タバコ

近年、駅構内やファミレス、デパートや会社などではタバコが禁煙だったり、吸う場所が決められている。昔よりは世間がタバコに対して厳しくなった。アメリカが厳しいことはテレビで知ったがその影響かと思ったりもした。体に悪いのもあるが。

愛煙家にとってはとても追い詰められた感じで、片身が狭くなった。僕も以前タバコは吸っていた。だが何年も前に辞めた。

最初に吸ったというか、煙を口に含んだのが小学三年であった。小三時は登校拒否をしていたので悪さばかりしていた。車からサングラスを盗んだり、火遊びをしたりと非行少年でもあった。

 火遊びはマッチを家から持って行く。その時ついでに義父のタバコを二本盗った。

そして火遊びの時、タバコに火を付け口へ含んだ。だが煙りを吸う勇気がなくふかすだけだった。それは近所のおばさんに見つかり二、三回で終わった。

中学時は、まわりには吸っている者はいた。だが、僕は吸わなかった。そして初めて吸い出したのが高校一年時の夏休み。高校生になるとタバコを吸っている友人が多数いた。

友人の家に遊びに行くと必ず灰皿をまず出し、タバコを吸いながら世間話となる感じだった。

僕の場合、そろそろ吸えないとバカにされそうなので覚えた。タバコは一種のアイテムみたく、連れとの付き合いに必需品となっていた。

友人のカニエイは中学の時からマイルドセブンを吸っていたので、少し指導してもらった。当時一番軽いタバコはテンダーというタバコで、それをカニエイら何度も買えといわれていた。そして買って吸ってみた。すると一発で肺に入れることが出来た。

中学時代のブラスバンドで肺活量はある。それで吸えたものか。

少しくらくら来たが、むせなく吸えた。これがタバコか。吸えた時、カニエイの顔を見ながら喜んでいた。今から考えると何て下らないことだったのか、と。

こんな感じがタバコデビューであった。

その後、吸いなれると家でこそこそ吸っているのが見つかった。別に怒られはしないが、火の始末だけ厳重に言われ、とうとう公認で吸えるようになった。家で堂々吸えるので外では吸うなとなる。が、公園ではカニエイと吸った。

タバコを吸うと言っても僕は一日三本位で、カニエイは六、七本吸っていた。さすが中学二年から吸っているベテランだ。

でも僕が高校を辞める頃にはセブンスターを吸っている。かなりの昇格だ。カニエイはマイルドセブンからハイライトになっていた。『何だそのタバコ、オヤジ臭いな』と僕は言ったがカニエイは『高中がハイライト吸ってたから俺もそうした』と言っていた。

中とは当時カニエイが憧れていたギタリストの高中正義であった。タバコまで合わせるとは相当のファンだ。

東京に住んだ時は、生活苦から当時百二十円の『わかば』に格を下げた。吸った感じはまずくはなく、それでそれにした。カニエイが東京に遊びに来た時は、タバコを貰ったりもしていた。この頃にはタバコを常にサイフと一緒に持つようになる。今の携帯電話のように。

二十代頃はトラックドライバーで何時でもタバコが吸えた。そのため本数も増えて一日一箱を吸っていた。タバコ無しではいられない。カニエイはと言うと、何を思ったのか禁煙をした。理由を聞けば健康に良くないからと。タバコは正式には二十歳からなのに、二十三歳時に禁煙している。でも完全に辞められず、一年後には吸い出していた。

カニエイが禁煙している時、僕も影響を受け試したが六日目で吸ってしまった。彼はまだ禁煙続投中で大したもんだと思っていた。

僕は酒を飲んでると必ずタバコを吸いたくなる。飲酒中は本数も増える。吸うと酔いも早く回るため、酒とタバコの相性を考えると本当はよくない事だろう。だがその時はハイなため抑えが利かなかった。その翌日につけがくるのだ。翌朝はタバコを吸うと『オェっ』となり、昨日のハイテンションを悔やんだ。

水泳を始めた二十七歳頃から、息継ぎが辛いことからタバコの本数を減らした。そんな感じで二十代を過ごしていた。

タバコ本数が減った三十代は水泳を続けていて、バンドをカニエイ達と組んだ。まあ楽しい感じで三十代が幕を開ける。

数年経った、三十四歳の九月下旬の日曜日、友人らと飲みに行く。タバコは酒を飲むと増える。いつもと変わらず友人と楽しく飲んでいる。解散後も僕は家で二次会。古いビデオを観ながら飲んでいた。

翌日、起きると当然のように頭が痛い。でもいつもの二日酔いとは違った痛さだ。ドライバーはそんなことでは休めなく、痛いながら仕事をこなす。家に帰っても痛く、その日はタバコを一本も吸えなかった。

翌日、翌々日も頭が痛く、病気かと思っていたら木曜日に痛みが治った。この日までタバコは吸っていない。『よし、こうなったらタバコを辞めよう』と自分へ宣言。でも酒は辞めようとはしない。

頭が痛かったこともあり、ただ一週間は酒を飲まなかった。だが、とうとう飲みたくなり買って家で飲みだした。少し酒の期間を空けたせいか、うまくてすぐに酔いがまわり、いい気分となった。こんな時、タバコが無性に吸いたくなる。当然禁煙パイポをくわえてもダメ。

かなり酔った時、どうしても吸いたくなりタバコの自販機まで行く。金を百十円入れたところ、善の心が現れ、金をとっさに戻した。このとき酔っていながらも禁煙したのか、と思い自販機から遠ざかった。

翌日、タバコを買わなかったことへ自分を褒めたたえる。以前なら絶対に買っていたからだ。いつの間に強い意志がついたのか、不思議だった。

その後、家で酔うと、どうしても吸いたくなりまたタバコ自販機へ向かった。だが結局、自販機とにらめっこで終わった。そして一カ月間、まったく吸わない日を迎えた。

 その夜、自分へ焼酎で乾杯をしたが。そのころになると酔ってもタバコ自販機へは足を運ばなくなった。油断はできないと思い、タバコを吸う友人たちと飲む。そそのかされてもまったく吸わなかった。

二カ月経った時には、タバコを何も吸う気がおきず、むしろあんな煙りをよく吸っていたと思う。完璧にやめられた。頭が痛くなったのは、神や仏の指令だったのか。十五歳の夏から三十四歳の秋まで十九年間が僕のタバコ歴となった。今は三十八になり、いまだ吸ってないので今後も大丈夫だろう。


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