友人たちへ本を渡す
第二弾の本『はまじと九人のクラスメイト』(徳間書店)刊ができたので友人たちへ渡しに行った。
まず花屋の徳ちゃんからだ。徳ちゃんとは取材した時、久々に会ってそれ以来、メール友人になっていた。身近になりいつでも連絡が取れる。本以外に何かお礼の物を考えた。最近徳ちゃんは金欠のため大好きな酒を飲んでいないことを思い出し、純米酒を買って行くことにした。
真っ昼間ぼくは純米酒とぼくのサイン付き本を持って徳ちゃん家に行った。
花屋の入口に着くとちょうど、犬の散歩から帰って来た徳ちゃんの父と出くわし、酒を持って花屋に来たぼくへ怪げんな表情を向けた。
徳ちゃんを呼んでもらったが、父はぼくの行動を一部終始観察している。徳ちゃんにはお礼を言って純米酒と本を手渡した。その時も徳ちゃん父は見ていた。彼が純米酒を貰ったことにうらやましがっているのか。酒を狙っているのかもしれない。目線がそんなだ。
徳ちゃんだけ写真掲載がいいと言うことで、出ているページを見せた。彼はニコニコ笑っている。徳ちゃんありがとう。
次はここの家から近い野口のモデルへ本を渡そうと思う。本だけでは悪いから、野口家近所の追分ようかん大曲店へ入った。ようかんのお礼だ。
追分ようかん本店には取材で顔を出していたが、大曲店は初めて。なぜ追分ようかんをお礼としたかと言うと、地元の人こそなかなか食べないだろうと思う。人へ土産としてあげるが、自分でわざわざ買って食べるとは思えない。
店へ入り、ようかんセットにのしを付けてもらったら、それでも見た目がよくなる。丸尾のモデルにもと、もう一つ包んでもらう。それと編集の石井さんが食べたことないのを思い出し、御歳暮としてまた一つ包んで発送してもらった。かなりの出費になったが、ありがたかったので惜しまなかった。
特に埼玉県に住んでいる石井さんには食べてもらいたかった。
そして野口の家の前へ到着した。野口の家は平家で門がある。だが門が開かない。電話をせず突然来たので、野口はいるのかもわからなかった。何度も門を動かしても開かない。家に小さな明かりが灯っている。アニメの野口のように暗い感じだ。マンガでは兄がいたはずだが、実際はいないと思う。
その場で携帯を出し、掛けてみると本人が出た。この日は仕事が休みだったらしい。そして赤いちゃんちゃんこを着た彼女が現れた。まさに黒髪おかっぱの野口だ。本が出来たことを言ったら、『早いね、もう出来たの』と言っていた。本とようかんを渡すと喜んでいる。だが野口得意の『キュキュキュキュ』はない。その笑い方ならぼくは大喜びだった。そして少々世間話しをして別れた。
後日、野口は本の内容はおもしろかったよ、と言ってくれた。それに表紙帯びの野口絵を『はまじが描いた絵の方が私に似ているね』と言い褒めてくれた。
まさに、キュキュキュキュ。
そして、その足で丸尾のモデルの家に行ったら誰もいなかった。
翌日、連絡を取って丸尾の家へ向かった。彼の家は徳ちゃん家の隣で、近年まで洋品店を経営していた。小学時代の体操着やスクールコート、学生服などの販売店だった。
ぼくが着くと丸尾は外で待っている。本とお礼の追分ようかんを渡し、世間話しを弾ませる。丸尾の車が見当たらないことで、一体マイカーを持っているのかを聞いたら、持っているという。そして見せてもらうことになった。
立ち話をしていた目の前のシャッターを丸尾が開けたらなんと、ピッカピカのブルーのファミリーカーがあった。
「超きれいじゃん」
と思わず言った。彼は最近車を買い替えたらしい。もともと車を大切にし、洗車等を豆にするのが好きだと言う。小学校からを考えると、丸尾がまさかきれい好きとは思ってもいなかった。ちょっとでも汚れると、すぐ洗車をするという。丸尾の車の横に姉の軽自動車もあって、それもピカピカであった。
姉もきれい好きかと聞くと、姉のも丸尾が洗っていると言った。
彼の話しによると、姉は洗車などまったくせず、それを見兼ねて姉のも洗車するようだ。しかし姉のまで洗うとは相当、きれい好きの潔癖症なのか。
