取材二

 夏にぼくを取材したテレビ朝日の『決定、これが日本のアニメベスト百』で製作会社の働き者の青年が、また僕らを取材したいと、十二月上旬に入った途端電話があった。十二月下旬に年末特番をやるので、ちびまるこちゃんに沿った取材をさせてくれと。番組名は前回と同じである。

前回、丸尾のモデルや野口のモデルなどをぼくに頼んでいたが、丸尾らは結局テレビ出演がダメ。

 今回も浜崎さんの力でそこをなんとか出演を交渉してくれといってきた。

ぼくの出演は構わないが、彼らはまたダメだと思う。ぼくは自身の本作りで彼らを取材した。それはOKだった。理由は同級生だし文章だけでのインタビューだからだ。だがカメラでこの人が丸尾君や野口さんだと顔がバレるのをモデル達はとても嫌がる。それはなんとなくわかる。近所や会社の身内の人にバレるからだろう。ぼくも昔はそうだった。青年はどうしてもお願いしますと何度も電話でいうので一応、丸尾のモデル、野口のモデルにあたってみた。が、結果は同じである。青年はやはりガックリしていた。嫌なことはだれだって嫌である。

そして翌日、青年は別の案をぼくに質問してきた。まるこアニメに佐々木のじいさんや川田のおじさんが出演しているが、その人達は実在しているか? と。だが実在していないことを述べると、青年はまたガックリしていた。

数時間後、今度は長谷川健太さんは会えそうかと。ぼくはその辺はわからなかった。だが健太は地元テレビのスポーツ番組にレギュラー出演しているので、その局に問い合わせてみればと、局と番組名を教えてやった。

働き者の青年はぼく以外にも他のまるこモデルをどうしてもカメラに収めたいらしい。それが青年の考えた使命だと思った。その企画だと製作会社の上司にも認められるからではないのか。

 青年とは知り合った夏からたまに、電話をしたりと連絡はとっていた。そのため信頼関係が出来ていたが、まさかまた『ちびまるこちゃん』の取材とは思ってもみなかった。前回の短い放送が好評だったのか。ぼくの出演が好評だったならレギュラーで使ってくれとも思ったりした。当然仕事でだ。つまり前回がオーディションになる。

青年の考えたことには極力協力してやっているが、級友達だって事情があるからぼくはそんなに押せない。やっぱ学生時代の友人達なのでその事情を、青年にはわかってもらうしかないのか。

 そしてダメ元で青年は野口のモデルに直接電話したらしいが、完璧に強く断られたといっていた。次は健太と出演交渉をするのか。

その後、数日が経ち青年から電話があった。健太は本日横浜でトヨタカップのサッカー解説があり、そこなら青年の取材はOKがとれた。早速、青年はそこに向かうことになり、ぼくは結局、取材を受けないことになった。『なんだー』となったが仕方ない。収録日が三日後らしく青年は急いでいた。

その代わりではないが、ぼくに前回と同じく卒業アルバムをテレビ局まで送って欲しいといってきた。一瞬、ぼくはテレビ局のパシリかとなる。

 だけどかなりのあせりの声が伝わり青年に小学校卒業アルバムを宅配便で送って上げた。当然だが青年は大変御礼をいってきた。なにからなにまですみませんと。まあぼくは前回出演したことだし、元清水エスパルスの長谷川健太(現J1リーグFC東京監督)が、ちびまるこの登場人物だったとは知らない人もいるかも知れないから、番組側は良いのではないか。本当はぼくと健太が再会するシナリオだったらしい。だが、あまりの時間と青年と健太の調整がつかめず、急に健太だけとなってしまったようだ。ぼくは出演しないが、卒業アルバムが出演するのでよしとする。こんな感じで結局取材を受けなかったが、もし今後も青年の取材があれば、またアシスタントとして取材に協力するかもしれない。



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