた。理由はギックリ腰になったからだ。砂糖の一袋は三十キロあり、日々弱腰に刺激されダウンしてしまった。

砂糖にやられた。

ぼくの腰痛はこの時からだった。まったく、十九歳なのに弱腰と悔やんでいた。

腰の症状が少しよくなり、小さな運送屋にアルバイトで入った。面接に行ったら、今日から頼むと言われ、ちょっと驚いたがその日から働いた。

この運送屋は自販機を設置する仕事で、独りの仕事ではなかった。設置は二人いないと出来ず、面接の日に頼まれた理由を知った。

 だが三カ月後に首になる。理由は無断欠勤をしてサーフィンをしたからだ。

二十歳の時、運送会社に就職した。二トン車で県内配送の仕事。一人での乗務だし、自分に合っていたので順調に働いていた。通信高校の勉強もなんとかやっている。

一年後、二トン車から四トン車への乗務となる。配送地域は県内と長野県を基本に、関東方面や名古屋方面と拡がった。そのため、夜間や早朝からの勤務があった。この頃から通信高校の勉強が遅れてしまった。

長野市に行くのに五、六時間掛かるので、どうしても夜間に走らなければならない。四トン車の座席の後方に寝台スペースがある。ここに小さい布団を敷けば寝ることは出来る。  

ぼくは清水を早く出発して現地でよく寝ていた。

寝台スペースと言っても、普通免許で乗れるトラックでとても狭い。(現在中型免許必要)

一七八センチの背がギリギリ収まる感じで、寝返りは出来ないに等しい。

早く現地に着くと、コンビニでビールとおでんを買いトラックの中でラジオを聴きながら、よく独りで飲んでいた。

そのラジオを聴いてると、『さくらももこのオールナイトニッポン』が流れていた。

「すごいな、さくらオールナイトのレギュラーになったのか」

オールナイトニッポンと言えばビートたけしの思いでが沢山ある中、さくらがオールナイトニッポンの枠で話しをしている。これには驚いていた。

十七歳の時、将来はたけしのようにビックになって、オールナイトニッポンのレギュラーになる。そして人気コーナーを作ってやる、と独りよがりで思っていた。まるちゃんはブームにもなり、さくらはさすがだ。

運送屋の話しに戻すが、運転が好きで始めた仕事だけど、毎日運転をしているとだんだん運転がおっくうになり始めた。休日は車に乗らず、自転車に乗っていた。

四トン車の寝台スペースのことで話し忘れたが、布団の下にはなんとエロ本を隠してあった。それをネタに自家発電もした。寝台は窮屈だったが、自分の生理にはかなわなかった。トラッカーにとって必需品かもしれない。

友人にもトラックドライバーがいて、長距離走行のため家にほぼいない。休日に遊びに行くと、寝ているので悪いと思い帰る。そんな感じで長距離のドライバーの友人とはなかなか会えなかった。

夜間走行は眠気に襲われる。暗い夜道をずっと走っていると、眠くなりハンドルが取られよくフラついた。夜間の中央高速道は、暗く道路しか見えない。

うっすら眠くなりフラフラしてガードレールを擦った事もあった。この時はハッと思い、ビビッて目が覚めた。今思えば事故をしたかもしれなかった。ぼくは神様に救われたのだろうか。

あとドライバーで困ることがある。それはトイレに行けないことだ。自分的に大小でいえば大の方だ。東京の首都高速の渋滞時、腹の調子が悪くなり大が漏れそうになった。この時、トイレのない首都高を恨んだ。何回も大の周期に襲われ冷や汗ものだった。なんとか漏らさず、大宮の倉庫までもたせた。こんなことが度々あった。この気持ちはドライバーの人達ならわかっているだろう。

少し変なイメージの職業ドライバーだが、地方の名産を食べれたり、きれいな景色を見れ道も覚えられるなど、少しはいい魅力もあった。



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