丸尾の容姿からはとても思えない。ぼくより年がかなりと更けて見えるからだ。
丸尾と別れた後、次はかよちゃんに渡そうかと思った。
彼女は忙しい女性で、なかなか連絡が取れない。携帯電話の番号も知らなかったので、いつものように家の固定へ電話した。するとかよちゃんが出た。
本が出来たので渡したい主旨を言い、都合のいい日を約束した。
出版前、出版社から五部しか本が送られてこなく、三人に渡していたし、一冊は東京に住んでいた時のアパートの大屋さんにへ写真掲載をしてもらったため送った。
これは最後の一冊だった。出版後、本を送ってもらえるがその前に友人達へ渡したかった。
かよちゃんとの待ち合わせは、午前十時に以前インタビューした公園だった。
行きにまた追分ようかんへより、お礼を包んでもらう。
前回と同じ静かな公園で待っていると、かよちゃんが愛犬とともに現れた。
相変わらず帽子を深くかぶり、今回はサングラスを掛けている。軽くあいさつを交わした後、本を渡した。かよちゃんはコーヒーと菓子を持って来てくれ、御馳走になる。そして彼女とのインタビューの箇所を読ませる。
するとすぐにダメ出ししてきた。インタビュー入る前にかよちゃんの紹介をしてあり、そこで会社名は出していないが職業名を『大手有名化粧品メーカーのチーフをしている』と書いたとこで怒られた。ぼくはなぜ怒ったのかわからない。ちょっと大袈裟のと、わざわざチーフまで書かなくてもと言うことだった。いまさら訂正が出来ない。繊細な彼女だったので、その場で謝った。
そしてまたハプニングが起こった。前回インタビューした時、彼女の愛犬ルルはひもを放した瞬間、素早く逃げ出してなかなか捕まらなかった。メスなのに凄く活発な犬だった。しかしまたルルが逃げた。ぼくはまたかとなる。
この日、腰を悪くしコルセットを巻いていて、犬を追いかけられる状態ではなかった。でも彼女がなにかと早く捕えることが出来たので、ぼくはホッとした。
その後、数分世間話しをして諸事情を彼女に納得してもらい別れた。その日もヨガに行くと行っていた。早くヨガ教室を開いてもらいたい。
次は追分ようかん本店だ。ここは写真掲載したので本を渡しに行く。ところで店など取材した人達は、わざわざその店へ本を持ってたり、送ったりするのか疑問になった。
ようかん屋へ入り、御主人に本の写真掲載の所を見せる。大変喜んでくれぼくもよかった。この御主人と話しをしていると、大体さくらの話題になり、彼女のことを偉大な先生と思っている。年下なのに。ぼく的にはどこが先生だと思い、いつもさくら話しの時は苦痛だった。ただ運がいいだけではないのかと。
常々世の中は努力もあるが、やはり運だ。ぼくが本を出せたのも運がよかった。
ようかん屋の女将さんも出てきてぼくとの話しに花が咲いた。女将さんはコーヒー飲むかを聞いてきたので、飲むと答えたら粉にもなっていないコーヒー豆を持ってきた。てっきりコーヒーをその場で飲むと思っていた。
豆は正直いらないので、いえ結構ですと返答した。するとぼくの心を読んだのか、『豆を粉にするのがないから、結構と言ったでしょう』と女将さんが言う。ズバリその通りだった。
すると女将さんは家の奥へ引っ込み、手動で豆を粉にする製粉機を持って来た。
それをよこした。なぜくれるのかと言うと、最近電動の製粉機を買ったから、この手動のはいらないという。これなら豆も粉にでき、コーヒーが飲めるのでもらった。今度はモー娘。の加護亜衣のポスターと画鋲でもプレゼントしようと思い、追分ようかん本店にお礼を言って出た。
次は花輪のモデルに渡しに行く。前回は花輪家の経営する病院でのインタビューだった。本渡しも病院へ行く。
そういえばハローワークへ行ったとき、花輪の病院が看護婦さんや介護員さんの募集をしていたので、それも聞いてみたい。面接者の箇所に花輪の旦那さんの名が書いてあった。
いっそのことぼくを送迎運転手として雇ってくれないかも聞いてみる。花輪の病院は日本平の中腹にあり、年寄りの方は通いが大変だから送迎運転手がいれば助かる。
