衣服とサイフ

はっきり言ってあまり服に興味がない。ブランドなどにも関心が沸かないのだ。ルイビトンやグッチ、シャネルなど名は知ってるが欲しいとは思わない。貧乏くせえヤツだと感じてるだろうが、興味がない。

そんな僕が今日まで、どの様な服装だったかチェックしてみる。

生まれてから幼稚園時代は親の選ぶ服になっていた。まあ当然であり、短パンと幼稚園の園ぷくが主な格好だった。

小学一年から三年ぐらいまで、短パンとTシャツやセーターなどを着ていた。冬でもズボンは短パンだった。

そして、小学四年からスタイルが少し変わる。短パンが体操着の短パンになった。

理由は体育の授業になると体操着に着替えなければならない。これは面倒ということで、家から履いて行く。クラス男子数人が、家から体操着の短パンを履いていた。

小学五、六年時には体育授業がなくても、冬は体操着に短パンとスクールコートで夏はTシャツに体操着の短パンだった。しまいに休みの日もこの格好になっていた。一年中体操に短パンである。

つまり衣装代が掛からなく親は満足で、僕もこの格好が楽で好んでいた。まさに一石二鳥だった。

中学になると服装にちょっと興味を持った。それは制服で、規定より少し違反している学ランやズボンを中学二年から着てはいた。ちょうと思春期で女子が気になったころだ。

私服は中一がジャックマン、中二、中三がプーマのジャージ姿が主であった。たまにボンタンのジーパンと黒いジャンバーなども着ていた。

高校に入るが坊主頭だから普段はシャージの格好だ。

中退後、少し髪が伸びたころ、田舎のヤンキーが着ているスラックスを買い、東京で履いたら人々にジロジロ見られ、二度とそのズボンを履かなくなった。

東京にいた時はジーンズにトレーナー、スタジャン、Tシャツでメーカーではない服だった。

地元に帰ってきてもそのような格好で日々を送っていた。

そして今現在も、十八歳から変わらない服装スタイルである。現在、五十一歳の格好はというと、冬はジーンズにトレーナー、それにジャンバー的なハーフコートを着ている。

夏は得意の短パンにTシャツだ。ちなみに短パンは体操着ではない。やっぱ暑い夏はこの格好が一番ではないか。



ここでサイフの話しをする。サイフも当然ブランド品ではなく、二千円位のサイフだ。

二十代の時、かなり酔っぱらってサイフをどこかに落としてしまった。けど親切な人が拾ってくれ、電話してくれた。よかったと思ったら一銭もないとのこと。中身を抜いて捨てられたようだ。たしか五千円位だったか。サイフには診察券やビデオの会員カードなどが入っている。それらが返ってきただけでも御の字だ。なぜならカード類を停止しなければならなく面倒だったから。

その後、また落とした。三十五歳の時、やはり酔って落としてしまった。そのサイフは気に入っていたので残念だった。

お気に入りサイフには、現金一万円位とビデオ会員カード三枚、他のレンタルカード二枚、カラオケ会員カード二枚、診察券三枚だった感じ。ちなみに運転免許証は入れてなかったので助かった。

結局このサイフは出てこない。まあ百パーセント出てこないと予想してたので、カード類を停止して、新しいのを作った。感想は、面倒の一言である。

実は中学三年の時にも、落としていた。それはなんと、家の便所だ。

その頃、恵比寿町の長屋に住んでいた。そこのトイレはくみ取りであり、常にトイレは臭い。トイレなんてシャレた言葉ではなく『便所』だ。

僕はその日、学生ズボンの後ろポケットにサイフを入れていた。そして大をしたくなり便所に行き用をたした。ズボンを履こうとした瞬間、後ろポケットからスーっと。

「まさかっ?」

と、瞬時に下を見るとサイフが落ちていく。それはなぜかゆっくり落ちていく。

「あーっ!」

と思い、落胆した。サイフには五千円ほど入っている。どうするかと悩んでいた。

取ることにするか、取らないにするか。

僕にとって五千円はやはり大金である。考えた結果、救出することにした。幸い家にはだれもいなかった。物置から虫などを採るタモを持って、便所に戻った。だれか帰って来るかも知れないので早く終わらせようと。

そして、タモを便器の中に思い気って入れた。見た目ではすぐ届くと思っていたが、サイフのところまでなかなか届かない。何度もタモでつつく。もう後には引けない。

こうなったら、うつ伏せになり腕を便器の中に入れ、最善を尽くした。五千円のためなら便器の中まで入る覚悟の気持ちとなっていた。

数分後、やっとその気持ちが通じたのかタモへサイフに届いた。

「もお少しだ……」

額には汗がにじんできて、足は狭い便所の壁を蹴っていた。そして肩まで便器に入ったとき、サイフが網に収まった。

「やった」

冷や汗交じりで素早くタモ上げた。まるで漁師のようだ。しかしそこに魚はなく、臭いサイフがある。

僕はそのサイフを持って風呂場へ直行。お札の五千円と小銭は汚れてはなく安心した。サイフには汚物が付き、洗うか迷ったが洗った。何回もゴシゴシと洗ったが、臭いは取れない。自分の腕や手も臭うのでこの際、風呂へ入った。

一仕事終えた昼風呂で安堵感があった。だがサイフの臭いは取れないままだ。

そして風呂場も臭い感じがしたので、窓を開け清掃をしてあがった。これならバレないだろう。サイフは部屋で乾かしてた。少したち妹が帰って来た。自分は平静を保っていた。  

しかし、妹はなにか察したのか怪しげに一言。                 「兄ちゃん、ウンコ漏らしたんじゃない?」


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