病院に着くと売店に花輪はいた。早速、本とお礼の追分ようかんを手渡した。
前回より大分忙しい感じだ。ぼくと会話していると、すぐ電話が掛かって来たり、看護婦さんが花輪のとこへ話しに来たりと、なかなか話しをしてもらえない。一人椅子に腰掛け待ちぼうけであった。
そして片付けたあと話しをしてくれ、お礼が出來た。彼女は喜んで本を見ていて終始笑顔で話している。職安での看護婦さんの募集はしていた。送迎運転手は聞くのをためらいやめた。会話中、白い病院服の男性が現れ、花輪としゃべっていた。花輪は弟だよと言った。弟と言えばこの病院の院長だ。つまり社長。ぼくは真面目に腰を折った。学校の後輩なのにあいさつである。
あまり会話らしい会話は忙しく出来なかったが今度、飲み屋でゆっくり話そうとなり、花輪のメールアドレスを聞いて退散した。師走で忙しそうな花輪である。
さくらの親戚のおばさんへは、ぼくとおばさんの都合がかみ合わず、さくらの旧実家におばさんが翌日来ることで、改装中の家の大工さんへ渡し頼んできた。
インタビュー出来なかったたまちゃんへ本を渡しに行く。彼女はアメリカに嫁いでいていないのはわかっている。着いた時、表にたまちゃんの父がいて、ぼくの本が完成したことを話し渡した。たまちゃん父は『おめでとう』と言ってくれありがたく思った。まるこ漫画だと、たまちゃん父はカメラをぶら下げているが、そんな感じではなくとても律義な人に見えた。
カニエイにも本を渡しに行った。と言うことは彼の家で飲むことになる。夏ごろから会っていなかったので、話しも盛り上がるだろうとカニエイ家に着く。
早速、彼の二階の部屋で焼酎のお茶割りを乾杯する。
この日、彼へ渡す物があるとだけしか言っていない。まさかまた本を出したとは思ってもいないはずだ。
そして近況など話し、二人とも酔いが回ってきた。ぼくが携帯で写メールを撮った野口のモデルや、かよちゃんの写真をカニエイに見せた。なぜ野口やかよちゃんに会ったのか彼は疑問の様子だった。
カニエイの部屋はあちらこちらにバイクの部品があり、足の踏み場もないところへ、二人分のスペースを空けた。それで彼とぼくの距離が近い。カニエイが酔ってくるとぼくの耳を触り出す。しまいには耳をなめ出す始末だ。まあ昔からやられていたので慣れている。
そのころのカニエイは、解体屋などで古いバイクを買い、それを自分で直して乗るのが趣味な男だ。過去に二台完璧に直して乗っている。仕事でやればいいのに、あくまでも趣味という。
最近は軽トラックを借り、兵庫県まで高速を使わず下で走り、片道八時間掛けてスクーターを二台買ってきたらしい。現在はそれらを修理中とか。相当なバイク気違いではないか。わざわざ兵庫県まで動かないバイクを買いに行くとは、ぼくでは考えられなかった。
それよりもっとビックリしたことがあった。なにげなく置いてあるアコースティクギターのことだ。彼はぼくにこれいくらだと聞くので『まあ、高くみて十五万位か』と言ったらカニエイは、
「ブー、なんと百三十万だ!」
と。ぼくは酔っていたが、
「えーっ! ほんとか?」
どうもそれは本当である。まさか百三十万円のアコースティクギターとは……。なぜそんな高いの買ったのか聞くと、単に欲しかったからだと。カニエイの器量のでかさに本当に驚く。彼はたまに人をビックリさせることが昔からある。なかなか隅に置けない人物だ。
そしてぼくの方も負けずと、本を差し出す。カニエイは驚いている。酔って赤い顔だがモデルらに取材したことへ面白がっていた。
そんな感じで二人は午前様までざっくばらんな話しをしながら飲んだ。
次に気が付いたのは朝で、寒いと思ったらカニエイの部屋で雑魚寝をしている。彼はというと部屋にはいなく、一階の寝床で寝ているのだ。あまりの寒さと二日酔いで頭が痛く、朝七時に昨夜のテンションとは逆となり自転車で帰った。その日は一日中頭が痛く、体調も優れなかった。陽と陰な日だった。
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